看病!(甘々)
長いのでちょっと分けます。2.3パートになるかも
ピピピピッというタイマーとともに意識が覚醒する。時計は午前七時十分を指している。スマホは、自分の手の中にあったので、あぁ、寝落ちしたんだな。と確信した。スマホを見ると、充電は二パーセントしか残ってなかったので、慌てて充電する。
(そうだ、返信あったかな……)
そう思い確認するも、ふゆからは既読さえついてない。楽しかった、とは言っていたけれどやはり疲れたのであろう。あんなに柔らかそうな肌の持ち主である。美容に気を使って早く寝たか、疲れてたから早く寝たかの二択だろう。
(学校行く準備でもするか……)
俺はいつも通り学校へ向かう準備をする。ずっと返信を待っていても途方に暮れるだけなのだから。
そんな時にスマホの着信音が鳴った。相手はどうせ親だろう、と踏んでいたが違った。ふゆからだった。
「はい、もしもし。和仁だけど?」
『あ、あの、熱出ちゃったみたいで……』
「あー、そうだったのか……それ、先生に伝えといた方がいいか?」
『いや、それは伝えたの。ただ……』
「ただ?」
『今、家に両親がいなくてさ……本当にごめんだけど一緒にいてくれない?』
「えっ」
『あ、やっぱり迷惑だよね。ごめんね』
「い、いや!全然いいよ!俺も学校には連絡入れとくから。今からそっち向かう」
『ありがとうね……えへへ、ホント優しいなぁ……』
「……──?なんか言ったか?」
『いいや、なんでもないよ。玄関の鍵開けておくから、お願いね?』
そういうと彼女との通話は途切れた。流石に平日の早い時間から女の子の、それも美少女の家に上がり込むなんて許されるのだろうか、と葛藤するが彼女がいいよ、と言ってくれているのなら行かない訳には行くまい。
(マジかよ……)
さて、学校に連絡、とは言ったものの教務部の連絡先なんて知らない。知っている連絡先と言えば涼介とふゆ、それと親ぐらいだった。 仕方ないな……と思いダメ元で涼介に電話をかけてみる。涼介はすんなりと出てくれた
『よっす〜和仁。急にどうした?』
「あぁ、いや。大したことないんだけどさ、担任に今日学校休むって言っといてくれ」
『えっ、お前今日来れねぇの?』
「ちょっとな……ふ……いや、親が熱出してさ、看病するから」
『そういうことか。ならしゃーねーな、お大事にな』
「すまんな」
俺は早々と電話を切ると戸締りだけして家を出た。ふゆの家は俺の階の一個下。八階だ。コンコンコン、とノックをして開ける。言っていた通り、鍵は空いていた。
「入るぞ〜?」
彼女の家は白とピンクを基調とした、中々に可愛らしい家だった。彼女はこういうカワイイ系の色が好きなのかもしれない。まぁ、親の趣味、とも見て取れるが。
すると左手前のドアが開いて、ふゆが出てきた。熱があるのに無理をしているからか、顔がほんのりと赤く、はぁはぁと息が荒く感じる。ドアを支えとしているも、フラフラだったので流石に心配になる。いや、元から心配だけどね!?
「お、おい、大丈夫か?」
「えへへへ、大丈夫大丈夫……って、わっ」
「おっ……と、大丈夫か?」
彼女が俺の方に倒れてきたので抱き込むような体勢になる。彼女のロングヘアーからは相変わらずいい匂いがする。昨日お風呂に入れた、という証拠だ。となると、今日の朝から熱が出たのだろうと思う。
「ふゆ、熱は何度あるんだ?」
「それが実はまだ測ってないんだよね……」
「どこに体温計あるんだ?」
「洗面所の左上の扉開けたらあるはず……」
「って、おいおい。もうフラフラなんだからベットで寝てろ」
「えへへへ……和仁くんあったかい……」
「お、おい、熱でおかしくなってるんじゃないのか?」
「失礼な。おかしくなんてないです!」
「いや充分おかしいから……」
そういうと俺は有無を言わさずに、背中と膝の後ろに手を回してお姫様抱っこをする。彼女は「わひゃ」と可愛らしい呻き声を漏らす。正直恥ずかしいが、ふゆも目がとろんとしているし、後の記憶もあまり覚えてないことを祈り、羞恥心に耐えながらベットまで運んだ。
「じゃ、体温計とってくるから、安静にしてろよ。あ、あとなんか食べたいもんあるか?」
「……りんご」
「……おっけ、台所もちょっと借りるぞ」
家はやけに静かだ。親もいないんだし当たり前だろ、と言われればそれまでだが、それとはどこか違ったような静けさが包み込んでいた。元々ふゆはそこまで社交的ではないものの、明るい性格をしている。それが風邪によって打ち消されているのかもしれない。
(まぁ……ふゆも大変そうだな)
俺は他人事のように思いながら体温計を取ってきた。流石に服を脱がすのはマズいので、それは自分でやってもらうことにした。
「あとで何度かいってくれよ。俺はご所望のりんごでも剥いてくるよ。あ、すりおろした方がいいか?」
「んぁ……そっちがいい……」
彼女はぼーっとしながらも俺に答えてくれている。さすがにこれ以上無理をさせる訳にはいかないので「じっとしてろよ」とだけ告げて台所へ向かった。
りんごはすぐに見つかった。とりあえずすりおろして皿へと移して持っていく。
「あーんしてたべさせて」
「は?ちょっと甘えすぎでは……まぁいいか」
ふゆが無茶振りをしてくるのですこし困惑したが、風邪をひいてるから仕方ない。と自分に言い聞かせて自制を保った。
食べさせるとは言っても、体勢的に喉に詰まらせてはいけないので、背中に手を回して上体を起こしてやる。それからスプーンに一口分を掬ってやるとぱく、と素早く食べた。 彼女が「もっと」と言うので「ゆっくりな」と言いつつ食べさした。
「これで満足か?」
「う……ん。大丈夫」
「そういえば、熱何度だったよ」
「……三十八度七分」
「……病院行くか。親はいつ帰ってくるんだ?」
「夜中」
「そか。あ、歩けるか?」
「う、うん。何とか。保険証出してくるね」
そういうと彼女は覚束無い足取りでフラフラと部屋を出ていった。俺も支度をして外出に備えた。