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短剣の売却

 翌朝、朝食後に東門から近くの森へ移動した。わたしとネーヴァ、レダさんの3人だ。

 すぐ戻る予定なので、リルファナとクレアは留守番している。


 周囲に人の気配が無くなった辺りでネーヴァが青竜に戻ると、レダさんも納得したように頷いた。


「しかし、どうしたもんかねえ……」

「ガルディアが要塞じゃなくなっていたから、巡回範囲が広がったという方向が良さそうかな?」


 昨日、わたしも寝る前に適当な言い訳を少し考えたのだ。


「まあ、そんなところかね」

「知らぬこととは言え、迷惑をかけて申し訳ない」

「ネーヴァが悪いわけじゃないさね」


 ネーヴァが謝ったが、レダさんが笑い飛ばした。それに、レダさんの言う通りだと思う。

 本人確認をした証拠として、レダさんは鱗を貰っていた。


「……ミーナよ。少しレダと2人で話をしたいので、先に町へ戻っていてもらえるか?」

「ん? 了解」


 何だろうとは思うけど、レダさんも想定外のようで不思議そうな顔をしている。

 詳細などを2人だけで詰めておきたいのかもしれない。


 フォンカーナ様に会ってから使えるようになった、風の声(ヴェント・ヴォーチェ)を使えばこっそり盗み聞きできるけど、そこまでする必要もないだろう。

 それに魔法を使えば、古竜であるネーヴァにはバレバレになりそうだ。


 風の声(ヴェント・ヴォーチェ)は盗聴などにも使えるからか、クレアの買った本にも載っていない。

 そもそも魔力を感知できる魔術師や、魔道具があると簡単に気付かれるので、あまり使わない方が良さそうだ。


 東門で待っていると、すぐにレダさんとネーヴァが帰って来た。


「おや、ミーナちゃん。家まで帰ってても良かったのに、わざわざ待っていてくれたのかい」


 なんとなくレダさんがすっきりした顔をしている。ネーヴァに何か教えてもらったのかな?

 レダさんは、青竜の問題が解決したから少し休むと、午後からギルドに向かうことにしたらしい。


 意外とギルドでは大事になっていたようだね。

 王都の守護竜と呼ばれる存在が、突然町に寄ってくるようになったら、知らずに何かしてしまったのではないかと慌てるのも無理ないか。


 午後、レダさんと一緒にギルドに行って、短剣を買い取って貰うことにした。



 わたしたちも、1週間近く依頼で出ていたので3日は休憩の予定だ。

 その後は近場の依頼をいくつかこなすか、隣町行きの依頼をこなせばフェルド村に帰る頃合だろう。


 仕方ないけれど1ヶ月の縛りがあると、なかなか遠出は出来そうにないね。


 午後、クレアは図書館へ行くようだ。

 わたしはレダさんと、素材を買いに行きたいというリルファナとギルドに向かう。


 リルファナは2階の雑貨屋を見ていると一旦別れ、わたしとレダさんは3階の装備屋へ上がる。


 装備屋の店員さんは、数ヶ月前に自分たちの装備を買ったときとは違う人が担当していた。


「お疲れさん。前に少し話した短剣の買取を頼むよ」

「あ、レダさん。そちらのお嬢さんが例の職人ですか?」

「前に1つ見せてもらったけど十分売れると思うさね。あたしは詳しくないから、ちゃんと見てやっておくれ」

「分かりました」


 レダさんはそれだけ言うと1階へ戻っていった。青竜関係の報告やまとめを行うのだろう。


「査定しますので、並べてもらえますか?」


 マジックバッグから一本ずつ取り出し、カウンターの上に丁寧に並べる。

 装備屋の店員さんは、1つずつ査定し始めた。


「鞘は無しですか?」

「はい、無いと不味いですか?」

「買取は出来ますが、こちらで用意しますのでその分値段は下がります」


 鞘は革細工スキルを使うのだろうか。

 確かに剣などに必要だが、鍛冶スキルでは作れる気がしないのだけど。


「自分で用意できないので、それで構いません」


 わたしの作った短剣は、前にギルドで買ったものを真似して作っている。

 鞘も同じサイズで大丈夫なので、手間はあまりかからないだろう。


「ええと……」


 すべての短剣を見終わった店員さんが、気まずそうな顔をしていた。

 買い取れないのかな?


