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デイリーブレイカー Sign In Null  作者: 堀デデデ
3/33

2話 進むべき道なり

高校生の戯れです。PART3

我が家に帰ってくる。しかし、そこに落ち着きはない。有るのは厄介な任務と…


「あああ!もう!リケイが直談判するとか言い出すからこんな面倒なことになったんだからね!」


フミカによる五月蝿いお説教だけ。


「仕方ないだろ!町の分離なんてさせるわけにはいかない。」

議会は長年の思想の隔たりを持つ者たちを隔離するという制限に訴えたのだ。

ここで立ち上がらねば自由の名が廃る。それに…


「それに…もし法律として施行されれば、俺たちが一緒にいることもできなくなるかもしれない。そんなの嫌だろ。」


最後の一言は自分に再確認させるためのものだった。けど、これでフミカもわかってくれたようだ。はっとした表情になったかと思うと

「ずるい……」と誰かへの呟きとともに静かに俯いてしまった。


ふう、と息を漏らすフミカ。これは思考を切り替えるときの癖みたいなものだ。どうやら文句をたれるのはやめてくれそうだ。


「今更なんだけど…そもそもこれ可能な任務なのかしら?」

フミカが顔をあげ、けろっと言う。


「城に潜入するぐらい余裕だろー」

と楽観的なソルだが、確かにことはそう簡単ではない。


「問題はその後よ。ケミはしばらく寝込ませるぐらいの軽い怪我を負わせるだけでいいって言ってたけど、狙う相手は帝国議員相当な魔術師よ、下手すれば返り討ちに合うわ。」


いつの間にあいつの愛称はケミになったのか。


議員の魔術師が相当な強さなのは聞いていた。何しろ議員の大半が軍部の超エリート、もしくは8年前の内戦で戦功を上げた魔術師。並の人間ではないだろう。

そして、今日俺たちは肌身で感じた。ケミに相対しているときは見せなかったが、俺たちは無言のうちに感じていた…奴の、いや、帝国議会の魔術師というものの強さを。


魔術師の本来の強さは魔法具と共にある。魔法具を使うことによって人間は魔法の限界を越えることができる。例えば、俺はこの体一つでは、物と体をくっつけることぐらいしか出来ない。だが、『次元の剣』を行使することで次元を越えた斬撃を繰り出すという圧倒的な戦闘力を己に付加できる。


しかし、ケミは魔法具など一切使わず、大量の槍を召喚してみせた。もし、彼らが魔法具を使うとなれば……


「確かに一対一ならヤバイかもしれんが、こちらは3人、単純に数で利があるだろ。まあ、何事もやってみなきゃわかんねぇ、そうだろ?リケイ。」


ケミの強さを見る限り、3人だからといって…


ーーーいや、ここでぐずぐず考えたって仕方がない。


ソルの言うとおりだ。やってみなきゃわからない。このミッションが成功するかどうか。ユニバーシティの分離の話が無くなるかどうか。


そもそも、ケミの話が事実なのか。

このことでさえ、確信の無い今、俺たちがすべきなのは…


「今夜の内に出発しよう。ナオキ城までの道案内はフミカに任せるぞ。」

行動を起こすこと。ソサエティの本丸ナオキ城のある街ジュネープへまずは行こう。


「了解。はあ、物騒な里帰りになっちゃった。」


俺やソルと違いフミカは魔術派の家系出身。ここ8年ユニバーシティに住んでいるとはいえ、ナオキ城は昔住んでいた場所の近くだと言っていた。記憶の片隅には道が浮かぶだろう。


逆に俺は産まれも育ちもユニバーシティのため、ほとんど道はわからない。ソサエティ領には仕事で2回入っただけだ。

勿論それでも違法なのだが。





深夜1時。俺たちは北にバイクを走らせる。バイクは2台しかないので、フミカは俺の後ろに乗っている。しばらくバイクをとばすと月明かりをいっぱいに受けながらそびえ立つユニバースの壁の真下に着く。ここはユニバーシティの隅っこ、それほど夜遅くないとはいえ、人の影はない。


