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生産スキル上げ

 川沿いを南下し、ガルディアの西に広がる耕作地が見えてきたところで、西門へと真っ直ぐ進み町に入った。

 ギルドでラミィさんに依頼完了のサインを貰い、そのまま受付で報酬と預けてあるレダさんの家の鍵を受け取る。


 報酬は、追加料金なども含めて大銀貨8枚、それとすでに受け取ってあるブラックペキュラの角となった。


 依頼自体は完了したが、預かっている荷物をラミィさんの店で渡してから解散だ。

 本来ならば依頼完了の報告は荷物を渡してから行うことではあるが、依頼主に信用されていれば問題は無いだろう。


「予想外なことが起きて楽しかったですー、またお願いしますねー」


 笑顔のラミィさんと別れて借りているレダさんの家に戻る。


 ブラックペキュラの角だが使い道を考えてみてから、どうするか決めることにした。

 使い道が無さそうなら、ギルドで売却するときにまとめて査定してもらうことにしよう。


「ガルディアに帰ってくると落ち着くね、お姉ちゃん」


 クレアがほっとした顔でソファに寝転がっている。


「お茶を入れましたわ。王都で買ってきた茶葉ですの」

「なんだかさっぱりしてるね、リルファナちゃん」


 リルファナがお茶を入れて持って来た。リルファナによると少し渋みのある爽やかな味わいらしい。


 ……わたしにそんな繊細な違いが分かるわけが無いのである。



「お姉ちゃん、錬金術っていうのを覚えようと思うんだ」


 王都で買った本をクレアが取り出す。

 リルファナがスキル取得の方法を教えたようで、素材も買い込んだみたい。


 セブクロではポーションから金属素材、食材まで幅広く生産出来ることが売りの生産スキルだった。

 スキルレベルが上がると金属の強化も出来たはずだ。


「興味があるならやってみるといいよ」

「うん!」


 この世界(ヴィルトアーリ)では実際に鉄を金にしてしまうことも可能なので、錬金術というものに偏見はない。

 と言っても、鉄を金にするためには金よりも希少な素材が必要となるので現実的でもないのだけど。


 錬金術師は化学系の研究者といった立ち位置で、あまり使いこなせる人がいないスキルのようでもあった。


 クレアはセブクロの職業で考えると賢者方向へ進んでいるように見えるので、錬金術を上げることが出来れば役に立つ道具も作れるだろう。

 とりあえず装備に使える賢者の石が目標になると思う。


 錬金術の最初のスキル上げは海水から塩をひたすら作ることだった覚えがあるんだけど、さすがにゲームとは違うよね。


 来週はフェルド村に帰るようだし、3日か4日休んだら1日で帰れそうな採取依頼でも受けようかとまとまった。


「王都から帰って来たみたいだから様子見に来たさね。王都はどうだった?」

「思ってた以上に広くてびっくりしました」


 夕飯時にはレダさんもやってきたので一緒に食べる。


「しばらく鍛冶を試したいのですけど、作った武器ってギルドで買取してもらうことって出来ますか?」

「うーん。品質が一定基準を満たしていて少量ならかねえ。短剣は使い道が多いからまとめて買っても良いさね」

「では後で作ってみますね」

「あたしがいなければギルドの店の方に持ち込んでもらっても良いさね、話は通しておくよ」


 そういえば前に作ったときは、レダさんは武器が完成する前に帰っちゃったんだよね。

 前のものは品質が良すぎると思うので、ギルドの店に並べても不自然にならない品質のものを作って見て貰うことにしよう。


 帰宅してすぐに生産スキル上げする気にもならないので、今日はゆっくりすることにした。

 レダさんはギルドに戻るらしく、見送った後は王都で買ったボードゲームで未開封のものを遊ぶ。


 宝物を集めて拠点に帰るまでに、どれだけの宝を集められたかを競うという単純なゲームだ。

 ゆっくり宝を集めて回ると、後ろから迫るワイバーンに追いつかれてゲームオーバーとなる。しかし、ワイバーンを恐れて早く逃げすぎると生還出来ても点数は低い。


 ワイバーンの進む速度は4面のダイス(サイコロ)で決める。種類としてはチキンレースというやつだね。


