第1章 冒拳の始まり 第5話 デカイおっさんにおぶられて
文章書くの難しいです
はぁ、、
『 黒樹の森』 見上げるほどの巨大な黒い大木、そしてもう一つこの森で独自の生態系を築いている黒獣たちの存在から、その名で呼ばれるようになった。
この森は広大に広がる黒樹、そして黒の名を冠する通常より凶暴で獰猛な魔獣たちが跋扈する場所だ。
何故この森が黒くまたそこに生息している魔獣たちも一様に黒く凶暴になるのかそれは未だ解明されていない。一説によると森のさらに奥深く誰も踏み入れたことのない場所そこに邪神が眠っておりそこから瘴気、悪い気が流れ出てこの森に影響を及ぼしているのだという。
そんな危険な森ではあるが一定の需要がある、それがこの森でしか手に入らない薬草、加工すれば強力なポーションの材料になると言われている 『黒青花』 と呼ばれる薬草だ。この薬草は一年に一回春の初めにほんの一週間ほどだけ花を咲かすひざしたまでの小さな青い花だ。
この薬草の価値は高く、危険を犯してまで採りにくる薬師や、冒険者が後を絶たない。
この黒樹の森で年に一回しか採れない薬草をとりにきたベテラン薬師のガトスもそんな1人である。歩いて2時間ほどだろうかいつもなら腰の袋いっぱいは採れるのだが、今回はあまり良くないためか、中身の詰まっていない採取袋を腰に、ガトスはいつものルートを越えて黒狼の縄張り付近にまで来ていた。
この森に生息する黒狼、その他の魔獣たち、特に黒狼にさえ注意していればベテランのガトスであれば縄張りさえ踏み込まなければ、絶対ではないものの比較的安全に歩くことができる。それに腕にある程度覚えもある。袋とは反対の腰に下げた長剣に心強さを感じながらガトスはさらに1時間ほど深く潜った。
だがそれにしても今季は不作である。ガトスもここの薬草がなかなかの収入源になっているためか、重い溜息を吐く。
そんなときちょうど黒狼たちの縄張りの証であろう、爪痕のついた木を目にしたとき、引き返そうとしたガトスの脚を止める光景がその先に広がっていた。
「 なんじゃぁ、こりゃ黒狼共の死体か。それも二匹……誰がこんな………」
そんな時、黒狼の近くに横たわる青年と呼べるほどの若さの黒髪の男を見つけた。服は血塗れで着ているのか着ていないのか曖昧なほど服が破けている。おそらくこの二体と争い力尽きたのだろう、この森で黒狼相手によく頑張ったものである。
この森では死体は全て土に帰るか森の栄養源になるかしかない。
だが見知らぬふりをして帰るのも忍びない。祈る神などいないがせめてまだ若いであろう力尽きた青年を讃えようと、ガトスは青年に近づき、両手を合わせ祈ろうとした、、その時
「…うぅ……」
消え入りそうな呻き声を聞きその青年がまだ生きていることを知る。まさかこの傷で生きていようとは、恐らく腹の傷は内臓にまで達しているだろう、これでもガトスは薬師である。
生きている人をわざわざ見捨てるような人でなしではない、それにちょうどここには薬草がある。加工せずとも強力な血止の効果があるのは確かだ。今季は不作だった、それにこの量ではどちらにしろ端た金だろう。
これも何かの縁だ。ガトスは急いで青年の致命傷であろう腹に薬草をすり潰し処置をし背におぶり森の外に止めている馬車まで向かう。
ガトスの体格はおよそ青年のふた周りはデカイ図体をしている、人1人を運びながら四、五時間ほどなら歩ける、それに青年は思ったより軽い。これなら造作もないだろう。まずは安全に仕事場である森のはずれの小屋まで帰ることだ。
それからこの青年に色々と聞こう。武器も持たずどうやって勝ったのか、恐らく素手だろう。
この見た目の通り昔はガトスも、冒険者をしてそこそこ良いところまではいった経験がある。
訳あって今は薬師の真似事などをしているが、この青年の闘いに興味がある。そう少しの期待に胸を躍らせながら、ガトスは青年をおぶりきた道を戻るのだった。