「誰もいないわね。」 フミカが確認するように言う。


「確かに誰もいねえが、こんな早い時間から出発する必要あるか?」

ソルは不満そうである。


「どうせなら早く行って町とか観光したいじゃない?ほら、朝市には新鮮な魚が並ぶって有名じゃない。」


そんな理由で本来なら6時まで寝て出発する予定なのに5時間も早く起こされたのか。


「あのなぁ、遊びに行くんじゃないんだぞ。町で顔が割れたらどうするんだよ。」

自由気ままな後ろの女に言う。


「まあ、良いんじゃない?どうせ、ソサエティの皆様がいる城には真っ正面からじゃなくてこそこそ入るんでしょ?」


まあ、その通りなのであるが、だとしても顔見知りなんかに会ったらまずい。科学派出身の俺がいると知られてしまう。


「それでも警戒されないのに越したことはな…」


「悪い、その話は後にしてくれ。人の気配が近付いてる。早いとこ壁の外に出ちまおうぜ。」


ソルが物音を察知したようで俺たちは揃って黙る。


「Breaking down ,alter the our road.」


ソルの魔術によって、目の前の壁に青白い魔方陣が描かれる。ソルが手をかざすとその壁は徐々に透過していき、やがて広い外の世界が現れる。のどかな田畑の広がるユニバーシティの外、ソサエティ領だ。


