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嘆きの聖女  作者: どんC
1/2

嘆きの聖女 前編

 

 何故?何故?何故?


 私は、大地に倒れ伏し血を流してるの?

 血にまみれた剣を持ち私を見詰める男と女。

 私の婚約者と腹違いの妹。


「な……何故?」


 私は、婚約者に手を伸ばす。

 婚約者は、私の手首をつかむとズルズルと崖まで引きずって行った。

 異母妹は、楽しそうに嗤う。

「あんたが死ねばあたいが聖女になれる」

 と楽しそうに嗤う。

 婚約者は背中を切られて動けない、私を崖から投げ捨てた。

 涙と血が空に舞う。


 ザブン‼


 沈んでいく……沈んでいく……冷たい海の中に……

 ああ…貴方にとって私は、幼馴染でも友人でも婚約者でもなかったのね。

 私の思いは、貴方に届かない。

 貴方にとって私は、塵なのね。

 苦しい。苦しい。悲しい。寒い。

 誰か……誰か……助けて‼

 ごぼごぼと泡が、水面に向かい……

 やがて闇が、訪れた。

 17歳で……私は、妹と婚約者に殺された。



 俺の名前は、ヨキ。羊飼いをしている。

 今年17歳になった。羊達は、うまそうに草を食っている。

 牧羊犬のセイは、楽しそうにはぐれ羊を追っている。

 どれ俺も昼休みにするかな。

 袋から昼飯を出す。

 母ちゃんが、用意してくれた。

 チーズと固いパンとヤギの乳だ。

 ふと山道を見る。 

 男がこちらに向かって歩いてくる。

 知らない奴だ。

 一人か?ん?

 金髪碧眼ハンサムだ。

 俺よりハンサムは、みんな死ね‼

 とアホな事言ってる場合じゃ~ね‼

 そいつ立派な鎧着けてる。

 血塗れだ。しかも剣まで持っている。

 おおっと‼

 剣まで血塗れだ~‼

 ひいいいぃぃ~‼ 

 俺は逃げた。

 だが男の剣は、俺を貫き。

 

 俺は、思い出した。

 俺は……私は……また婚約者に殺されるの……?


 俺の名前は、ルイ。

 漁師だ。

 そろそろ幼馴染みのミルと所帯を持とうかと考えている。

 あいつは、俺より2歳年上だからな~

 さっさっと結婚してやらねば。

 

「売れ残りとお母さんに言われた」


 とむくれていたからな~ハハハ……

 浜で網を広げ繕ってると。

 一人の男が、こっちに歩いて来る。

 金髪碧眼ハンサムだ。

 ミルの好きそうな顔だな~

 俺は、地味な茶髪茶目だ。

 ハンサムは、死ね‼

 あれ?

 この男血塗れだ。


「あんた‼ 怪我をしているのか‼」


 慌てて俺は、立ち上がり男に手を伸ばした。


 ドスッ‼


 男の剣が、俺の体に突き刺さる。

 俺は……俺は……私は……また婚約者に殺されるの……?


 俺の名前は、リオ。

 商人の息子だ。

 オヤジに言われて荷馬車に馬を繋いでいる。

 荷物も積込まなくちゃならない。

 早くしないとデートに遅れる。

 全くオヤジの奴いくらお得意様の注文が、入ったからって急に言うな!!

 ナナの奴ちゃんと待ってるかな?

 前は怒って帰ったからな~


 男が、ゆらりと現れた。


 え?

 待ってくれ!!

 いきなり現れたよな!!

 幽霊!!

 いやいやいやいや!!

 昼間だぜ!!

 しかも血塗れだ!!


「ひいいいぃぃ~‼」


 俺は、逃げた。

 男は無表情で追って来る。

  

 「あがあぁぁぁ」

 

 男の剣が、俺を貫き。

 血が辺りを染める。

 俺は……俺は……俺は……私は……また婚約者に殺されたの?


