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霧の枝 - 会議

 コアゼさんとクレア、ジーナさんがやってきた。

 あれ、寝てるぐらいの怪我はしてたんじゃないの?


「なによ、痣が出来てるだけじゃない!」

「嘘は言ってない。斬られた結果、剣が鎧にぶつかって怪我をした」


 左の肩の辺りに内出血があったらしい。

 腕を動かすと軽く痛むので、やることが無いと寝ていたようだ。


「いや、クレアちゃんに治療してもらえたのは助かった。急に腫れてきたから、アルフォスに言おうか考えていたところだったのよ」


 ジーナさんがフォローした。

 コアゼさんじゃなくて、クレアが治癒魔法をかけたようだ。


「ん、……あまりに酷ければアルフォスが治療する」


 ミレルさんが呟いた。

 そういえば前に、治癒魔法を使えるようなことを言っていたっけ。


「もう!」


 しばらくコアゼさんが怒っていた。犬耳がぱたぱたと忙しなく動いている。

 移動中などはずっとぴんっと立てていたので、特に大きく動いたりしないと思っていた。仲間と合流したことで気が抜けたのだろうか。


 どちらにしろ獣人は、感情を隠すのが苦手な種族なのかもしれない。


「なんじゃなんじゃ騒がしい。外まで丸聞こえだぞ」


 ばたんとドアが勢い良く開くと、ドワーフの男性が入ってきた。

 つや消しの暗い金属鎧、左右の腰に短剣を吊るしている。


「おう、コアゼが来たか! そっちの3人がアルフォスが言ってた子たちだな」

「うん。ディゴも戻ってきたし、ミーナちゃんたちへの報告と会議を始めようか」



 アルフォスさんのチームは、ここにいる7人、2パーティのチームだ。


 父さんの元パーティメンバーであるアルフォスさん、ジーナさん、ミレルさん。

 遺跡調査、蜘蛛騒動の時の2回フェルド村で会っている。


 父さんが抜けた後に加入したメンバーが、ここまで一緒に来た犬族の獣人コアゼさん。

 侍姿のブコウさん。エルフの軽戦士、ロダウェンさん。ドワーフのディゴさんは短剣を持っていることからシーフか暗殺者系だと思う。


 コアゼさんたち4人は、聖王国で結成したパーティだ。C級になってからは、ソルジュプランテの王都へ移動してきて活躍していたらしい。


 父さんがパーティを抜けた後、アルフォスさんたちはしばらく3人で依頼を受けていたものの、やはり4人の方が良いのではないかと言う話になった。

 そこでメンバーを募集をしようとしたものの、B級上位でパーティに加入したいと思っているソロなど簡単には見つからない。


 かといって、A級目前のパーティを放置するのも冒険者ギルドにとって損になる。ギルドの声かけで色々あった結果、別パーティのチーム加入という形で落ち着いたようだ。

 そのため現在はチームリーダーがアルフォスさん、サブリーダーがブコウさんとなっている。


 それからは依頼に応じて全員で出るか、2パーティにするかなど臨機応変に分けているとのことだ。

 フェルド村に来たときは時間が空いて簡単な依頼ついでに、久しぶりに父さんのところに顔を出すかということで、丁度アルフォスさんたち3人だった。


 わたしたちも簡単に自己紹介してから、依頼の話となった。


迷宮ダンジョンの話はガルディアで伝えたから、その後からお願いね」

「分かった」


 ここに来た当初の依頼については、コアゼさんから聞いている。


「10日、いや11日前かな。迷宮ダンジョンを消したあと、念のため周囲を確認していたんだ。そうしたらミレルが地図に無い道を見つけてね」


 街道になっている地下道を中心に、国が地図を作製している。


 しかし密輸に使われそうな抜け道や、危険な魔物がいる場所もいくつかあるので、詳細な地図の情報は出していないとのことだ。

 アルフォスさんたちは、依頼のこともあるので地図を借りていたらしい。


「ん、最近崩れたような道だったから調べた」

「その先の道で色々なスケルトンがたくさん出たんだよ。それぐらいなら僕らでもどうにでもなる。しばらくは倒しながら進んでいたんだけど、急にまったく違うタイプのスケルトンが出てきてね」

「ブコウが私をかばって怪我したから、危険だと判断して撤退した」


 ミレルさんとアルフォスさんの説明の最後に、ロダウェンさんが付け足した。


「え、ブコウは大丈夫なの?」

「意外と酷い怪我だったからのう。アルフォスに治療してもらったわい。今は大丈夫ぞ」


 その後も何度か調査したのだが、そのスケルトンの亜種らしき魔物が倒せなかったらしい。

 その際にジーナさんも軽い怪我をしたようだ。


「どうしようもなくてね。ミーナちゃんたちなら強さだけでなく知識もあることを知っているから、何か知らないかと思って呼んだんだ」

「わしらは王都のA級冒険者を援軍に呼べと言ったんだがの。頑なにアルフォスが嬢ちゃんたちに話を聞きたいというから、王都に残っているコアゼに頼んだわけだ」


 ブコウさんが無精髭をいじりながら説明した。


「で、コアゼ。嬢ちゃんたちはどうだった?」

「そうね。戦闘は無かったから戦闘能力は分からないけれど……。私が全力でここまで歩いても平気な顔で付いて来られたわね。食材や素材についてもC級とは思えないほど詳しいわ。野営の仕方や洞窟への入り方もちゃんと分かっているようだし、クレアさんの回復魔法も早くて的確。少なくとも連れて行くだけなら問題ないと判断するわね」