「何度見てもすごい魔術よね。やっぱり難しいの?」

フミカは魔法が使えないから魔術については疎い。


そこが少しややこしいのだが、フミカはいかんせん絶望的に不器用で、料理を始め、裁縫も出来ない。その不器用が極まり魔術が使えない。そのため高校に進めなかった。

しかし、例外がフミカが背負っている『祈りの琴』だ。幼い頃から楽器として、魔法具として、使い続けるた代物で、2年前にフミカの母が亡くなってからは形見となっている。


「めちゃくちゃ高難易度なわけではない。でもまあソルの凄さはそれぐらいの難しさの魔法をいくつも使えることだからな。」


そう、ソルは戦闘用に高次元な自己強化魔術、それ以外にも副業用に多彩な魔術を使い分ける。戦闘にしか役に立たない魔法使いの俺とフミカはいつもお世話になる。


「しかし、なんでこんなに魔術師として優秀なのに高校を退学になるのかしら?」


二人でソルもじっとりと見る。


魔術行使を終えたソルが振り替えって悪びれもせず言う。

「あれは先生のほうから誘ってきたんだよ。それなのに不純異性交遊の責任を俺が取らされるんだぜ。」

と、呆れたように言うソル。

これには呆れるしかない。


「もういいわ、行きましょ。」


フミカが背中をぽんぽんと叩く。俺は馬か何かか。腹いせに急発進してやる。


俺のバイクとソルのバイクが壁の外へ出て、今度は急ブレーキかけてやる。振り向くとすっと壁は透明から元通り白い岩肌に戻った。


「あんた、今のわざとでしょ。」

案の定、後ろから苛々したように話しかけられる。


「何のことかわかりませんね、お嬢さ…」


その瞬間ぱっと光が当たる。その光源を見ると…

警備員と思わしき男がこちらを見つめていた。


「あっ。」口から漏れる焦り。


「怪しい3人組発見!!!」男が大声で叫ぶ。


「逃げるぞ、リケイ!」


「わかってるよ!」


俺たちは暗闇の田園地帯にバイクをとばす。




10分ほどバイクを走らせて止まると、まだ追っ手は見えなかった。


「いやぁ、焦った。」

ソルがにこにこしながら言う。おそらく内心楽しんでいるのだろう。


「あんたがちゃんと人がいないの確認してから壁を抜けないからこうなるのよ、リケイ。」

耳元で上から目線の注意が注がれる。

それを言うなら、ソルだって同罪だ。というか…


「そもそも、お前が予定と違う時間に出ようって言ったから、いつもはいない警備員に遭遇したんだろ。」


「あんたの背中は無防備だ。余計なことは言わない方がいい。」


背中に人差し指を押し付けられる。銃をつきだしてハードボイルドに脅しているいるつもりなのだろう。もう何も言わない。


すると遠く彼方、ユニバーシティの方角から何かこちらに迫ってくる物体を確認。


「おっ、魔術警察じゃねぇか。高速移動の魔術相手じゃバイクでは逃げ切れねなぁ。これはヤバイなぁ~」


魔術警察とは警察の魔術師専門の部だ。運悪く、さっきの警備員はそこの一員だったらしい。加えてここは一面田畑。隠れる場所は…


「リケイ!あっちに光がある!家だわ。それに隣には倉みたいなのが!あそこに隠れましょ。」


町の方から来る光はどんどん近付いてる。迷ってる暇は無さそうだ。



扉から押し入り、3人で倉で息を潜める。倉の中は辺り一面何も見えない。


どこかに窓でもないかと探す。

下に転がっていた何かに滑り、こけそうになる。とっさにそこにあった何か柔らかいものを掴む。


ーーーなんだ…これ?


握ったり放したりしてみる。それはふるふる震えて、人肌ぐらいの温度で…


ーーーあっ。これやってしまったやつ…


「ちょっと…あんたどこ触ってんのよ!!」


手をすっと引く。冷や汗が流れ落ちてくる。

ヤバイ…これは蹴りがとんで…


「ぐはっ!」


俺ではない男の悲鳴が。


「フミカ!ちょっ!何!いたっ!」


「何が何だ!このセクハラ男!女教師だけじゃ飽きたらずあたしまで!この!この!…」


何か…悪いな。ソル。



ざっ!


倉の前に何者かの足音。この騒ぎ音を聞いて、感ずかれたか。剣をとる。同様に二人も臨戦体制になる。おそらく俺と違って魔術警察との戦いのためではないだろうが。


倉の入り口が開かれる。そこには一人の女性が立っていた。そして一言。


「家に入りなさい。」





カラン。

麦茶の中の氷がぶつかる。


ーーーこの人なんでかくまってくれたんだろう?


