3/35
バトルシップ
「祖国の命運は諸君に託された! 総員、帽振れーッ!」
これが5時間前、出港した時の記憶。
「大佐……我が艦隊は勝てるのでしょうか?」
「……安心せよ、艦隊戦は数で決まるわけではない」
これが1時間前、青い顔をした下士官と話した時の記憶。
「て、敵艦隊発見ッッ!!」
「距離は?」
「2時の方向、1万メートル! 突撃してきます!」
「……応戦する。面舵だ」
これが30分前、朝霧に包まれた艦橋に緊張が走った瞬間の記憶。
「敵艦発砲! 夾叉されました!」
「何をやっている!? 回避運動を取れッ! 反撃まだか!?」
これが15分前、怒鳴る中佐の下、鈍重な戦艦が必死に艦砲を動かした時の記憶。
「……弾着! 直撃弾です! 敵戦艦……大破!」
「よくやった! 残りも沈めて珊瑚礁に――」
――これが……最後の記憶。