 俺の名は、エド。

 辺境の村長の息子だ。

 畑の収穫に忙しい。

 村長の息子でも三男だから自分の畑がない。

 森を開拓しないといけないんだ。

 世知辛い。

 トントンと腰を叩く。

 急がないと辺りは、ずいぶん暗くなってきた。

 この辺りは、暗くなると狼が出る。

 そろそろ引き上げたほうが良いだろう。

 背負い籠に今日の収穫した野菜を放り込むと鍬を手に持った。

 薪を拾いながら帰る。


 黄昏の中男がこちらに歩いて来る。

 金の髪が風に揺れる。

 誰だ?

 よそ者か?

 野菜泥棒か?

 男が立派な剣を抜く!!


 ガッキンンン!!


 俺は鍬を構えた!!

 だが男は鍬ごと俺を切り捨てた。


「があぁ……はあぁ…」


 俺は、山道に倒れた。

 俺は……俺は……俺は……俺は……私は……

 また婚約者に殺されるのね。



 俺の名前はケン。

 小さな都市の門番だ。


「ケン晩飯どうする?いつもの店でいいか?」


 門番仲間のタオが、声をかけてくる。

 俺は鎧と槍を倉庫に仕舞うと


「先に行っててくれ。俺は隊長に報告して来る」


「早く来いよ。いつもの飯注文しとく」


「ああ頼む」


 俺は、隊長のいる部屋に向かった。

 兵隊宿舎は、この時間帯ひっそりしている。

 カッーンカッーンとブーツが、嫌に耳に響く。

 闇の中からぬっと男が、出てきた。

 血塗れの男が、シャラリと剣を抜く。


「ひぃやっ!!」


 とっさのことに変な声が出た。

 俺は短刀で男の剣を受け止める。


「誰か!! 侵入者だ‼ 誰か!! 来てくれ!!」


「どうした!!」


「何事だ‼」


「侵入者?」


 騒ぎを聞きつけてドタドタこっちに来る、足音が聞こえた。

 男は引かず見事な剣裁きで短剣ごと俺を切り捨てた。

 駆け付けた仲間の前で、男は煙の様に消える。

 皆が、何か叫んでいる。

 意識が、遠のいていく中で俺は、思い出す。

 俺は……俺は……俺は……俺は……俺は……私は……

 また婚約者に殺されるのね。



「ああああ!!」


 私は、ベットから飛び降りた。

 またあの夢を見た。金髪碧眼の美しい男に殺される夢だ。

 私は今日17歳になる。

 夢中の私達は、みんな17歳で殺されていた。


 ゾクリと震える。

 夢と言うには、余りにも生々しくって。

 ノロノロと制服に着替える。

 今日は文化祭準備で学校に行かなくっちゃならない。

 文化祭の門を作るのだ。

 それから文化祭の看板もある。

 ぼ~としている暇はない。

 私は急いでパンをかじりながら学校に向かった。


 まだ学校は人が多くない。

 寒村としている。

 私は二階の物置部屋に行き。

 色のついた薄い紙で作った、花の入った段ボールの箱を二階の教室に運ぶ。


「早紀おはよう。早いね」


「モモッチも早いね~」


「あ…いけない。ボンドを忘れた」


「悪い早紀ボンド美術室だ。取ってきて」


「オッケー」


 私は旧館の美術室に向かう。

 来年には取り壊され旧館は割と好きだ。


 キインンン!!

