買い物!(交換!)中編
やっぱり長すぎるので分けます。次でショッピング編最後だよ。
「さて……まずはどんな服装にしたいかだよね」
「うーん、俺はなんでもいいかな」
「そーゆーとこ!そーゆーとこがダメなんだよ!」
意識低いぞ〜と怒られる涼介を見てアレだけは言わないでおこうと思った。やはりファッションガチ勢女子の前であんな言葉を言うもんじゃないな。
「俺は真希の付き添いで来たんだけどなぁ……」
「まだ言うかー、そっちがそう考えるならこっちにも考えがあるんだぞ」
「なんだよ」
頼むから俺たちに飛び火しないように、とだけ願うがその願いはすぐさま打ち砕かれた。
「交換しよ。男子同士」
「おいおい、それって真希と俺、涼介と尾崎さんってことか?」
「和仁は理解が早くて助かるよ。うちの彼氏なんてアレだから」
「さりげなく俺ディスってない?ねぇ」
「まー涼介は別にいいとして」
「酷っ!?」
流石にそろそろ泣く頃なのでいじめるのもそれまでにして、真希に詳細を話すように促す。
「んとねー、和仁がさっき言ったペアでショッピングしようと思うんだよね」
「待て、尾崎さんと涼介って面識あったか?」
「え、私はないけど……」
「俺もないな。一緒のクラスだから覚えてはいたけど」
「んー、それでも親睦を深めるって意味でよろー☆」
「ふっとば……なんでもないです」
涼介が危うく返り討ちに遭わずに済んだところでルール説明が始まった。ルールは
・男女どちらとものコーデをすること
・ペアに服装を選んでもらう
・七千円以内で上下を揃えること
・モール内の服屋で買うこと
・一時間以内に六階のカフェに集合
ということだ。正直お金には困っていないし、ペアは真希なのでこれは楽勝だなと感じたが、問題は向こうのペアだ。正直、涼介とふゆが上手くやれるか心配だが、まぁなんとかやってくれると信じるしかない。
「じゃ、スタートね!行くよ和仁〜」
「あっ、おい待て」
先走って服屋に突撃していく真希を追いかけながらそっちも頑張れよ〜と声援を送る。
「じゃ、俺らも行きますか……えと、尾崎さん、でいい?」
「別に大丈夫だよ」
「了解。ま、時間も限られてるし、まずは二階の服屋から攻めるか」
「分かった。ついてくから……その、よろしく」
「おう、こちらこそ」
☆ ☆ ☆
「えっと〜まずはどんな服装がいいか決めないとね」
「俺もあんましこだわったことないんだけどな……強いて言うならカジュアル系が多いかな……」
「おっけ!カジュアル系ね。ならこれとか似合うんじゃない?」
そう言って彼女が手に取ったのは白のストライプのシャツだった。確かに七分袖で着やすそうだが、サイズが合いそうにない。
「んー、サイズが合わない方がいいかもな。それを上着みたく着てさ、下にカットソーのTシャツでも着ればいいんじゃないか?」
「お、確かにいいね!じゃ、和仁の上はそれで決まりかな!後は下だね」
「そうだけど真希はどうすんだ?」
「あー、私?和仁に選んでもらおーかな〜。見る目あるし」
ニシシ、と笑うと「さ、行こ!私のでもいいよ!」と言って走り出した。おい待てと言わんばかりに俺もついて行くがここまで自由奔放だと確かに涼介も大変だなとしみじみ思う。
☆ ☆ ☆
(やべぇ、何も話せねぇんだけど)
服屋に来たものの、会話が一向に出来ない。尾崎さんて、こんなに喋らないの?マジで?真希とさっき喋ってた時は笑ってたし普通に話してたじゃん?!もしかして俺がヘタレなだけ?それとも────
「あの……?」
「ひゃい!?なな、なんでしょう?」
「アレとか似合うと思うんですけど……真希ちゃん、ああいうの喜ぶと思います」
そう言って指さした先には少し明るめの青のジャケットがあった。七分袖でいつも着ているモノとは随分違ってはいるが、せっかくのチョイスなので「まぁいいんじゃねぇの?」と返そうと振り向いたら既にその下に着るようであろう白で少し柄の入ったシャツが握られていた。いつの間に、という野暮なことは聞かずに、真希のことを女性目線から知っている尾崎さんに身を任せた。
──決して「どうにでもなれ〜」なんて思ってない。……思ってない。
☆ ☆ ☆
「んじゃ次は俺のターンな。涼介ってどんなのが好きかなぁ……」
「んー、私はゆるーく行きたいんだけどね。別になんでも似合うからいいんだけど」
「チッ、これだから美人は得だよなぁ」
「ん?ふゆだって充分美人なのにそれでも飽き足らず私にまで手を出すの〜?」
「ふゆに手を出したことなんてねぇよ」
「へぇ〜〜、ふゆにねぇ〜〜。へぇ〜〜〜」
「あっ、やべ」
「ふーん、なんか隠してたみたいだけど、案外チョロいの?」
「別にいいだろ。てか頼むからやめてくれよ?」
やめてくれよ、と聞いて「はい分かりました」と二つ返事で返ってこなさそうな様子だったが「仕方ないなぁ」で終わって正直救われたような気持ちになった。だが、コーデバトルはまだ終わってはない。しかも気づけば残り三十分を切っていた。ヤバいな。と思いつつ慎重にチョイスを進めていく。
「うーん、上は何となく出来るんだけどな、下がどうも」
「上はどんな感じにするの?」
「緩く行きたいってんだから、Vネック半袖のTシャツのオートミールカラーでどうだ?」
「それいいかも。涼介も好きそうだし、私も好き!」
「ならよかった。でも問題は下なんだよなぁ……ワンピースでもいい気もするけど」
「ならプリーツスカートはどう?それならイケそう」
「でもこの店には置いてないみたいだから他行くか。これだけ買っていこうぜ」
そう言って俺らは真希のVネックと俺のカットソー、それにオーバーサイズの白のストライプを買って店を後にした。荷物持ち? もちろん俺。
☆ ☆ ☆
「もう三十分経ったか。思ったより早いな」
「そう……だね。ちょっとヤバいかも」
「あとは尾崎さんの上下と俺の下か」
「正直、一ノ瀬さんの下はワイドパンツでいいと思います。でもベージュか灰色か迷うんですよね」
真希ちゃんはどっちが好きそうですか?と聞いてくる。尾崎さんの方が背が低いので自然と上目遣いになり、思わず目を背ける。美少女の上目遣いとはこんなにも破壊力やばいが強いものなのか、と思いながら「ベージュかな……」と口許を手で隠しながら呟いた。彼女は「そうですか、じゃあ、一ノ瀬さんは決まりですね」と笑顔を向けてきた。本当にこの人は心臓に悪い。和仁が羨ましいくらい……真希がいたら死んでいたな。今。
「ん?てことは次は俺が選ぶ番?」
「そうですよ。頑張ってくださいね」
「マジか……」
そうやってくすくすと楽しそうに笑う尾崎さんを見て少し安堵したように俺も笑いだした。
毎度更新がギリギリになってしまいました!土日でストック5個できたらいいな程度でいます。
読者の皆さん。毎回こんなタイトル詐欺なろうに付き合ってくれて大変ありがとうございます。まだ序盤……まだ序の口……