第1章 冒拳の始まり 目がさめると、、
目が醒める。
一瞬森かとも思ったが、天井がある。どうやらベットで寝かされているようだ。
だが、何故、、、俺はあの後気を失ったはずだ。
周りを見渡すと、扉があることに気付く。誰かの家だろうか、簡素なベットと、木造りの家
そして鼻に付く草の匂い。
「すっぱくせぇー、、それでここどこだよ、、」
思わずそんな呟きが漏れ出るほど、すっぱ臭い匂いが漂う部屋で、山田は頭を回転させる。
と言っても何か答えが出る訳では無いが。
そんなとき木の板の軋む音が聞こえてくる。
一瞬で身構える。いつでも命の取り合いができる状況を作る山田
そして扉を開けて入ってきたのは、外人プロレスラー並みの筋骨に覆われた、がたいを誇る壮年の男、その手には小さな器がもたれている。
一瞬で思考をめぐる勝算、、、そんな山田の思考をよそに
「おう、おう、目が覚めたか、、ま、これでも食えや、、、毒なんざ入ってねぇーぞ、、それに味には自信がある。」
そうして差し出されたシチューのようなものからは、食欲をそそる匂いがする。
飲まず食わずで、二度の死闘を経て、山田の体は渇ききっていた。 普通なら警戒すべきだが、そんなことも忘れ、渡された器に入ったシチューを喉にかきこむ。
「ガッハッハッハッハ、よほど腹が減っていたようだなぁ、、まぁまだあるからゆっくり食えや、」
そうしてガトスは小さな椅子を取り出し、山田の前に腰掛ける。
危ない奴なら其れ相応の対処をするつもりであったが、まだ若く、夢中で飯にがっつく姿からまだ少年の面影が残っていると感じる。
「どうだ、うめぇだろ、、、一息ついたらオメェさんの話でも聞かせてくれや、、よくもまぁ黒樹の森に一人でいたもんだ、それにあそこは黒狼どもの縄張りの中、武器も持たずに生き残れたのは奇跡ってやつさ、この俺が偶々奥まで薬草を取りに行かなければ、オメェさん死んでたぜ、本当にツイテらぁ、ちなみに俺は、薬師のガトスてもんだ、気軽にガトスとでも読んでくれやぁ。」
そんなデケェオッさんのいやガトスの話を聞き、すこし気が緩む山田、それにあの森からここまで運んでくれたのだろう、まずは礼を言わなければならない。
「 俺は山田 拳太郎と言います。わざわざ助けていただきありがとうございます。それにご飯まで、」
「ガッハハッハッハ、なんだ、その気持ちの悪い喋り方は!どこぞのボンボンかオメェは!もっと気軽でいい!それよりも、ケンタローといったか変わった名前だが、ここら辺の国のもんじゃねぇーな、見かけない容姿だ。ま、そんなことはぁどうでもいいんだがよ、俺はヤマダよオメェ、どうやって倒したんだあの犬っころどもを!素手でやっちまったのか!?」
えらくずかずかと聞いてくるおっさんである。それになぞに目が輝いている。すこし気持ち悪さを感じながら
「ああ、俺が素手でやったんだ、格闘技をやってたから、自分でも、勝てるかどうかわからなかったが、運がよかった、、」
「かぁーー格闘技ってぇーのが何の流派だか知らねーがオメェさん闘僧見習いかなんかか、、黒狼を倒したとなると、なかなかやるじゃねぇか」
よく分からないが、一人で盛り上がるガトスのオッさんをよそに山田は出された飯を完食する。
「その、ガトスのおっさん、闘僧ってのはなんなんだ。」
「んぁ? ケンタローオメェ闘僧を知らねえのか?
闘僧つーのはな、武器を持たねぇーで、徒手格闘を極めた奴らのことさ、ダルク寺院っつー寺院のでの奴らでなぁー名前に僧なんてついてるが、ただの武闘派集団さ、ガッハハッハッハ、何って立って教義が、己を最大の武器と化す、なんて事を謳ってる奴らだからなぁ、、」
危ない集団なのは理解した山田、
「いや、俺はそれとは関係ないな、もっと遠くの方から来たんだ、」
「ま、色々あるもんさ、なぁー すこしの間ここで休んで行けや、色々教えてやる。俺も暇なもんでなぁ、何たって、今季の収入源は全部お前の傷に使っちまった、ガッハハッハッハ、大した量じゃねぇんだけどなぁ、ガッハハッハッハ」
見かけによらずすごく親切である事を感じ、山田は出会いというものに感謝する。それに、こちらの言えない事情を察してくれる。
笑い方に癖があるが、良い人に出会った。
(°_°)