「買取は可能ですが、これだけ良い物でしたら、別の店に持ち込んだ方が買取額は高くなるかと思います。個人で販売することも可能かと……」


 冒険者ギルドの装備は、新人向けに出来る限り安く販売している。

 仕入額もあまり高く出来ないのだと思う。


「買い取って貰う場合は、いくらになりますか?」

「1本辺り限度額の大銅貨3枚、20本で小銀貨6枚ですね」


 確かにかなり安いが、ギルドでの販売額はせいぜい大銅貨4枚程度だ。

 限度額というのも嘘ではないだろう。


「普通の武器屋に卸せば小銀貨1枚。自分で販売するなら、その倍近くになると思いますよ」


 うーん、わたしは鍛冶のスキル上げで生産しているだけで、別にお金を稼ぐために作っているわけじゃない。


 素材も鉄ならミニエイナで倒したキャノン系の鉄くずを使っているし、鍛冶で使う魔力のポーションもリルファナが拾ってきた素材で作っている。

 労力はかかっているが、素材や生産設備には一銭も使っていない。


 そもそもゲームでの生産スキル上げは、大赤字であることも多いぐらいだ。儲けようという考えが最初から無かった。

 ギルドが安く販売しているのは、新人冒険者の助けになるためにギルドがやっていることでもある。それに協力するのも良いだろう。


「レダさんにはお世話になっているし、それで構いません」

「えっと、本当にいいのでしょうか?」

「はい。練習で作っているようなものなので」

「これで練習ですか……。構わないと言うのなら喜んで買い取らせて頂きますよ」


 小銀貨6枚と大銅貨2枚をテーブルに置かれた。


「少しだけですが、増額させて頂きますね」

「ありがとうございます。……それと剣とかは買い取れませんか?」

「そうですね。最近はガルディア周辺の魔物の分布が変わったとかで、予備の武器の売れ行きも良いので、短剣も含めて少数なら買い取れますよ」


 ネーヴァの影響がこの辺りにも出ているようだ。


「今度作ってみますね。来月には持ってきます」

「お願いします」


 よく売れる槍や片手斧も買い取れるそうだけど、柄が無いので無理そう。リルファナが、木工スキルで作れるようになっていれば作れるかな。


 短剣と長剣は、休みの日や月末のフェルド村に帰ったときに、ちまちま作ることにしよう。


 2階でリルファナと合流し、雑貨屋で布や糸を購入して家に帰った。


 自分のメイド服はすでに強化したそうで、次はクレアのローブを強化するらしい。

 ネーヴァのぬいぐるみは、空いた時間で作っていただけだったようだ。


「ローブなどは崩しても魔法付与エンチャントは残りますの?」

「あまり細かく分解しすぎたり、別の素材を足しすぎたりしなければ大丈夫だと思うよ。解除されちゃったら、言ってくれればすぐ魔法付与エンチャントするよ」

「分かりましたわ」


 どうやら、服などを直すのに崩しても大丈夫か気になっていたようだ。

 効果が消えてしまっても、また魔法付与エンチャントを出来ることは前に確認したことがあるので気にする必要はない。


「針があればミーナ様の防具も、少しですが強化出来るのですけれどね」

「飛竜の革だから難しいか」

「ええ、裁縫スキルの高レベル向けの針じゃないと通りませんわ」

「どんなのがあるの?」

霊銀ミスリル製はあった覚えがありますわね。最低でもそのぐらいでしょうか」


 霊銀ミスリルはまだ残っているし、鍛冶スキルで作れる気もする。

 リルファナは最初に鍛冶を少し手伝ってもらっただけだからか、そこまでスキルが上がっていないのか気付かないようだ。


 ……期待させて出来なかったら困るし、あとでこっそり作ってみるか。



 今日は夕飯を作るぐらいで、本でも読んで過ごすつもりだったのだが、気になったので霊銀ミスリルの針だけ作ってみることにした。


「すごいですわ、ミーナ様! クレア様のローブが仕上がったら、次に取り掛かりますわね」


 ……意外と簡単に作れてしまった。

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