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†無知に鞭†Ⅲ

長い……ですね一つが

読んでいただけたら嬉しいです

殺すなら殺せよ!!  

この沈黙だけはやめてくれ!

よりによってこの宿、対面式の机だよ……。

『サラマンダー、お前何とかしろ』

『ありゃあガラよりひどい。俺には無理だ』

『元はと言えばお前のせいだぞ』

『……俺はまだ死にたくねェ』

サラマンダーの声が頭に直接聞こえる。実体は見えない。どうやら、隠しているようだ。

契約を交わすと、声に出さなくても、脳内で会話ができるらしい。

「サラマンダー、ね。よく召喚したね、ロボ」

「…………」

無表情は止めろよ!

大体、なんで話す前から全部知ってるんだよ。

あのあとすぐに宿に戻ると、ベルクが仁王立ちで待っていた。 

俺は、何も話していないのに、なぜか状況は把握されていて、契約を結んだことも含めてすべて知られていた。

「悪魔だったら、どうするつもりだったの?」

「…………」

無言が一番。嵐が過ぎ去るまで待とう。

『おい、何か答えろよ。お前、このまま黙ってたって、状況は変わんねェよ』

『……うるさいな。頼むからお前が答えろ。そしてお前が殺されろ』

『俺はまだ死にたくねェ』

この会話予想以上に疲れるな。頭がガンガンするし。

でも、ベルクは気が付いていないみたいだ。なかなか使える。

「はぁ……、駄目だって言ったのに。ちゃっかり契約結んでるじゃん」

ベルクが頭を抱え込んでこっちを見てくる。なんでそんなに執着するんだよ。

別にお前の命じゃないんだからいいだろ?

「だって、それはッ――」

思わず立ち上がる。椅子がガタンと音を立てて倒れた。

「四大精霊だから? あのね、召喚はなんでも危険なんだよ。妖精だって悪魔より危険な奴もいるし。召喚したのがサラマンダーだったから大丈夫だっただけで、他の精霊だったらどうなっていたか……」

言わないとわからないだろ、そういうことは。言えよ。

サラマンダーだったから大丈夫だったって……なんで、サラマンダーの性格まで知ってるんだよ。

そういうことが載ってる図鑑でもあるのか?

『そいつ、前に俺のこと召喚したし』

「嘘だろ?」

「何が嘘なの?」

うわっ……声に出しちゃったよ。気がつかれた? 

これ、心臓に悪すぎだろ。

「……なんでもねぇ……。……解ったよ。もう、無闇に召喚したりはしないから」

「別に、召喚相手をよく把握してから召喚するならいいんだよ? 召喚相手が不明なら立場が不利すぎる。賭けごとに持ち込まれて、命とか、盗られかねないし……。

……まぁ、今回は仕方ないか。僕も説明不足だった。結局、こっちのプラスになったのが幸いだね。明日、僕が稽古つけてあげる。せっかく召喚したんだから、戦力にしたいでしょ? そんなに知りたいなら、召喚魔法も教えてあげるよ」 

「――お、おう。ありがとな」

な、何があったか知らねえが、随分とご機嫌じゃねえか。逆に焦るよ。

「ってことで、今回は僕は何も言わないよ」

それは嘘だな。

言ってるだろ十分。嘘つくなよ。

「あと、これ、旅に必要な道具とか買ったから払っておいて」

「俺が? ……まぁ、いいか。解った。明日役所に振り込みに行ってくる」

「はい、これ、請求書。じゃあ、先に風呂入るね」

ポケットから四つ折りにされた紙を出して俺に渡すと、ベルクは荷物を取りに部屋に入って行った。

バタン、とドアを閉める音が聞こえる。

……少し、勝手すぎねえか? 別にいいけど。

請求書、やけに長い気がするんだが……

「――――ッ!?」

た、高ッ!!

こんなに何を買ったんだ!?

