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夜
1話1話は短めに作っていきたいと思います。
蝋燭がぽうっと燃えている。
明かりはテーブルに差し、ほのかな熱を伝えてくる。
照らされた丸型の小さなテーブルはテラテラと光沢を放ち、虚弱な三本足で立つ。
それだけが労働以外でみれる私の風景だ。
十年前に戦争が終わってから敗戦国の領土内に住む者達は例外無く捕えられこのような集合労働塔に入り、労働を強いられている。
九つの時から外を見ていない。
香ってくる潮の香りは海のものというが、私は海を見たことが無い。
塩辛い水が遠い彼方へと広がっているのに手前には砂が広がるという。
世界の常識を私はまだ微塵にも知らない。
知りたいと思っても知れない。
そんなこと十年の間何回も思ってきた。
無駄とわかっても、無理とわかっても、それでもなお小さな弱い私は希望を願ってしまう。
今日もその希望を胸に秘めながら眠りにつく。
短い夢の世界へと逃げていく.....。
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