 

 耳鳴りと共に空間が変わる。

 そしあの男が、立っていた。

 夢の中で見たまんま血塗れでそこにいた。


「ひいいいぃぃ~‼」


 私は、後ずさった。

 

 パアアァァァ

  

 と床が光り魔方陣が、現れた。

 私はそのまま光に飲まれた。



 気が付くと見慣れた天井があった。

 そう見慣れた天井だ。

 天井には女神様の絵が描かれている。

 前世聖女だった時この神殿で修行したのだ。


「お目覚めですか?」


 そこに一人の老婆がいた。

 神官長の服を纏っている。

 よく見ると彼女の後ろに若い巫女達が5・6人いる。


「ここは、プライブの神殿?」


「記憶が、ございますか?聖女様」


「私は……殺されて……あれから何年たったの?」


「300年でございます。」


「300年…も…」


 沈黙の後私は、ようやく口を開いた。


「私…が、殺された後どうなったの?妹は?婚約者のマリウス様は?」


「咎人ならそこにおります」


「えっ?」


 私は指示された方を見て悲鳴を飲み込む。

 男が部屋の隅でひっそりと佇んでいる。

 相変わらず血塗れだ。なんか蠟人形のようだ。

 不気味だな。

 魔方陣の中に入っている。

 しかも鎖に繋がれている。

 良く見ると目は虚ろだ。


「あの身の程知らずの女は、罪を贖う為に神殿のダンジョンにおります。清掃をしております。」


「私を殺した割に軽い罰ね」


 私は、笑った。

 父も義理の母も妹には甘かった。

 処罰も甘いものになったのだろう。

 妹は聖女になりたがっていた。

 何でもかんでも私の物を欲しがった。

 婚約者のマリウス様も欲しがった。

 8歳で聖女の修行で神殿に入った時も羨んでいた。

 それが……どれだけ大変で厳しいものなのか考えもせず。

 私の言葉を聞いて神官長は笑った。


「そうでしょうか?死の方が、慈悲の場合もありますよ。論より証拠。まずはご覧いただいた方が、分かり易いでしょう。」


 神官長に案内されるまま私は、神殿の地下にあるダンジョンに降りた。


 妹はダンジョン三階にいた。


「な…なに!! これは何なの‼」


 化け物がいた。

 五メートルはあるだろう、芋虫の頭に妹の顔が張り付いていた。


「女神様の怒りに触れたのです。聖女様を殺した報いは、その醜い姿となりダンジョンの塵あさりをする事です。」


 神官長は、ポツリと言葉を溢した。

 聖女の指名は、女神サンザリア様がなされる。

 指名された聖女は、この神殿で修行を積み。

 各国に浄化の旅に出るのだ。

 浄化の旅は熾烈を極め。

 中には志し中場で倒れる聖女も居たと聞く。

 そんな旅を終え王に報告に行く途中の凶行であった。


「人間としての意識や記憶はあるの?」


「御座います。無ければ罰になりませんから。」


「ヒィイイあぁぁぁぎいいぃぃ~!!」


 芋虫は、意味不明の言葉を吐き捨てた。

 でもその目は、怨みで濁り赤く充血していた。

 私が誰なのか分かったみたいだ。

 思わず私は飛びのいた。


「大丈夫です。危害を加える事は、出来ません」


 聖女の時は、ライトブラウンと緑の瞳だったが、今は、黒髪にダークブラウンの瞳だ。顔だって似ていない。それでも私だと分かったのだろうか?


