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勉強会!

クソほど遅くなりました本当に申し訳ない

 お昼を食べ終わり、俺がガチャガチャと後片付けをしていると、ふゆがひょこっと顔を出してきた。


「ねー、真希ちゃん達遅くない?」


 確かにいくらなんでも遅い。流石に遅れていることぐらいは把握しているだろうが、向こうにも事情があるのであろう。

 正直、遅れられてもあいつらの勉強を教える手間が省ける……はずなんだがな。むしろ、一対一(サシ)の方がやりやすい。


「……ま、一応電話かけてみるか」


 俺は一度洗い物をする手を止めてしっかりと手を拭ってからポチポチと電話番号を打つ。……流石に安否不明だとなそりゃ心配にもなるよな。


「ねぇねぇ、真希ちゃんの方にかけてよ」

「なんで……? いやまあ、いいけどさ」

「ありがとっ」


 俺は言われるがままに真希の電話番号に打ち変えた。

プルルルルと言う音が続くが、しばらくすると元気な声が聞こえてきた。


『やっほ〜〜!もしかして和仁〜!?』

『そ、そうだけど』


やけにハイテンションだったので少し吃る。


『聞いてよ! さっき信号無理矢理渡ったら最後の最後で涼介がコケたんだよ!』

『えぇ……どんくせぇなぁ』


 ……あぁ、だからひぃひぃと笑いながら言ってきたのか。なんとなく状況は理解出来た。


『んじゃ、それ以上怪我のないようにな。勉強は先に始めとくわ』

『おっけ〜! あ、絆創膏用意しておいてあげてね〜!』


俺ははいはいと適当にあしらっておいたが、奥から「お前な……」と落胆している人の声が聞こえた。まぁ幻聴だろう。絆創膏は用意するけど。


「んじゃ先始めとくか」

「ん。てか、なんて言ってたの?」

「あぁ、まぁ……鈍臭いことした上に普通に遅刻してるから……ってよ。つーか、真希に繋げる意味あった?」

「んー?だって五分前にメッセージ送ったら既読がついたから」


 なるほどな。苦手とはいえど、多少の機能は分かるんだな。流石に分かってないとヤバいとは思うけどね。なんだかんだ分かってきているみたいで俺は嬉しいよ。


「ま、あと少しで着くだろ。洗い物だけ済ませるから、先にやり始めといて」

「わかった〜」


 彼女の呑気な返事が返って来る。自分でもふにゃっと口許が緩むあたり、このゆったりとした時間が一番癒されるのが体に染みて分かる。





☆ ☆ ☆






「……ねぇ、ここってどう訳せばいいの?」

「そう言えば苦手教科は英語か」


 洗い物を終え、ふゆの隣に腰を下ろすとほぼ同時に質問が飛んできた。


「それかぁ……ただ単に単語の意味がわからないだけだろ」

「えへへへ……まぁそうなんだけどね」


 指をさしていた英文には『Will you marry me?』と書かれていた。どうせ『marry』の意味がわからなかったのだろう。


「意味は……」




☆ ☆ ☆






「涼介ー!早く行くよ〜」

「ちょ……怪我人だぞ俺……」

「もー!擦りむいただけで大袈裟すぎ! というか和仁の家の前でコケる?」

「うっせ」


 今日は和仁に色々教えてもらう日のはずだが、普通に遅刻している上に、躓いて転んでしまうという醜態も晒した。くそ恥ずかしい。


「いてててて……真希早……っ」

「それぐらい耐えなさいよ……ほら、肩貸してあげるから」

「面目ない……」

「全く。せめて和仁とふゆちゃんの前ではシャキッとしなさいよ?」


 俺は「はい……」と弱々しい返事を返すと、真希はよろしいっと言ってエレベーターに乗り込んだ。


 和仁のいる階までは十秒もかからなかった。インターホンを押そうかと思ったが、先程真希が電話していたのでまぁ静かに入れば大丈夫だろう。

 ノブを回すとガチャっと音がしたが、奥から出てこないあたり、気づいてなさそうだ。真希も同じことを思ったのか、俺と合わせるように「サプライズで行くよ」と俺の耳許で囁いた。


 軽く頷いた後、ゆっくりと音を立てないように忍び足で廊下を進む。フローリングがギシギシと軋むが、勉強を教えているのか、些細な音には気づいていないようだ。

奥から声が聞こえてくるので、タイミングを見計らってドアを開けることにした。


「だから────は────」

「あっ、────」


「よし、今だな──」


 俺はそう言ってドアの向こうへ飛び込んだ。その数瞬前に声が聞こえた。それは真希にも聞こえているはずだ。


『結婚してくれ──』






☆ ☆ ☆









「結婚してくれ───ってうおっ!?」

「「あ」」

「お前ら……せめてインターホンくらい押せよ……」

「ごめんごめん、つい……ね?」


 はぁ……と少しため息が出るが、そこまで怒ることでも無いので許してやろう。


「あ、そだ。ふゆちゃんと結婚するの?」

「……は?」


危うくお茶を吹き出す所だった。こいつホント何言ってんの?涼介も涼介で「うわ……まじ……?」みたいに口を手で塞いでんじゃねぇよ。


「しないし、出来ないよ。そもそも俺十七だし。……って、お前らどうせさっきのでも聞いてたんだろ」

「まぁ……あれはたまたま……」

「別にそれは嘘でも本当でも構わないけど、俺は勉強教えてただけだから」

「……ホント? ふゆちゃん何もされてない? 襲われたりしてない?」


 真希が心配そうにふゆに問いかけているが、オレがこんなところで嘘をつくとでも思ってんのかこいつ。ふゆも手を横に振って全否定してるじゃねぇか。


「……ほら、ホントだろ」

「ふーん……ま、ならいいけど。そのかわり泣かせたら処すから」

「真希ちゃん真希ちゃん。流石にそんなことしない人だって分かってるから」


 ……まぁ、味方してくれてるし……俺もそんなことするつもりは毛頭ないし……ね?分かって??