急に現れた家の主と思われるこの女性は俺たちを家に入れてくれ、さらにやって来た魔術警察にも知らないふりをしてくれた。

それだけでなく、布団を用意して寝かせてくれた。最初は断ろうとしたがその甘いこの家の香りのする布団の呼ぶ眠気に耐えられず、ぐっすりしてしまった。

そして、朝ご飯まで頂いている。


「あなたたち、名前は?」


突然話しかけられ、タマゴサンドが変なところに入る。


「僕はソル。こいつがリケイ、それにフミカ。3人で人々を助けるための秘密結社をやっています。お嬢さんの名前は?」


ソルは早くもこの女性をターゲットに決めたらしい。ソルがこう前にぐんぐん来るときはそういうときと決まっている。


確かに女性はスラッとしていてスタイルがよく、肌が雪のように白く、美しかった。


「私はリンリです。この辺りで農耕を営んでいます。後、私ももうすぐ40歳です。お嬢さんと呼ばれるのは気恥ずかしい。」


ソルが凍りつく。確かにこれは驚きだ。俺も20代前半だと思っていた。


「秘密結社ですか。面白いですね、貴方たちは。今日もお仕事で?」


「ええ、まあ…」


曖昧な返事をしてしまう。仕方がない。この優しい女性に犯罪者をかくまうという罪を犯させてしまうのが、非常に大きな罪悪感となっているのだから。


「で、どうして警察に追われていたのですか?」


見事にその話をふられる。


ーーー言っても良いものか…


ソルの方を見るとまだ固まっている。フミカはタマゴサンドを口いっぱいに含んだまま、頷いている。言っても良いということだろう。


「実は仕事でジュネープに行かなきゃいけなくて。俺は科学派出身なので違法な侵入をしているんです。それで追われてました。」


やはり警察に行けと言われるだろうか。


「へぇ。じゃあ、どんな仕事なのかしら?」


「「えっ」」

俺とフミカが同時に声を漏らす。


「どうかしたの?」

くすっ、と笑うリンリさん。その笑みはユリのように白く美しかった。


「いえ、何か言われるかなっと思ったので。」


「別にそれぐらい良いと思うわ。」


この人も一度何かの法を破っているのだろうか。そう思わずにはいられないほどの寛大さである。


「で、何の仕事で来たの?」


「すみません、それは言えないです。でも、俺たちデイリーブレイカーの理念を通すための戦いなんです。」


何故だろう、この人の前だと全てをさらけ出したくなる。何とか仕事の内容だけは抑える。彼女の寛大さゆえなのか、それとも彼女には見透かされている気がするのか。


「理念って何?」


「自由を守ること。すべての人が日常を越えていけるようになることです。」


「……ふふっ」


じっくりと噛み締めた上で微笑するリンリさん。


「おかしいですか?」


「いえ、素敵だと思うわ。私も誰もが自由に選択の権利を持つ世界になると良いと思ってる。この手でそれを成し遂げようとしたことはないけど。」


まじまじと目を見られて目をそらしてしまう。


「貴方たちをかくまったのもね、何だか非日常の香りがしたからなの。私の勘は当たるのよ。」


「はぁ…」

本当によくわからない人だ。しかし、1つわかるのは彼女も何らかの理想と闘ってきた人なんだろうということ。その上で俺たちに何か期待してくれている。


「ねえ、貴方はどうしてこの国には自由がない、しいては魔術派と科学派の対立があると思う?」


その問いかけは少し意外なものに感じた。年ごろ自由の為に活動してきたが、そういえば、そんなことは考えたことがなかったから。


「お互いの派閥がそれぞれ自分たちの方が優れていると思っているから、ではないんですか?」

フミカが代わって答えてくれる。


しかし、リンリさんは静かに首を横に振った。

「普通はそう思うでしょう?私も初めはそう思っていた。この対立はお互いの概念を排他しようとする抗争なのだと。

けれどもおかしいじゃない。科学派の人だって魔術、魔法は使うし、魔術派の人だって科学というシステムを学ぶことによって、魔術を高めようとしている。そうやって、相互作用でこの国が発展してきたことにきっと誰もが気が付いているはずなの。」


それは最もだった。実際科学派の人間も多くが魔術を使うし、フミカも学校で科学を習うと言っていた。そう、少なくとも義務教育の範囲内では科学派、魔術派の学校で教わることに大差はない。

しかし、俺の行っていた学校にもフミカの行っていた学校にも、相手派閥を嫌おうとする風潮は確かに見られた。


「じゃあ、何故こんな対立が続いてるんですか?」


「人々が自分を正当化するためよ。」


身近な友人に呆れるような、似つかわしくない吐き捨てるような口ぶりだった。

そして、ぽかんとする俺たちの為に続けた。


「8年前に内戦があったでしょう。貴方たちは覚えてないでしょうけど、あの後、二つの理由から両派閥の対立ムードはしぼんでいた。

一つは勿論戦いの反省から。もう一つは、戦火で街も畑も枯れたから。誰もが自分の生活で手一杯だった。後者を解決するのは簡単ではなかった。壊れた体系はすぐには元に戻せないもの。この困窮を乗り越えることなしに、この国の再生はなかった。

けれども、その為に当時の議会は最悪の決断を下した……」


「最悪の……決断…」


「ええ、彼らは両派閥の対立を煽ったの。魔術派、科学派を激しく敵対させることで人々に国の回復への具体的な目標と彼らの正当性を与えたのよ。

人々は公からの免罪符をありがたがった。

道に今にも死にそうな人がいたって助ける必要はない。だって、あいつは自分と違い科学派だから……

自分は今何もすることができないけど、目の前にいる人は自分を助けなければいけないはずだ。だって、同じ魔術派だから……

こんな個人の身勝手が許される。そんな利己的な目的のためこの国は歪められたの。そして、最終的に議会はユニバースの壁を建設して、対立を無理やりに抑え込もうとさえしたの。」


