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アルジーネの町 - ガルディア帰還

 翌朝、アルジーネの町を出発した。


 ラミィさんの依頼であるお使いと採取も済んだ。

 アルジーネのギルドマスター、ガド爺の返事も受け取った。


 欲を言えば、あと2日ぐらい町を観光していきたかったかな。

 しかし、それだとラミィさんの依頼の期限ぎりぎりになってしまうので、何かトラブルがあったら期限を守れなくなるのは困る。


 ガルディアの町へは来た道を戻るだけなので、採取もせずに帰る予定だ。

 わたしたちの足ならば途中で1泊すれば、夜遅くにはガルディアに到着できるだろう。


 アルジーネを出発した日は何事も無く、中間地点の野営地でキャンプを張り1泊。


 翌日、トレンマ村に到着した頃には陽が落ち始めていた。

 トレンマ村の酒場で夕食を済ませ、街道をそのまま歩き、ガルディアまで戻った。


「やっと町に着いたよ」

「クレア様も随分と体力がつきましたわね」

「うん。ステラーティオ様のおかげだね」


 普通の冒険者の足で3日はかかるところを、2日で歩いて来たのだ。

 体力がついた程度の話でも無いような気はするけど……。


 まあ、神様の加護なのだから、上手く使わせて貰えば良いだけだ。


 そして、クレアの闇の神(残念なイケメン)への信頼感は、相変わらず強いようだね。


「今日は遅いし、ラミィさんへの報告は明日にしようか」

「分かりましたわ」


 街道を歩いたり野営地で泊まるのは、町にいるより気を張るため疲れやすい。


 ガド爺の手紙も、そのついでに明日渡せば良いだろう。


 ギルドの受付で預けた家の鍵を受け取り、街灯のついた中央通りを歩いて帰宅する。

 いつも通り、家にレダさんはいないようだった。


 用事が無いなら、一々家に帰るよりもギルドで寝泊りする方が手っ取り早い、と言っていたこともある。

 わたしたちが依頼などで出ているときは、普段から帰ってこないのだろう。


 交代でお風呂を済ませて、早々にベッドに入る。


 お風呂に入ると、じんわりと足の疲れを感じた。

 どうせなら、疲労感を軽減してくれる加護でもないものか。


 ……疲労感が無いと、限界を迎えた瞬間突然倒れるから危ない気もした。



 ――翌日。


 目が覚めたのはお昼前。


 元々インドア派のわたしは、休日前は遅くまでゲームをして、昼近くまで寝ていることも多かった。

 疲れていたり、うっかりしていると、いまだにその癖が出る気がする。


 まだ少し眠い目を擦りながら1階へ下りると、クレアとリルファナがお昼の準備中だ。


「お姉ちゃん、レダさんが朝来たよ」

「後で手紙の返事を持って行くと言っておきましたわ」


 2人は、レダさんが様子見に来たときに起きたようだ。

 レダさんは「疲れてるならもう少し寝ておけばいいさね」と、2人を二度寝させてそのままギルドに帰ったみたい。


 昼食を済ませた後、冒険者ギルドに向かった。


「お疲れさん。どうだったさね」


 ギルドマスターの部屋に入ると、レダさんは読んでいた書類を机に置いた。


「えっと手紙がこちらです」

「はいはい」


 手紙を渡すと、レダさんは手紙を開かずにまだ何か待っている様子だ。


「アルジーネの町がどうだったって話ですわよ」


 何だろうと思っていたら、リルファナがこっそりと囁いた。


 なるほど、レダさんはギルドマスターだが、家を借りているし保護者みたいなものでもある。

 朝来たのも、話を聞きたかったということもあるのだろう。


「白いレンガが多くて綺麗な町並みでした」

「川と橋がすごかった」

「中央の島の神殿も興味深かったですわ」


 アルジーネの町の感想を、思い付いた順に適当に話していたが、レダさんも楽しそうに聞いてくれた。


 しばらくすると、扉がノック音が響く。

 入って来たのはギルドの職員さんで、書類を抱えている。


「さて、お仕事に戻るさね。夕飯には帰るから、またその時に続きを聞かせて欲しいさね」


 次はラミィさんの店に行って、買って来た物と採取品の受け渡しだ。

 追加で採取してきた素材を、買い取るかどうかも聞かないといけない。


「いらっしゃいませー、いらっしゃいませー」


 ラミィさんの店に到着すると、ネーヴァが客引きをしていた。


 ネーヴァは暇なのかな?