「ほう。普段は辛口のコアゼが珍しく推すな。……ふはは」


 ブコウさんが質問しコアゼさんが答えたところ、ディゴさんが何やら思い出したのか笑い出した。


 どうやらコアゼさんは、わたしたちの実力がどの程度あるのか測っていたらしい。

 コアゼさんの歩き方は少し速かったけれど、合流を急いでいるのだろうと思っていたし、3人で歩いている時とも大差無いので気にしていなかった。


 C級成り立ての冒険者ぐらいだと、普通は野営や洞窟の探索などはあまりしないようだ。

 わたしたちはミニエイナの鉱山に入ったり、野営の練習もしていたけど、町の冒険者を見ている限り珍しい方なのだろう。


「というより要塞では私の方が疲れて先に寝ちゃったんだけど……」


 コアゼさんは魔術師タイプのようだが、そもそも獣人はVIT(体力)が高い。コアゼさんもスタミナは相応にあるはず。


 わたしとリルファナは転生者プレイヤーだから別としても、あのイケメン(ステラーティオ様)はどれだけの加護をクレアにくれたんだろう。

 思っていた以上に感謝すべきなんじゃないかと思い始めた。


「さて、コアゼの許可も出たし先に進めるよ」


 アルフォスさんが仕切りなおした。


「その変なスケルトンだけど、色は黒っぽい濃い灰色。いきなり消えたと思ったら、目の前にいたりするんだよ」

「多分、シャドウスケルトンかな」

「シャドウスケルトンですわ!」


 リルファナとかぶってしまった。

 黒っぽい色のスケルトンは種類が少ないので、それを手紙に書いてくれればすぐ分かったかもしれない。


「リルファナちゃんはともかくお姉ちゃん知ってるの? 図鑑に載ってたっけ?」

「図鑑には載ってなかったと思うけど、別の本で出てきたんだよ」


 これは本当だ。

 わたしが買った冒険小説で出てきていた。


 序盤をちらっと立ち読みしたところ、300年前の転生者プレイヤーの冒険話のように感じたので買ったのだ。

 物語になっているので、誇張したと思われる場所もあったけどね。


「意外と細かくて冒険にも役立つと思うから今度貸すよ」

「うん!」

「その本は今持ってるの?」


 「図鑑以外の本に出てきた」では、胡散臭く感じるだろうとも思う。

 誰かに聞かれるかと思っていたが、コアゼさんが聞いてきた。


「いえ、持ってないです」

「うーん、残念ね」


 反応や表情を見ると疑っているというよりも、実際に見てみたかったような言い方だ。


 小説は読み終わってしまったので、持って来ていない。

 セブクロの知識とあわせて考えれば、他の魔物についても詳細がしっかりしていると確信できる内容だったのだけど。


「そのシャドウスケルトンについて教えてくれるかな。僕らの戦った内容と同じかどうかも確認したい」

「ん、それで判断する」


 蜘蛛の時もそうだったけど、アルフォスさんたちは「どこでそんな知識を仕入れたんだ」とか突っ込んでくることはない。

 今なら本や図書館で調べたといえば有耶無耶に出来るが、村にしかいなかったあの時にあれこれと突っ込まれていたら、ちょっと困っていた気がする。


 シャドウスケルトンはレベル40ぐらいと低め。


 アルフォスさんたちの説明通り、見た目は黒っぽいスケルトン。武器はスケルトンが持っているものなら何でも使うが、刃が付いた近接武器が多い。

 そして面倒なスキルを1つ持っている。


 『影隠シャドウハイド』という名前で、影の中に数秒だけ隠れるスキルだ。隠れたまま攻撃や魔法を使うことはできないが、移動は自由にできる。

 目の前まで移動し、姿を現して攻撃すれば一瞬で近付かれたと思うだろう。隠れたまま背後に回られれば回避も難しい。


 ちなみに、『影隠シャドウハイド』自体はシャドウスケルトン固有のスキルではない。

 シャドウウルフといった魔物や、プレイヤー側でも忍者が使えたはずだ。リルファナもレベルが上がれば、使えるようになると思う。


 A級であるアルフォスさんたちが知らないということは、使用してくる魔物があまりいないのだろうか。


 しかし、シャドウスケルトンか。


 冒険小説では、主人公の魔術師が部屋ごと爆破して倒していた。

 わたしたちはそんなこと出来ないので普通に戦う必要がある。


「多分、そいつで合ってるわ」


 わたしとリルファナの説明を聞いて、ジーナさんが頷いた。


 最終的に、今日はこのまま要塞で休み、夜が明けてから全員で向かうことに決まる。


「見張り以外の時間は暇なんですよ。何かあったら言ってくださいね」


 来客が増えたと要塞の兵士さんたちが、何も言わずとももう1部屋用意してくれたので、わたしたちの3人で使うことになった。


 さて、セブクロでの倒し方は通用するだろうか。通用すれば簡単なんだけどな。

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