「10個も集まったのにワイバーンに食べられてしまいましたわ……」

「欲張るからだよ、リルファナちゃん」

「ダイスの目が4以外なら大丈夫でしたのよ!」

「わたしもクレアも5個ぐらいしか持っていなかったから粘る必要は無かったんだけどね」

「そこは浪漫ですわ!」


 この手のゲームは性格が出るものである。



 ――翌日。


 前に試したときはリルファナと武器を作ったが、カルファブロ様の炉は1人でも使えるので、説明書を読みながら短剣を作ってみることにした。

 クレアは錬金を試し、リルファナは木工を上げるそうだ。


 用意した地下室で携帯炉を展開し、買ってきた鉱石をどんどん延べ棒にしていく。

 売却用にわざと少し不純物を混ぜて完全な鋼にはしないことにする。


 この作業でも少しだけ魔力を消費しているようだ。


 刀身を作ったあとは、王都で買った柄と接続する。簡単にすっぽ抜けないか確認すれば完成だ。


 短剣を2本作ったところで魔力が尽きた。知識が無くても勝手に身体が動いて作れるのは良いが、この炉は魔力消費が多すぎるのは問題だ。

 リルファナの作ったポーションで回復しながら、更に4本作ったところで終わりにした。


 ポーションの満腹感のせいで、あまり連続で作るのはきつい……。

 何度も飲むとどんどんきつくなるので、リキャストタイムはこのような状態で再現されているような気がした。


 この満腹感がある状態でも、ポーション以外の食べ物なら普通に食べたり飲んだりすることが出来るので不思議な感覚だ。

 遺跡の調査中に、1本当たりの回復量が減るような印象もあったし、ポーションを利用した短時間での大量生産は無理だろう。


 昼過ぎにはクレアが何しているのか見に行ったが、台所で灰やお酒などを使って染料を作っていた。

 作り方は本に載っていたらしいけど、スキル上げの方法はリルファナに聞いたのかな?


 生活魔法の連打で魔力上げをしているからか、同じ物を繰り返して作るという行為については何となく納得しているようだった。


 リルファナの方は木彫りの像を量産していた。形は何でも良いようで定番の熊から兎、女神様まで様々だ。王都に行くときに出会った妖精さんも作っていた。

 出来が良いのでこれも売れるんじゃないだろうか。


 わたしは魔力回復のための時間潰しとして、王都で買った本『物づくりの極意 ~その道の職人に聞きました』を読んでいた。

 主にセブクロの生産系メインスキルである鍛冶、裁縫、調理、革細工、木工、彫金、製薬、魔法付与エンチャントの職人にインタビューした本という感じだ。


 後半は錬金術や石工、執筆などの職人にもインタビューしているので意外とボリュームがある本だった。


 革細工を除くと、わたしが新しく取る生産スキルの第1候補は執筆である。


 小説、日記、地図、図表を含めたデータ分析など書くことに特化したスキルなので便利なのだ。

 セブクロでは『スキルブック』という他の人がスキルを習得することが出来る本も作成可能だった。さすがにスキルブックは作れないと思うけどね。


 夕方、レダさんが晩御飯を食べに来たので、早速作った短剣を見てもらった。


「随分と質が良いさね。これなら売れるよ。というか1日で6本も出来たさね?」

「カルファブロ様の炉の性能ですね。魔力が持てばもっと作れるんですけどね」

「ふーむ、便利さね」


 とりあえず20本までなら買い取っても良いということなので、明日作ることにしよう。


 それとリルファナに魔力回復のポーションの量産を頼んでおく。



 王都からガルディアに帰って来て3日目。


 午前中から3人とも昨日とほぼ同じ生産スキル上げをしていた。

 そろそろお昼かという時間、台所で昼食を作っていたらチャイムが鳴る。


「あら? お昼にレダさんが帰って来たにしては早いですわよね」


 リルファナが確認に玄関に向かった。


「叔父様! どうしてここに?」


 台所までリルファナがびっくりした声が響いてくる。

 叔父さんってことはヴァレコリーナの貴族だったっけ?


 ……こんなところで何してるんだろう。

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