 いや、霧の山脈(ネヴィアモンターニャ)住処すみかにいるか、適当に空を飛んでいるだけだろうし、暇ではあるか。


「ネーヴァちゃん、また来てたの?」

「うむ、最近は特に暇なのだ」


 治安も良くなり、人が相手に出来ないような魔物がしょっちゅう出現することもない。

 青竜ネーヴァは、思った以上に暇なようだ。


 ふと思ったが、わたしたちが倒した蜘蛛の女王(スパイダークイーン)は、まだ人間が倒せるという扱いなのかな。

 単に、全てを見ていることは出来ないだけだろうか。


 ネーヴァと、ラミィさんの店に入る。

 ある程度は落ち着いたのか、在庫が少ないからか今日は客が少なめだ。


「いらっしゃいませー。あ、ミーナさん。思ったより早かったですー。おかえりなさいー」

「ただいまです。とりあえず頼まれた素材から出しますね」

「はいー」


 店の奥の部屋でラミィさんが、ざっと雑にテーブルの一画を空ける。

 買ってきたものと、フォレストコットンを置いた。


「こんなに採れたんですかー」


 森の奥で群生地を見つけたこともあるが、キナレル川の東西で採れる量が大きく変わるようだ。

 ラミィさんの採取の指定量が少なかったのは、時間的にも東側で採ってくると思っていたみたい。


「フォレストコットンは採りに行くのが大変なので、あるだけ買いますよー」


 リルファナの使う分は残して全て積み上げたが、買い取れるようだ。

 これならもっと採ってきても良かったかもしれない。


「それと服に使えそうな素材がこっちです」


 クレアが、マジックバッグから他の素材を出し始めた。

 綿草わたくさや、わたしは名前を知らない植物や樹皮などをテーブルに載せていく。


「鹿の皮も使いますの? 1頭分ですがありますわ」


 リルファナが出したのは、ご飯のために獲った鹿の皮だ。

 すぐに腐らないように、簡単な加工だけはキャンプ中にしてある。


「ふむふむー」


 ラミィさんが素材を見ながら、買い取るか決めていく。

 ほとんど全ての素材を買い取ってくれることになった。


「追加の買取は小金貨1枚ぐらいで良いですかねー?」

「それでは少し高くありませんこと?」

「どれも質が良いですし、まとめて買えますからー。それにミーナさんたちは、お客様としても来てくれますしー」


 リルファナの見立てでは、ギルドでの買取だと大銀貨8枚ぐらいといったところらしい。

 ラミィさんが言う通り、わたしたちはほとんどラミィさんの店で服を買っている。ラミィさんの方から言い出したことだし、それで良いだろう。


 追加の買取分はその場で清算してしまう。

 依頼の報酬はギルドに預けてあるため、ギルドで受け取る必要があった。


 どうせギルドに行くなら手紙も後回しで良かったかもと思ったが、それだとレダさんは仕事中で話せなかったかな。


「またお願いしますねー」


 ラミィさんに見送られて、ギルドに向かうことにした。


 今日は、ネーヴァもラミィさんの手伝いを終わりにして、わたしたちに付いてくることにしたらしく一緒だ。


 ギルドで依頼の完了報告をして、報酬である小金貨3枚は3人のギルドカードに分けて貰う。

 先ほどラミィさんから受取った小金貨1枚は、生活費としてわたしのカードに入れた。


「お姉ちゃん、いいの?」

「うん、防具もリルファナの叔父さんに貰っちゃったし、生活費の方は余裕があるから大丈夫」


 クレアの誕生日までは長旅に出る予定もないので、現状だとほとんどお金を使わない。


 ある程度は貯金しておきたい気持ちもあるが、わたしだけで稼いだお金でもない。自由に使えるようにお小遣いとして分けた方が良いだろう。

 クレアもリルファナも、お金があったら全部使うタイプでは無いというのもあるけどね。


 この後は夕飯の買物をして、今日は家でのんびりする予定だ。

 レダさんも帰ってくると言っていたし、たまには少し豪華な夕飯にしても良いかもしれない。


 アルジーネの町では魚料理が多かったし、やはりお肉にしようかなと献立を考えながらギルドを出た。

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