秘めていた思い
ドーモ。……オヒサシブリデス(萎縮)前編みたいなもんですこれ。
「んじゃ、今日はありがとな〜」
時刻は六時過ぎ。勉強と休憩を繰り返していただけだが、あいつらといると時間があっという間に過ぎ去る。
俺の隣で小さく手を振ってるふゆも俺と同じことを考えていたのであろう、「早いね〜」と少し寂しそうに呟いた。
「じゃ、戻るか。 夕飯、食べてくんだろ?」
俺がそう言うと、彼女は今までの少し暗い表情から一転して『待ってました』と言わんばかりに明るい返事をした。
☆ ☆
「俺は準備してるから座ってていいよ。 疲れてるだろ」
「ううん、大丈夫。 そんなに心配しなくても私は平気だからさ。 あ、食器とか運んどくよ?」
俺自身、手を煩せないように、と思っていたが、彼女が自主的にやってくれるというなら、彼女の意志を蔑ろには出来ない。
「じゃあ頼もうかな。 小皿とお箸だけだけど」
そう言うと彼女は「あーい」という気さくな返事を返してガチャガチャと後ろの戸棚を漁り始めた。
「んぅ……!」
「? なにして……あぁ、上にあったから取れねぇのか……」
野菜を洗う手を辞めて俺が代わりに取ろうとした瞬間だった。
「わっ……!」
ふゆが体勢を崩し、転びそうになる。片手は食器棚に手をかけていたので、転べば惨事になることは確かだった。
───もっとも、俺が支えていなかったら、の話だが。
「あっ……ぶねぇー……」
「んっ……」
彼女は転けると確信してたのだろう。身を縮めて、目をぎゅっと瞑っていた。
「ほら、気をつけろよ」
「あ、ありがと……あと、ごめん」
「それは別にいいけど……そろそろ手、離してくれないと」
俺がそう言うと、彼女はハッと気づいて俺の服を逆手で握っていた手を素早く離した。
「ご、ごめん。 あ、後は俺が全部やっとくから座っといて。 怪我はない?」
「あ……いや、ない。 ないよ。……ホントに」
これは彼女なりの気遣いなのだろうが、どうにも嘘をつくのが下手くそだ。ここまで必死に否定すると逆に嘘くさくなってしまうのは分かりきっている。どうせあるのだろう。
「……あるんだな」
「はい……」
彼女は嘘がバレるとすんなりとキズを見せてくれた。
「あー、擦ったのか……ほら、手貸せ」
「ん……」
俺は差し出された彼女の小さな手を掬うように持ち、台所の流水でふんわりと痛まないように洗う。 肌はとてもきめ細かくて、光にかざせば透き通りそうなくらいだった。 ……こうしてずっと見ていられるのも今のうちなのだろうが、少し気はずかしくなって来たのでやめた。
「ほ、ほら。 後は絆創膏貼っとけば直ぐ治るだろ」
「う、あ、ありがと……」
彼女は少し頬を赤らめながらリビングに向かっていったので、淡々と作ってしまうことにした。
☆ ☆ ☆
「ほい、お待たせ。 簡単なものだけどさ」
「ううん、ありがと。 ……あ、卵焼き……!」
「あぁ、それ。 好きって言ってたからさ」
ふゆは俺に聞こえないように「覚えててくれたんだ」と言ったんだろうが、めちゃくちゃ普通に聞こえてるぞ。それ。……というか約半日前のことを覚えていないやつなんているのか……?
俺たちは黙々と食事を済ませた。ふゆが「さっき手伝えなかったから手伝う……!」と言ってきたが、また怪我でもされたらこちらとしても心苦しいのでやんわりと断っておいた。
後片付けをしている最中、時折リビングの方から「マジで……」とか「どうしよ〜」などなど、悶えるような小声が漏れてきていた。
どうしたのだろうか、と思いキッチンから少し覗いて見ると、ふゆがスマホとにらめっこしているだけだったので一安心した。
☆ ☆ ☆
「ふぅ……」
食後、小一時間くらい経っただろうか。俺は片付けも終わり、ふゆはと言うと復習でもしているのか、また勉強して詰め込んでいた所だった。
「お疲れ様」
頑張っている所に水を差すのもどうかとは思ったが、水分補給と比べればそんなことはどうでもいいと思えた。
「うにゃっ……あ、ありがと。 これ、ミルクティー?」
「そ。 ……にしてもまだ勉強してたのか。 帰んなくてもいいのか?」
確かに勉強するのはいい事だとは思うけど、流石に夜遅くまで友達の家でやる、となればまた話は違ってくるだろう。
「あ、その……あの〜……ちょっと事情があって。だから……」
よし、なんとなく予想はついた。腹を括ろう。
「同棲してください!」
「分かりましたぁ!!」
……え?今なんて言った?同棲って言った???俺はてっきり『泊めてください』とでも言うのかと思って条件反射で言ってしまったが????
「……!ホント!?ありがと〜!!!」
……この喜びようなので今更発言を撤回することもほぼ不可能と言えよう。こうなってしまったので即座に諦めがついたのも事実だ。
「まぁいいけどさ……もう夜だし風呂入る?今から沸かすけど」
「えへへ……あ、入る入る! 先いいの?」
「あとでも先でも変わんないでしょ」
「そうだけど〜。 そうそう、さっき分かんなかった所あるから後で教えてよ」
「はいはい。 落ち着いたら、な」
俺はそう言い残してキッチンにある電源を入れにむかった。
まだ風呂に入ってもいないのに、自分の頬が赤く染まっているのが分かるほどに熱かった。───彼女も同じ気持ちなのだろうか。今はそれだけしか考えられなかった。
書く書く詐欺さん!?(また上げていきます。テストは滅せよ)