それはある意味で皮肉だと思った。

みな、戦後自らも苦しい中、正しい人でありたいと願った。そうであるがゆえに、対立を受け入れた。この考えを持ち出した議会のことを考えると悪寒が走った。如何にすれば大衆が動くか、完璧に理解していたに違いない。それが今も手の届かないところで蠢いているというのが耐え難かった。

きっとそんな世界に自由など無いだろうから。


「その対立の煽動にはやはりサイエンスやソサエティも関わっていたんですか?」


「いえ、逆よ。サイエンスやソサエティは対立が過激にならないようにするために統率をとる組織として作られた。暴力による解決にならないよう代表者を作り出したのがこの二つね。

どう、この話。貴方たちの参考になるかと思ったのだけれど。」


少し険しい面持ちになっていたリンリさんの顔が優しい淑女に戻る。

確かに考え深い話だった。俺たちは今ユニバーシティの派閥分離を止めようとしているが、この国にある問題はもっと根深そうだ。


「ありがとうございます。参考になりました。あ、もう一つ良いですか?」


なにかしら、と微笑まれる。


「帝国議会はまだこの対立が続けばいいと思っているのでしょうか?」


リンリさんは少し悩んだような素振りを見せてから

「……そんなこと、帝国議会議員でもない私がわかるわけないでしょう?」

とくすりと笑った。


「あ、は、そうですよね。あまりにも詳しいからつい……」


「ふふっ、それならヒストに聞く方がいいわ。どうせ、今から会いに行くんだから。」

彼女は何気なくおかしくなったように言ったが……


「俺、ヒストに会いに行くって言いましたっけ?」


ヒストとは魔術派ソサエティのリーダーで、ケミが怪我を負わせて来いと指定した人物である。その人物の名を口にしただろうか。


「--------あら、言ってなかったかしら?」


なんだかすっと寒気がした気がした。初めて向き合う女性に違和感を感じ、背筋が伸びる。

その緊張をかき消すかのよう、くしゅんとフミカが咳をした。


「冷えますか?確かに昨日の夜は冷え込みましたし、毛布でも出しましょう。」


「いえ、お気になさら…………くしゅん。」

意図的ではなさそうだが、まあ少し和みの一呼吸が入った。変な詮索をする気も霧散する。

 

毛布を持ってきてフミカに手渡すとリンリさんはまた座って向き直った。


「フミカさん、でしたか?貴女はどうして秘密結社を?」


急に話の矛先が自分のところに来て驚くフミカ。3枚目のタマゴサンドを飲み込んで答える。


「私は幼馴染みとしてリケイの理想に付き合ってるだけですよ。」と冗談混じりに言うフミカ。


しかし、そのフミカとは逆にリンリさんの顔は少し険しくなる。


「もう一度聴いて良いかしら?どうしてその理想に付き合うの?」


「だから、リケイに付き合って…」


リンリさんはとても厳しい表情になってしまう。今の質問に何の意図があるのか。


リンリさんは一瞬言うかどうか迷ったような表情をしてから言った。


「もし、貴方たちが自由の為に議会と戦っていくなら、貴方たちは自分の理想にぶつかる、これは私の勘だけど、予言しておくわ。それでも立ち上がれるなら、貴方たちは世界を動かせるかもしれない。」


その大きすぎる話の中にあるやけに現実味をおびた忠告に俺たちはただ黙っていた。


「さあ、しばらくしたら、出発しなさい。ここからジュネープのナオキ城までは長い一本道。健闘を祈るわ。

あ、あと、ちゃんとそこの凍りついた少年も連れていってね。」


そういって微笑むリンリさんに深く礼を言い俺たちはソルを引きずってその温かみのあった家を後にした。



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