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猫
「敵襲! 各員、急ぎ離陸せよ!」
鳴り止まぬ空襲警報の中、兵舎の陰に猫を見た。……猫は嫌いだ。
「猫目のカニンガム! 敵爆撃機を確認!」
「ケリー、その渾名はやめてくれ」
一気に操縦桿を引く。体にかかる重力が心地よい。航空戦は高度が全て――
――ニァ
反射的に機体を横転、離脱。同時に機体が激しく振動し、割れた木片が頬を打つ。
――ニァ、ニァ、ニァ!
頭に響く猫の声に、必死に機体を急降下。敵に上を取られたらしい。夜空を切り裂く火線が雨のように降り注ぐ。
クソ、何がnearだ、そんなことは分かっている!
何かが膝に当たった。ケリーの首だった。
……だから猫は嫌いだ。群れないお前が守れる者は、俺だけか。