大体、何に使うんだよ? 俺の聞いたことないようなものばっかりだし。

「こりゃまた随分買ってんな。まぁ、お前にとっちゃ大した金額じゃないんだろうが……。ヴールの金があるんだろ? なになに……ふーん、悪魔でも召喚するのか?」

横を見ると、サラマンダーが請求書を覗き込んでいた。

こうしてみると、なかなか整った顔立ちをしているのがわかる。

「あ? 俺は知らねぇよ。ベルクが買ったんだ。必要なものなんだろ」

「ああ、お前、俺が初めての召喚だっけか。じゃ、知らなくても当然だな。まぁ、明日にでも解るだろ」

「なんで?」

「お前、召喚魔法、教えてもらうんだろ? なら、召喚して見せてくれるだろ」

「そういうことか」

全部話を聞いていたんだな。途中で話さなくなったから、どこかに行ったのかと思った。

そういえば、この精霊、いつも火を纏っているけれど、消したらどうなるんだろな。

考えてなかったけど、サラマンダーの纏っている火って全然熱くないし。

「……なんだよ、じろじろ見て」

気がつくと、サラマンダーが怪訝な顔で俺を見ていた。

「ああ。いや、その火、熱くないなーって思ってさ」

別にじろじろなんか見てねえよ。気持ち悪いだろ。

サラマンダーは何を言っているのか分らなかったのか、ポカンとした顔をする。

それから、しばらく考え込む素振りを見せると、ああ、と納得したように頷いた。

「お前だけだ」

「何が?」

「だから、俺の火を熱いと感じないのはお前だけだ。他の奴が触ると火傷どころの騒ぎじゃない。そういう風になってんだよ。お前、俺と契約しただろ? だからさ。俺の火が熱くなかったり、俺を呪文なしで呼び出せたり、俺と心で会話できたりな、色々特別なことができンだよ」

へえ……それは知らなかった。

他の人が触ると熱いのか。

っていうか、お前、普段は姿を隠してるから、他の人に触られることはないだろ。 

「あと、お前、俺の火を消そうだとか考えるなよ」

「――へっ?」

「お前……考えてただろ? すぐに顔に出るな、お前は。俺は、この火の中でしかこの形でいれねェの。消えちまうから止めろよ。まぁ、それができたらの話だが」

なんか、腹立つな。水かけてやろうか? 

っていうか、近いんだよ。請求書が燃えるって。

ベルクが怒るだろ。

ずっと立っていて疲れたので、近くにあった椅子を起こして座る。

おいおい、近づいてくるな! 椅子が燃えるって。

あ、そういえば。昼間のことを思い出して、サラマンダーを呼ぶ。

「あ?」

「さっきの話とか、色々教えてくれよ」

ベルクが、サラマンダーを召喚した話とか、母さんと父さんの話とか。

「あー……めんどくせぇな。何から話してほしいんだよ?」

面倒くさがっても、結局は教えてくれるのか。

なかなか性格はいいのな。

「じゃあ、まずは契約について」

「契約? お前にさっき話しただろ。あれだけだよ。そこまで特別なことは無い。お前と契約したのは、エルがなかなか呼び出してこなくなって暇だったからだ。エルといて、人間に関与するのも悪くないと知ったしな」

暇だったからって…………。俺に利点ほとんどねえじゃん!

召喚される奴っていうのは、皆そんなに気まぐれなのか!? 明日の召喚魔術が怖いよ。

大体、なんでお前は、母さんのことを〈エル〉って呼ぶんだよ。確かにエタンセルって呼びにくいけどさ。

他にエルって呼んでいたのは父さんくらいだよ。まあ、別に俺は構わねえけど。

「まぁ、戦力にはなってやるが。お前の魔力は、エル以上に強いみたいだからな。楽しみだ」

俺の魔力とお前の技は関係あるのか?

「他には?」

「ああ、母さんと父さんのこと。今どこにいるのか、わかるか?」

「エルと、ヴール……いや、解らねェ。もうしばらく会ってないからな。話、訊きたいか?」

もちろん。

俺が頷くと、サラマンダーは少し後悔した顔をしてから、話し始めた。

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