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雨
降り続く長雨にニヤニヤ。
私は雨が好きだ。楽しいことも嫌なことも、雨が流しさってくれるから。そして海に帰った雨は、また雲になって還ってくる、美しき詩の世界。
「雫? こんなところにいたのか」
「……」
「夏休み前だってのに、なんで教室に残ってんだよ」
「……」
「相変わらず無口だな」
無口じゃない。雨音を聞いているだけだ。
そこで幼馴染は飲み物を取り出した。む、ミネラルウォーターか。ジュースじゃないところは好意に値するが……
「知ってっか? 水ってずっと循環してんだと」
もちろん。というか、それを教えたの私だ。
「つまり、全ての水は雫の唾液その他諸々であり、口をつけると文字通り――」
「――は?」
「……ようやく喋ったな」




