表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

†友か奴隷か†Ⅱ

ベルクさんはs属性らしいです

正午、軽めの昼飯を食べて、俺達は宿を出た。

「……そろそろ行こうか……」

ベルクが、空を見上げて、一言呟いた。

……俺に言ったのか? 独り言か?

空は見渡す限り雲が広がっている。予報では、雨が降るらしい。

「…………了解」

そんな日に限り、なぜ出発するのかって?

『いや、ホント悪かった』

「……」

『……お前、エルの子なら、カネ…だっけ? それ、大量に持ってるんだろ?』

「……」

『……弁償くらい大したことないだろ?』

サラマンダー(こいつ)のせいで、宿を追い出されたからだ。

黒い雲が徐々に近づいてくる。きっと、雨が降るのは、遠くないだろうな。

豪雨かも知れないなんていう噂も流れていて、外に出ているような物好きは俺たちしかいない。

サラマンダーが姿を隠しているのは、雨が降ることも踏まえてなのだろう。

お前なんか濡れちまえよ。

『なぁ、おい、聞いてるのかよ?』

「「……黙ってろ」」

「……わかったよ……」

珍しくベルクと息があった。……え?

足が自然に止まり、立ち止まる。ベルクのほうを見ると、どうかした? と、首を傾げた。

「スロース……お前、サラマンダーの声、聞こえてるのか?」

「……あ、うん。聞こえてるけど」

「……いつから?」

「最初から」

今まで黙っていたっていうのかよ。最悪だ……。もう、悪魔召喚っていうか、お前が悪魔ですって感じだな。

サラマンダーも驚いた顔で、姿を見せている。当のベルクは、行こうよ? と言いながら、俺たちの横を通り抜けて行った。

「もうすぐ雨が降ってくるよ。早いところ、町を出よう。今日寝るところを探さなきゃ。この町には、宿が一つしかないんだ」

隣を見ると、サラマンダーは引き攣った顔をしていて、目が合うと逸らされた。

足早に進むベルクを追いかけて問いかける。

「野宿? 民家にでも泊まらせてもらえば……」

「この町は、異常に情報伝達が速いんだ。今日泊めてくれる人を探すくらいなら、野宿したほうが早いよ」

ベルクにしては珍しく、はき捨てるようにして言うと、チラッとサラマンダーを見て、見られた奴は引き攣った顔を更に強張らせて姿を消した。都合のいいやつだ。

「必要なものは、昨日買っておいたから、僕はすぐに町を出れるけど、ロボは大丈夫? この辺りは奴隷商人が多いから、今日はできるだけ進みたいんだ」

準備がいいよな、ベルクは。旅に必要な道具って言ったって、ほとんどのものは用意してくれているし、荷物が多くなると、移動が大変だから、俺はあまり物を用意していなかった。

「ああ、大丈夫。それより、奴隷売買は違法だろ? 奴隷商人も、絶えたはずじゃ……」

じゃあ、とりあえず進もうか、とベルクは森のほうへ足を進める。質問はあっさり無視された。仕方なく俺もそれに従う。後ろからはサラマンダーがついてきている気配がした。

町のはずれのほうまで来て、おもむろにベルクが口を開く。

「表向きにはね。ロボはいいとこの生まれだから、わからないかもしれないけど、首都でも裏ではたくさんの奴隷がいるんだよ。うまく隠してるけど。それに、身分制度は、地方よりも首都のほうが強いって言うしね。首都を少し離れると、大体どこも、違法地帯なんだ。少し気を抜けば、盗賊はいるし、追剥にだって遭う。下手したら、ユエグアンに売り飛ばされることもある。魔物なんかより、相当達が悪いよ」

さっきの質問の答えか……。時差がありすぎだろ。質問したことすら忘れてたよ。

それにしても、国の端ではそんなことが起こっていたのか……。全然知らなかった。そんなに危険な国だったなんて――――。

自然と足が止まった。ベルクも足を止める。

「……フラムが悩むことじゃない」

「え……?」

「昔から、そうなんだよ。文化を持ったころから。この国だけじゃないし、ヒトの住んでいた頃もそうだったらしいよ。ロボ一人が悩んだところで、どうしようもないことだし、僕らの力だけでは、今やどうしようもないことなんだ。そんなに追いつめられたみたいな顔しちゃダメだよ?」

励ましてくれているのか……。ていうか最初本名で呼ばれたし。

そんな顔してたか? でも、知らなかった。俺は、今まで何を見てきたんだ……。

「ありがと。確かに、今の俺の力じゃどうにもならないよな。でも、俺は変えてみせるよ。この国だけじゃない。この星を!」

「そっか。じゃあ、もっと魔術のレパートリーを増やさなきゃね。特訓しよっか!」

「うっ……」

そうきたか……。確かに必要だけど……! あれはベルクがただ楽しんでるだけな気しかしない……。

ほら、早く行くよ! と声が聞こえて顔を上げた時、ベルクは森の入り口で、立ち止まって待っていた。

サラマンダーが、ニヤニヤしてこっちを見ている。自分のことは棚にあげやがって!!

仕方なく走って追いかけ、町を後にした。

読んでくださる方がいて嬉しいです。

もっと人を引き付けられるものを書きたいなぁ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