「ま、そこまで言うならいっか。勉強しよ〜! あ、でも涼介は先に傷洗ってきてね」

「ウス」

「じゃ、先やっとくか」


 先程までの喧騒とした空気とは打って変わって急に静かになった。

真希もすっかりとクールダウンして、既に問題集に取り掛かっていた。ふゆは着席したままだったので、そのまま続きをしていたが。


 そう思えば真希は成績も良く、運動も出来る。なのに上位者には乗らず、体育祭でも優秀な戦績を残したことも無い。天才肌のはずなのに何故だろう、と疑問に思うが、彼女は彼女なりの答えがあるのだろう。そう自分に言い聞かせ、勉強に取り組むことにした。


 しばらくすると大きめのパッドを膝に貼っつけた涼介が戻ってきた。絆創膏の上からでも分かるくらいに血が滲んでいて、見ているだけでも痛そうだ。


「おう涼介。……大丈夫なのかソレ」

「んーまぁよくあ……そんなになったことないけど、大丈夫でしょ。帰る時、ヤバそうだったら貼り替えてもいい?」

「別にいいけど。血まみれだけは勘弁な」


 冗談交じりにそう言っておいたが、まぁ大丈夫だろう。「へいへい」と軽い返事をした後に席について課題をやり始めた。……それ春休みの課題では?とみんなから視線を集めていたが、一瞬にして散った。



☆ ☆ ☆






 涼介が来てから小一時間程経っただろうか。少し疲れが顔に出始めた。普通に考えて、一時間も集中して勉強すればそうもなる。実際、教える方に回っている真希と俺はだいぶ疲れているはずだ。


「そろそろ休憩にするか。疲れたろ」

「さんせ〜! プリン食べたい!」


 プリンはねぇかな……と小声で言ったものの、真希にも頑張ってもらってたし、このくらいのご褒美なら奢ってあげてもいいんじゃないかと思った。


「じゃあプリン買ってきてやるよ。ふゆはなんかいる?」

「あっ、じゃあ…… ……えと、後で送る!」

「? そ、そうか?」


 彼女は少し考えた後に出した答えが「保留」だった。まぁ名前でもド忘れしたんだろ。アマレーナとかフィナンシェとかだったらあんまし出てこないもんな。


「じゃ、ちょっと行ってくるわ」

「えっ、俺は」

「あー、プロテインでいっか」

「いや良くねぇよ!?」


 扉の後ろから糾弾するような声が聞こえてきたが、無視して玄関を勢いよく飛び出した。……バナナとプロテインにしてやるから許せ。





☆ ☆ ☆






 コンビニには目当てのもの(笑)はあったが、ふゆの要件を聞くのを忘れていた。俺はあぶねぇと思いながらもLIMEを見ると、一件だけ連絡が入っていた。


『和仁くんの家で夕飯食べてってもいい?』


は?なにそれ可愛い(まぁ別にいいか……)


 コンビニには俺の他にも利用客は何人か居て、冷たい目線を送られたこと、それと本音が漏れていたことに気がついた。俺は急いで『いいよ』とだけ返事を返し、真希と涼介の分だけ買ってさっさと店を出ることにした。





☆ ☆ ☆





「お、おかえり〜」

「ほらよ、バナナとプロテイン」

「なんか増えてる……ってそうじゃないんだけどね!?」

「ほらよ。でっかいプリン」

「マジで! これくれるの!?」

「まぁ頑張ってもらってたし……教える側の追加報酬みたいなもんだ」

「やった〜和仁せんきゅ〜! あれ? ふゆちゃんは?」

「あ、私はいいよって送っといたから……」

「そうなんだ。和仁、あんた後で何かしたげなさいよ?」

「そのくらいするってば……」


 みんなが休憩し始めたのを確認してから、俺は一人で台所へ向かった。先程言われた夕飯の支度をするためだ。


 元々買ってあった(サワラ)に母親がスーパーで買いだめしてた茶碗蒸しでいっか。……後でもう一品作るとは思うけれど。まぁこれだけ出しておけばいいだろう。そろそろ戻らないと怪しまれるからな。





「なぁ和仁ー、充電器貸してくれー」

「はいよ……ってお前機種違うじゃん」

「うわ、そういえばそうだった……俺もう電池ないんだけど」


 ぐわあああと頭を抱えているが、それほど使わないだろ……。


「ま、帰ってから充電することだな」

「ぐえーまじかー」

「はは、今日の涼介なんかおっちょこちょいだね。あ、ゴミってどこに捨てればいい?」

「おっちょこちょいなのはいつもだよなぁ? あ、ゴミは貰うよ。ほら、涼介も」

「お、せんきゅ。……このおたんこなす……」

「あ?」


 俺らがそんな馬鹿話をしているそばでふゆはクスクスと笑っていた。こうして見るとなんだかんだリラックスできてそうで良かったと心の底から思う。前にモール行った時より一層いい笑顔をしているから間違いないだろう。


「ほら、再開するぞ。時間ないんだろー?」


 俺が警告すると「やべっ」と言いながらも勉強に励んでくれていた。

わざとここで切っておきます。次に繋げるためにここでプッチンしておくんじゃよ……


約一ヶ月ぶりの投稿となりました!大変遅くなりました!この作品を見てくださっている方、応援してくれている方、大変お待たせいたしました!これからもよろしくお願いします!

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