表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/265

新装備

 フェルド村からのんびりと歩いてきたが、お昼過ぎにはガルディアに辿り着いた。

 いつも通り、家の鍵を受け取りに南門から冒険者ギルドに向かう。


 その途中、随分と混雑している店があった。ガルディアでこんなに混んでいる店は見たことが無い。

 外から商品を見ている人たちまでいるようだ。


「お姉ちゃん、あれってラミィさんの店だよね?」

「ん? 何かあったのかな?」


 クレアがラミィさんの店だと気付いたので、寄ってみることにした。

 お客さんは、女の子を連れている親子が多い気がする。


「いらっしゃいませー。いらっしゃいませー」


 可愛い服を着た女の子が、ラミィさんの店の入口で客寄せをしていた。


「ネーヴァ様、何をしてますの……」

「あ、リルファナではないか。ラミィの店の手伝いをしているのだ」


 町に遊びに来たネーヴァは、わたしたちが出かけているのでラミィさんの店に来たようだ。

 そして服を貰ったお礼にと、手伝いを申し出たらしい。


 と言っても、ネーヴァに縫製を手伝ってもらうのは無理だろう。


 お礼をしたいという気持ちを無碍むげにするわけにもいかず、軽い気持ちでお店の前で集客をしてもらうことにした。

 ネーヴァの服を見た子供や親たちが欲しがって今に至るということだそうだ。


 ラミィさんの店は様々な服を扱っているし、センスの良い品も多い。

 人の目に触れられる機会が増えれば、自然と売れる量も増えるだろうとは思っていた。


 わたしが日本の雑誌の受け売りをいくつか教えただけで、コーディネートのセンスも上がっている気がする。


「いらっしゃいませー。あ、ミーナさんー」


 店に入ると忙しそうにしているラミィさんがやってきた。


「今日は混んでますね」

「ネーヴァさんのおかげですー。思った以上にお客さんが入ってくれますねー。急いで子供服を増産しているところですー」


 聞いてみると、昨日からネーヴァが客寄せパンダになったらしい。


 前は端の方に並べられていた子供服は、中央の目立つ位置に移動させられていた。

 ほとんど売り切れているようだが、熱心に見比べている親子も多い。


「素材が足らなくなってしまいそうなので、依頼を出すかもしれませんー。依頼などの用事が無ければ指名依頼でお願いしたいのですが、大丈夫でしょうかー?」


 王都で仕入れられなかった素材で、足らなくなりそうなものがあるそうだ。


 指名依頼とはギルドで依頼を出すときに、受けて貰う冒険者を指名することだ。

 もちろん、一方的に指名依頼を出しても受注を断られることも多いので、先に確認しておくのが普通らしい。


 依頼主側のメリットは、信用している冒険者に確実に依頼を受けてもらえること。

 冒険者側としては指名料として報酬が少し上乗せされることと、指名されるだけの信頼があるという証明になることだ。


 一般的に指名される冒険者は、B級以上であることが多いが特に制限があるわけではない。


 冒険者としての実績にもなるので、指名してくれるなら受けておくべきだろう。


「構いませんよ」

「助かりますー。閉店後にギルドで依頼を出しておきますのでー」


 少し遠いので、3日以内ぐらいには出発して欲しいそうだ。


 ラミィさんはネーヴァに手伝いを終わりにしても良いと言っていたけれど、ネーヴァ自身はまだラミィさんを手伝うつもりらしい。

 閉店後に遊びに来ると言っていた。



 家の鍵を受け取りにギルドに寄ると、ギルドの職員さんに「レダさんからの伝言です」と四つ折の紙を一緒に渡された。


 封をしていないということは、周りに見られても問題ない内容かと思う。

 その場で開けて読んでみると「配達物あり。食堂に置いておきます」と書かれていた。リルファナの叔父さんから防具が送られてきたのだろう。


 家に帰ると、食堂のテーブルの上に木箱が2つ置かれていた。


「叔父様はどんな装備を送ってきましたの?」

「開けてみようか」

「うん!」


 1つ木箱を開けると軽鎧一式が入っていた。わたしが頼んだ防具だろう。

 デザインに合わせた革製のブーツや、武器が扱いやすい指貫グローブも入っている。


「なんだか不思議な色だね、お姉ちゃん」


 軽鎧を出すと、金属部分は薄らと青みがかっていた。


「この特徴はエルフェルムかな?」


