梅雨!?
遅くなってすみません!体調がね!!(言い訳)
「雨……やまないね」
六月に入ってから、もう五回目の雨だった。
しとしとと降る雨もあれば、ザーザーと激しい音を立てて降る日もあった。
こうも降ると鬱陶しいものである。天気予報でも今後数日は雨続きと報道されている。まぁ今日は雨量が少ないのが唯一の救いだ。
「そうだな……なんかジメッとしててやだな」
「お、和仁もそう思うよな〜」
「なんだ、涼介か」
横目に話しかけてきたやつを見ると涼介がいた。元より、声で分かってはいたが。
というか、雨なぞ好きな人がいるものだろうか。雨は好き、など聞くが本当にそうなのだろうか。俺はその事実無根なものの、どこか信憑性がある噂が到底信じられなかった。
しとしとと降り続ける雨を見ながらふゆにさりげなく聞いてみる。彼女は「やまないね」とは言ったものの、「鬱陶しい」だの「嫌い」などと口に出してはない。
「なぁ……ふゆは雨好きか?」
「うーん……こういう雨だったら嫌いじゃないかな」
彼女はそう言うと俺の見ている窓に手を添え、外の様子をぐるっと見渡した。
「私は、こういうのも風情があっていいと思うよ。それに、街の違った一面が見られるのは好きだから」
「へぇ、違った一面かぁ……」
俺が変な妄想でもしているのだと勘違いしたのか彼女は「あ、や、変わり果てたとかじゃなくてね……」と慌てて言う。俺と涼介は「そんなこと思ってねぇよ」と苦笑した。
「まぁでも、週末とか土日には晴れみたいだし、いいんじゃないか?」
涼介はスマホの天気アプリを見ながらそう言う。俺も手元のスマホで見てみると、なるほど確かに土日は晴れそうだった。金曜日は怪しい天気になりそうだが、天気は回復する見込みだそうだ。
「ん〜それでも湿気が凄そうだよな。今でもジメジメしてるくらいだし」
「まぁ家で大人しくしてろってことじゃない?流石にこれで出かける〜とかなら風邪ひくよ?」
「ふゆじゃあるまいし引かねぇよ」
「あっ、酷い。それ暴言だよ暴言」
むぅっと頬を膨らませて可愛く怒るふゆをまぁまぁと宥める。俺はふと、涼介の方を見るとニヤニヤと悪い笑みをしていた。
「……なんだよ」
「いやぁ、お前さ。尾崎さんのこと『ふゆ』って呼ぶんだな」
「「あっ」」
見事にふゆの声とハモる。正直、真希には悟られていた様だったから、涼介も悟っているものだと思っていたら迂闊だった。
「へぇ〜『ふゆ』ねぇ〜。へぇ〜〜」
「お前ちょっとシバくから来い」
「あのっ!私からそう呼んで欲しいって言ったので・…別に……いいんですけどねっ!」
「ちょ、ふゆ……?」
「和仁くんは優しいし、助けてくれるし、カッコいいし、尊敬してますし、だから別にいいんですっ」
「おま、ちょ」
赤面しながらも涼介に抵抗するふゆだけど、これ、墓穴掘ってない?気のせい?
「へぇ〜、よかったな和仁。モテモテじゃねぇか。やっぱ付き合ってんじゃねーの?」
「「付き合って(ません)(ねぇよ)!」」
またもや声がハモる。あとなんかヒートアップしてる。あれ、なんか梅雨なのにド暑いんだけど。もう梅雨明けかな?
「お、おいおい、落ち着け落ち着け。お前らの事情は分かったから。だから……鎮まってくれ。俺まで視線を浴びて教室外にいる真希の軽蔑するような視線が痛てぇんだよ。」
これだけ騒いでいるのだから教室にいたクラスメイトの視線はほとんどこちらに向いていた。それどころか、廊下を歩く生徒たちの視線さえこちらに向いていた気がする。真希も例外ではない。というか、真希に至ってはガン見している。怖い。
ふゆはまだほんのりと赤面したまま「ごめんね……?」と小声で言ってくる。手振りで「いいよ」という意を送ると、それを受け取ったのか「ありがと」と返してくれた。普通に伝わっているようで助かった。
「りょ〜すけ〜?」
「アッ」
真希が笑いながら涼介に歩み寄ってくる。ちなみに目は笑っていない。むしろハイライトさえ消えている。
「ふゆちゃん困らせてたよねぇぇ?」
「あっ、いえ。大丈夫てすので」
「そう? それでもコイツは連れてくけどね」
「えっ」
「『えっ』じゃないから。和仁まで困らせて……ねぇ?」
「いや、ふゆがいいって言ってんなら別にいいけどな……まぁどうしてもってんなら、一発だけシバいといてくれ」
「ん、分かった。じゃあね〜……じゃないや。ホントは和仁に用があるんだった」
「え?俺?」
正直俺は何も悪いことしてないから突然シバかれる、とかいうクソイベはないと思うがめちゃくちゃ怖い。
何が起きるかわからない時がいろんな意味でドキドキする。
「和仁とLIME交換してなかったじゃん?ほら、交換!」
そう言ってQRコードを表示した画面を押し付けてきたので急いで起動して読み取る。Makiというネームで出てきたので追加しておく。
「あっ、ふゆちゃんも!はい!」
「あぅ、えと……どこで読み取るんですか?」
「えっ? じゃあ和仁とはどうやって交換したの?」
「スマホ振って、って言われたからそうしたらなんか出来たから……」
彼女は「あぁ……」と少し嘆くように呻いた。これって俺が教えておかないとダメなの? ってか分かってると思ってたんだけど。
「ちょ、おい、和仁」
真希が目で訴えかけていたようだが、俺が気づかなかったので呼びかけられた。和仁の彼女のようなもんなんだから和仁が教えてあげなよと言われてるような気がした。
「えっとな……ここのプラスを押してだな……」
「ふぇっ、あ、か、顔近っ……」
「ん? どうし……ってあぁ、ごめんごめん」
「や、別にいいけど……ドキドキするから……さ」
いや、ドキドキするのはこっちもなんですよふゆさん。そんな顔されてドキドキしない男なんていないと思うんですよね。……てか真希も何ニヤニヤしてるんだか。
「んでここのQRって書いてるとこ押せばいいからさ」
「これで真希ちゃんの画面写せばいいの?」
「そうそう。おっ、ちゃんといけてる」
真希は二人の追加を確認するとスマホを胸ポケットにしまって「今度こそじゃあね!」といって蚊帳の外であった涼介を連れて教室から出ていった。
去り際に「ふゆちゃんを頼んだよ」と聞こえたが、まぁ……気のせいだろう。別に頼まれることでもないが。
その後、隣の教室からペシッ!という乾いた音が二回響いた。
梅雨で、ジメジメして鬱陶しいことがほとんどだが、この日だけは無性に熱く、まるで夏の日差しが差し込んだようだった。