「気味が悪い。早くここから出たい」


「左様ですね。今日は、お食事を済ませ。身を清められては、いかがですか?」


「そうね。呼ばれた訳も知りたいし…」


 どうせ録でも無い事でしょうと言う言葉を飲み込んだ。

 気味が悪いと言ったのは、何も芋虫妹の事ばかりでは無い。

 私達の後をあの男が、ついてきているからだ。


「あれは、いつまでついてくるの?」


 私は、眉をしかめる。

 血塗れの男が、後ろに居るのは落ち着かない。

 まして私は、彼に六回も殺されたのだ。


「仕方が、無いのです。後程ご説明致します」


 神官長が頭を下げる。

 食事をして湯あみも終わると、私はベッドに腰掛けた。


「で…いつ話してくれるのかしら?」


 神官長は、ポツリポツリと話し始めた。

 300年前各国の浄化を終えた、私が強盗に会い殺されたと。

 私の婚約者が神殿に妹と知らせに来た。

 しかし神官達は、直ぐに嘘に気が付いた。

 何故なら聖女を守るために女神様から与えられた神剣が、どす黒い障気を纏い始めたからだ。

 神官達は直ぐに二人を拘束して女神様に御伺いをたてた。

 女神様は聖女を守るべき聖騎士がこともあろうか、聖女殺害と言う大罪を犯した事を告げた。

 神官達は驚愕し怒りに震えた。

 二人は女神様に罰を与えられた。

 異母妹は、芋虫となりダンジョンで塵あさりを聖騎士は、魔方陣の中に閉じ込められ鎖で繋がれ身体中を切り刻まれ苦しみ続ける罰を受けた。


 しかし問題が、起きた。

 穢れを受けた聖剣が、元に戻らないのだ。

 しかも穢れを受けた聖剣を浄化しようにも、聖女が現れない。

 神官達は何処かに生まれ変わった、聖女を連れて来るようにマリウスに命じた。

 マリウスは聖剣の導くままに私の所に転移した。

 しかし私は男に生まれ変わっていた。

 聖女の力は女でないと覚醒しないのだ。

 かくして私は、五回も殺されるはめになった。


「誠に非道なおこないです。お怒りは私めが受けます。どうか‼ どうか‼ この世界をお救いください‼」


「またスタンピードが、はじまったのね」


 私は、ため息をついた。

 聖女の役目は穢れた土地を浄化する、とともに魔物退治も含まれる。 

 ぶっちゃけ聖騎士は聖女のサポート役でしかない。


「誠に申し訳ございません。私どもでは、力及ばず聖女様にお越し頂きました」


「私。元の世界に帰れるの?」


「はい。浄化の旅が、終われば同じ時間と場所にお帰りできます」


「じゃ引き受けるわ」


 私は、次の日から聖女の修行を始めた。

 前の修行も思い出しながらなので半年ですんだ。


 世界各国にある神殿78ヶ所を魔物を退治しながら浄化しなければならない。

 私達は、半年後浄化の旅に出た。

 旅のメンバーは、聖女である私と世話係の聖女見習い3人と騎士団30人。

 前回もそうだったが、今回も苦しい旅になった。

 各国の騎士団も神殿まで護衛してくれるが、基本34人で行動する。

 これが多いのか少ないのか悩む所だ。

 何やかんやでやっとこさ、浄化をすます事が出来た。

 私の元婚約者は、どうしたかって勿論憑いてきましたよ。

 ゾンビの様にマジ勘弁して~‼

 汚染されていても聖剣は、聖剣!! 立派に役に立ちました。

 心成しか少し浄化したような気がする。


「えっ?帰れない?何故?騙したの!!」


「いいえ!! いいえ!! 決して騙すつもりは、ございません!!」


 何と!! 

 私の帰還には聖剣にため込んだエネルギーを使うのだが、思ったよりも聖剣の浄化が進まず。

 このままでは、使い物にならないそうだ。

 聖剣の汚染が酷いのは、生まれ変わった私を5人も殺したせいらしい。


「許しが、必要なのです」


「6回も私殺されているのよ!!」


 ふざけるな!


 と言いたい。

 聖女の力を持っていても私は、普通の人間だ。

 裏切られ殺されたのだ!! 怨むし怒る。

 聖人君主じゃねえ!!

 ま~殺されたシアは、いい子だったな~

 幼い頃から聖女の修行に打ち込み真面目に浄化の旅をして……

 なんで元婚約者は、シアを殺したんだ?

 あれかいつも忙しくて碌に会えなかったせいか?

 それで身近な異母妹に惹かれたのか?

 でも浄化の旅で長くいっしよにいたぞ。

 嫌ってる素振りは、無かった。

 シアが鈍くて気が付かなかったのか?


 私は一か月悩み元婚約者と会話する事にした。






※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

  2018/2/23 『小説家になろう』 どんC

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駄作を最後までお読み頂きまてありがとうございました。

短編のはずが、長くなってしまったので前編と後編に分けました。

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