 エルフェルム鉱石はエルフ鉄とも呼ばれ、単純な金属としての性能面では霊銀ミスリルよりもやや上位の鉱石だ。


 鉱石としての希少性はそれほどでもないのだが、加工できる職人は少なく、装備として出回っている量は少ない。

 そのため、その辺の店で売っているものでもないが、B級冒険者ぐらいになるとこのランクの装備を揃える人も多いようだ。


 大きい町の専門店を探すか、有名な職人に頼めば作ってもらえるぐらいだろうか。


 霊銀ミスリルの方が、希少性も加工の難易度も高い。

 霊銀ミスリルがエルフェルムに勝る利点は、魔力との親和性なのだが、ここでは省略しよう。


 軽鎧を持ち上げてみると、光に反射したときの薄青の輝きが綺麗である。

 鎧の金属部分の間に使われている革も、飛竜ワイバーンか何かの革に見えた。


 流石に形状は違うけれどセブクロの魔法戦士の専用装備も、この金属で出来ているという設定だった。


 エルフェルムの特徴の1つとしてドワーフ鉄とも呼ばれる鉱石、ドワーフェルムとどうやっても合金にすることが出来ないというものがある。

 もちろん、鎧と兜のようにそれぞれの鉱石で、別々の装備を作って使うことは可能だけどね。


 なお、実際にはエルフとドワーフの仲が悪いということはないので、何故このような名前になったのかは不明だ。


 もう1つの木箱には、白を基調として銀糸で刺繍が施されたクレア用のローブ。こちらもブーツ付き。

 それと、リルファナが頼んでいた加工用の金属板なのだろう、エルフェルムとドワーフェルムの板。それから同じ革が入っていた。


「叔父様、奮発しましたわね」

「とりあえず着てみようか」


 サイズがあわなければ細かい調整をしないといけないので、一度着てみることにした。


 着てみて分かったが、胴回りのサイズは簡単に調整出来る作りになっていてぴったりだ。

 クレアの方も調整しにくい裾などの長さは、ピノさんの護衛であるフランカさんが測っていったおかげで、特に調整もいらなそうだった。


「お二人とも格好良いですわ!」

「リルファナちゃん、ありがと!」


 鎧を着て姿見に映してみたが、革製からしっかりした金属鎧となったので今までの新入り感は無くなった印象だ。


 クレアの白いローブも、中堅の冒険者っぽさが出ているように思う。

 新しい杖もあいまって白の魔法使いのようだ。魔法使いというと、わたしは灰色の方が好きだけど。……関係無いか。


 リルファナは袖を通していないメイド服があるので、それを加工するとのことだ。


「1度作っていますし、金属板も指定した形状になっていますので、1日あれば出来ると思いますわ」


 ……別にメイド服じゃなくても良いんじゃないかな?


 まあ、気に入っているのなら別にわたしが言うことでもないか。


 うーん、帽子や兜は入っていなかったので新調したいところだ。

 今はわたしは革兜、クレアは帽子をかぶっているので、良い素材のものに変えたい。


「ミーナ、遊びにきたぞー」


 夕方になるとネーヴァが遊びに来た。


 ネーヴァによるとあの後、残っていた子供服が売り切れてしまったとか。

 子供向けの服だけでなく、母親が自分の服を買っていくことも多かったみたいで随分売れたようだ。


 ラミィさんの店が繁盛しているようで何よりです。


「そういえばミーナよ、鱗に何かしたか?」

「え、お守りに加工したけど、何かあった?」

「うむ、他の鱗よりも位置の把握が簡単になった」


 そういう効果もあるのか……。


 ネーヴァとしても、渡した鱗に何かして変化したのは初めてだそうだ。

 一応、お守りを見て貰ったけど悪いことにはなっていないので、そのまま使えば良いと言われた。


 今回もネーヴァは1泊していくことになった。


「ミーナたちも帰って来たのだ、またゲームもやりたいしな」


 ああ、ボードゲームがやりたかったのね。


 夕飯にはレダさんも帰って来たので一緒にご飯を食べた。


「ミーナちゃんたちに指名依頼が入っていたさね」

「あ、聞いてます」

「そうかい、ならいいけど。ついでに手紙の配達も頼みたいさね」

「ラミィさんから細かい話はまだ聞いてないですが、方向が同じなら良いですよ」

「それじゃ、頼むさね」


 リルファナの装備が出来上がった2日後、ラミィさんの依頼を受けて出発することに決めた。

 レダさんが言うには、どうやらアルジーネの町まで行くことになりそうだ。

ブクマ、評価、誤字報告などありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