9 ヤマト視点
さて、お待たせいたしました2章です。
こっから先ですが私の好きなように書いているので
かなーり人を選ぶと思います(^q^)
やっべぇと思ったらひっそり閉じてね!
正直、動揺して仕事が手につかない。
見間違いではなかった。ならば、いったいどうしたというのだろうか。
マリアさんからメッセージが来ることはまま有ることだ。『おやつ買ってきて(かわいらしいイラスト)』でお願いされたり、『今日は仕事で遅くなるよ(泣き顔マーク)』といったのが。
そう、マリアさんだったら別になんとも思わなかった。
じゃあ一体なぜレナからメッセージが届いたのだろうか。
しかも『頑張って(キラキラの星マーク)』である。
一つ前に送られたメッセージの日付を見て分かったが、俺はレナと1年近くメッセージのやりとりをしていない。それも『あっそ』の三文字が最後のメッセージだった。それから一年ぶりのメッセージが
『頑張って(キラキラの星マーク)』
である。これは一体何を意図しているのだろうか。
葬式でお坊さんが木魚ではなくバスドラムを叩き始めるような、それくらいの衝撃を受けている。
受け取った時間はバイトが始まる十分前だから、普通に頑張ってねといっているのか? あのレナが、わざわざメッセージで? これを普通に受け取って良いのか?
一番可能性が高いのはアカウント乗っ取りではなかろうか? 危険だ。家に帰ったら怒られるのを覚悟で彼女のメッセージアプリが正常かどうかを確認しておいた――。
「どうしたの?」
「おわっ」
急に声をかけられ、並べていたはずの商品を落としかける。慌てて手を伸ばしそれを回収すると棚へ戻した。
声の方へ振り向くと、そこでは彼女は深海に住む珍妙な魚を見るように、興味津々といった様子で俺の顔をじっと見ていた。
店出し中だったのだろうか。手にはグロスやらリップといった化粧品の箱を持っている。
「みすずか、驚かすなよ」
思わず大きなため息を吐く。
「ゴメンゴメン、そんな驚くとも思わなかったからさ」
いきなり声をかけられたら誰だって驚くであろう。考えることに没頭していたから自分が悪いとも言えるが。
「特に何もないよ。とりあえず仕事しろ仕事」
考え事をして手を止めていた自分も当てはまるよなと思いながらも、バックヤードに向かって歩き出す。
これで話を切れたかと思ったが、どうやらそうではないらしい。彼女も付いてきた。
「はい。うっそー。何かあったんでしょ」
ニンマリ笑うとなれなれしく俺の肩に手をまわす。
すぐにその柔らかな腕をはずそうとするも、彼女は離さなかった。話すまで離さないかもしれない。
ため息をつきながら、おいおい何いってんだよ、なんて誤魔化そうとしてふと考える。
彼女は小学生の頃から色々と鋭かった。買い物の時だってそうだった。
「それで何があったの?」
何があったかと言えば色々あった。まずは俺の勘違いでのアイドルグッズ消失。レナのワキガ完治。そしてマリアさんとレナの過剰なスキンシップ。そして、あのメッセージ。
「やっぱり何もない」
しかしそれは言うべきことなのだろうか? 確かに彼女とは家庭の問題を共有している仲ではある。母が死んだこと、父が再婚したこと、そして父が死んだこと。彼女はマリアさんやレナに会ったことはないが、俺が黙秘している大抵のことを知っている。逆に俺は彼女の過去を知ってるし、彼女の母が不倫で離婚したことも知っている。
確かに大切な悩みを話すなら、みすずに話して良いだろう。だけどちょっとした家庭の変化などをわざわざ話すべきなのか。それに大本はたった一文のメッセージだ。
「話してみ、話してみ」
更に体を寄せ密着させると、ニヤニヤしながらポンポンと腹を叩く。
「……ホント、たいしたことじゃないんだよ。それにしてもよく悩んでるって分かったな?」
「私は大和をよーく見てるから分かるんだよ」
「えぇ……? ストーカー?」
「んー大和のストーカーならなっても良いかも!」
そう言って肩から手を外すと、化粧品を棚に置く。そしてくるりとこちらを振り返った。
「だって私は大和のおかげでこうやって過ごせるようなものだから」
それを言ったら俺もだと思う。彼女のおかげで…………自炊が出来るようになった。
「――――なんか、昔を思い出すな」
「そうだね」