第五話 魔力 『消失』
久々の投稿、更新が遅れてしまい申し訳ございません!
第五話、どうぞお楽しみください!
武の魔力、『大地の壁』が崩れると同時に、穂村、綾香、杏、桃花、風魔が教師にとびかかる。
魔力を発動していたため、武は少し遅れて飛び出す。
この六人の内、吹雪を使う相手に相性がいいのは穂村と杏。だが、先手を取られているため魔力属性では有利でも形勢は不利。
更に、教師自身吹雪で自分の身を覆ってるため、まともに当てられるかは別の問題である。
「ああは言ったんだが……やっぱり難しいな……」
「風魔君の風で何とかならないの⁉」
「もともと『吹雪』ってのは氷と風の複合型みたいなものなんだ。人間が再現するとね。相手の風力が強ければ、逆にこちらが倍のダメージを受けてしまう……」
あちこちにある、壁になりそうな物を使いながら会話する風魔達。その様子を、斗真は少し安全なところで見守っていた。
「やっぱり……難しいかな……」
『終わりの世界』を使うしかないのか……?
実際、『終わりの世界』を起動させた方が勝つためには早い。だが、この方法では教師だけではなく風魔達まで巻き込んでしまう。
身体能力も下げるが、実践慣れしていて、魔力以外の実技も持つ相手には意味がない。
だからこそ、皆には頑張ってほしい。斗真はそう思っていた。
その思いが届いたのか、風魔達の雰囲気が変わる。
「……難しいと言ったが、やらなくてはな。黒崎君に宣言したし」
「そうね……。約束したもんね……」
「だけどどうするんだ。相手は自身の魔力で覆われている」
「魔力を使うにも、正確に当てられない……。はっきり言って、勝ち目がほとんどないんじゃ……」
「その事なんだけどね。発想を変えようと思うんだ。正確にが無理なら、そうでなくていい」
「え? どういう事?」
「まぁ、今は見ていて。土間君、砂は出せる?」
「出せるが……。まさかお前……」
風魔の意図に気付いたのか、土間が納得した表情になる。そして、二人してにやけだす。
まだわからない女性陣は軽く引いていた。
「……あ、君たちにも役割はあるからね?」
「え⁉」
「あいつら、どこへ消えたんだ……?」
歩きながら、教師が斗真達を探す。先程から姿が見えない、もとい気配が感じられない。
確かにこの空間にいるはずなのに。
「終了の合図は……なってないな。ではなぜいない? まぁ、いないなら無駄な魔力を使う必要も……」
「今です!」
教師を囲むように現れる穂村達。だが、教師はそれを読んでいたのか瞬時に自身の魔力を発動。
吹雪を発生させ、近寄らせなくする。
「油断したと思ったのか? 気配を消せる魔力がある事くらい把握していると、何故考えなかった?」
「くっ……。これでもダメなの……?」
「分かったら諦めなさ……」
「……と本気で思ってると思った?」
「なんだと?」
別の方向から、風魔と武が飛び出す。その場所は吹雪の威力が他のところよりかは弱く、穂村達を巻き込まない場所。
「行くぞ、土間君! 大嵐!」
「任せろ、土砂! そしてこれが……」
「複合魔術『砂嵐』だ!」
二人の複合魔術により、吹雪が緩和され少しずつ視界が晴れていく。
複合魔術の発動は二種類ある。一つは、教師のように一人で発動する。
もう一つは、複数の人間が集まって発動するという方法。発動のしやすさは、一人の方が断然早い。
だが、魔術の威力は複数人で発動した方が高いのである。
「いくら先生の魔力といえど、二人相手には負けるはずだ!」
「こんなもの……! 私が本気を出せば……!」
「無駄だ。貴方は私たちの本当の狙いを分かってない」
「なに……⁉」
「これでいいかな⁉ 斗真君!」
「ああ……十分だ!」
二人の複合魔術により、緩和された吹雪。それは、教師の姿を晒している事を意味していた。
もちろん斗真はみんながつくりだすた作り出した隙を逃さなかった。
「行くぞ……『消失』!」
斗真の手が黒く輝いた瞬間、吹雪が止んだ。正確に言うならば、吹雪が一斉に消えた。
「ど、どうなってるんだ⁉ 魔力が……使えない!」
「今の内だ、館石さん、日室さん!」
「は、はい! 『獄炎』!」
「こっちも! 『獄炎』!」
二人の放った炎により、教師は退路を断たれる。また、魔力が使えないのは教師一人。いくら体術などが優れていても、魔力を持つ人間を複数人相手にするのは厳しい。
「……私の負けの様だな。素直に認めよう」
こうして、斗真達の合同訓練は終わった。
「お疲れ様! 皆のおかげで勝てたよ、私達!」
訓練が終わり、休憩所で疲れを癒す七人。季節は春なのだが、吹雪の中訓練していたため暖房の近くに座っている。
「それにしても黒崎君。『消失』とは一体どういう魔力なんだ?」
「文字通り相手に存在する何かを消す魔力です。例えば今回の魔力とか」
「消したら戻んないの?」
「いえ。『返還』というのがあるので戻ります。先程も先生に返してきました」
「へぇ~……。じゃあ、相手の姿を見るっていうのは……」
「はい。発動条件になります。直接見ないと起動できないのがこの魔力の弱点です」
六人は何となく理解した。正直、斗真……彼の使う魔力には謎が多く興味をそそられる。
だからこその部活なのだが。
「チームワークもよかったし、今後も頑張って行こー!」
「……見つけました。例の魔力を持つ少年を」
「そうか……。報告ご苦労様。下がっていいよ」
「かしこまりました」
「また会えるなんて嬉しいよ。『偶然の産物』の少年君……」
訓練を勝利で収めた斗真達!だが、その裏では何かが動いていた……
次回、第六話!(早めに更新します)