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†旅の始まり†

初めて投稿します。読んでくれると嬉しいです(>_<)直したほうが良いところとか教えてくださいm(__)m厳しくお願いします(笑)

お話?

どうした、珍しいな。

それでは一つ、とっておきの話をしてあげよう。

物語の舞台は此処。私たちの住む世界だ。

時代は、今からほんの少し前。そうだな、私が学園を卒業したばかりの頃かな。

主人公は、私たちと同じ太陽の民(ソレイユ)の少年だよ。


そうだ、お前はもう習ったかい?

一億年ほど前に、私たちの祖先が〈チキュウ〉という星から移り住んで以来、黒い翼の太陽の民(ソレイユ)と、白い翼の月光の民(ユエグアン)はずっと戦争状態だったんだ。

これはその時の話。

歴史書にものっているよ。


 それでは、これをごらん――《imago》

私は指に魔力を込め、宙にイメージを作り出す。

スクリーンが映し出され、映像が流れ、物語が始まった。




        *




「これより、太陽の儀式を始める―――」




 〈太陽の儀式〉というのは、18になった太陽の民(ソレイユ)が、太陽の神殿で聖水を受ける成人の儀式。

この儀式を終えると一人前の大人として、すべての自由が保障される。同時に自分の身も自分で守らなくてはならなくなる。

 そして、今日が俺たちの太陽の儀式の日。

首都ソレイユは人口が多いため、誕生月に分けて儀式を行う。

その中で、一番誕生日が早い者が代表者として国民の前で挨拶をするようになっている。

俺たちの代表となったのは、〈ソレイユ国立学園〉の首席で俺の幼馴染でもあるフェルゼン・ベルク。

俺が知っている中では、一番頭が回る奴なのだが、強度の人見知りで、

「……こっ、このたび私達は、ソレイユの、大人の一員として、えー加わらせていただき……―――」

この通り、聞き苦しい挨拶を、さっきから淡々と続けている。

こんなことでよく高等部一の天才だなんて言われたな。

この演説だけ聴いた人には、只の無能少年としか認識されないだろうに。

「……ありがとうございました……」

拍手が響き、最後に聖水の儀式を受けたベルクが重い足取りで戻ってきた。

演壇では、誕生日順に次々と、聖水の儀式が進んでいた。

「あー、なんていうか、いつも通りだったな」

励ましの言葉も浮かばない。時々こいつは演技をしているのか、と疑いたくなる。

「あーうん。ありがと」

いや、褒めてねえよ?

――フラム、エクリクスィ・フラム――

演壇の方から、神父の低くも澄んだ声が聞こえた。

「フラム、呼ばれてる」

気がつくと、俺のところまで、聖水の儀式が回ってきていた。

「ぁ……ハイッ!」

慌てて席を立って、演壇へ小走りで向かう。

出てくるのが遅かったからだろうか。国民の視線がやけに痛い。

演壇の真ん中にいる神父は、心なしか笑いをこらえているように見えた。

一度階段に躓いたが、無事に演壇の中央に着く。

「――フラム、ベルクを頼んだよ」

聖水を俺の頭にかけながら、ソレイユの神父、リュミエールが言った。

リュミエールは俺の父さんの無二の親友で、父さんと母さんが旅に出てしまった後、色々と面倒を見てくれている。

「あ――ぶっ」

返事をしようとして口をあけると、聖水が気管に入って盛大に咳込んでしまった。

講義をしようと神父を見ると、ニヤッと笑みを浮かべていた。嬉しそうに見るな、馬鹿神父。

更にもう一杯、聖水がかけられる。聖水の量、多くないか?

「はい、終わり。行っていいよ、フラム」

「……ん。ありがとな」

次の人の名前が呼ばれるのを背に、演壇を降りた。

階段を下りる途中、つまずいてこけそうになる。

足元を見ると、登るときと同じ段だった。同じ所で躓くなんて、 ついてないな。

席に戻るとベルクが笑っていた。

「ははっ、仲いいねぇフラム」

「はぁ?」

「聖水、柄杓に2杯もかけられてるんだもん」

どうりで多いはずだ。何がしたいのか解らない。クビになるぞ馬鹿。

「しっかし、長いな。今年何人いるんだよ?」

「男女合わせて234人。いつもより多いみたいだよ」

「……さすが天才」

よく覚えてるな、そんなこと。どこで聞いたんだ。

「んじゃベルク、終わったら起こしてくれ」

「はいはい、お休み」

止める気なし、か 。

「いつものことだからね」

声に出ていたのか。そんなに寝てるかな俺。午前授業の日は起きてたんだけど。


                      *


「――フラム、起きて……フラム、起きて終わったよ」

うぅ、うるさいな。誰だよ、せっかく人が気持よく寝ているところを。

「なーにベルク、こうすりゃ起きるって」      

――つっ冷たっ!?

「――っ!! 起こし方があるだろ! 馬鹿神父!!」

いきなり水かける奴がいるか!!

リュミエールを睨むと、バケツを振って笑みを返された。

「おっ! ほら起きた。旅の途中もこうすりゃいい。じゃあ、俺はもういくぞ」

「はい。ありがとうございます」

リュミエールが、踵を返し、ベルクがお辞儀をした。式帰りの学生に混ざって、すぐにリュミエールの姿は見えなくなる。

いつもの様に長居しないところをみると、どうやら、急ぎの用事でもあったようだ。

「旅?」

何の事だかさっぱり。

「フラムが言ったんでしょ。『この式が終わったら旅に出よう。もちろんお前もいくよな?』って」

そんな馬鹿な。寝言を信用するなよ……。

「前から、言ってたしね、フラム。お父さんとお母さん、探しに行くんでしょ?」

「まぁ、確かにそうは言ったが、本当についてきてくれるのか?」

「もちろん! 僕ら仲間でしょ。それに、術さえ使わせてくれたら僕のほうが強いんだし」

俺たちの中で、稀に〈魔術〉と呼ばれる不思議な力を使える奴がいる。

ベルクもその中の一人で、そのレパートリーと威力は、並の大人では太刀打ちできない。

だから、ついてきてくれるなら、心強いことこのうえない。

だけど、

「危険だぞ?」

きっとこの旅はものすごく危険なものになる。多分普通の旅人の旅よりもずっと。

「そのために僕がいるんでしょ。フラムなら一日で死んじゃうよ」

……失礼な。真顔でさらっと言われてもなあ。確かに俺は術とか魔法とか使えないけど。

中等部進学の時に受けた、潜在魔力を調べる検査では、魔力があるといわれて、それからは魔術者になりたい人を主に魔術の授業をやっていたみたいだけど、放課後に残るのは面倒くさかったから、授業を受けていなかった。

今思えば、ちゃんと授業を受けておけばよかったな。

ベルクに馬鹿にされるなんて。正論だから言い返せないのが悔しい。

ベルクのほうを見ると、楽しそうな顔で、魔術を試していた。

本気でついてきてくれるらしい。周りの学生が好奇の目で見ているけど、気が付いていないらしい。

「そっか、一緒に来てくれるのか。……じゃあ出発第二の衛星が空の真上に来た時」

そうそう、俺たちの祖先が住まいに決めたこの星〈ガイア〉は、〈チキュウ〉とほとんど同じ構想をしているらしいのだけど、衛星の数は4つ。

一つ一つの名前は、望遠鏡でも使わなくちゃ判別出来ないし、なにより覚えるのがめんどくさい。

それで俺たちは、昇ってくる順番に、〈第一の衛星〉〈第二の衛星〉なんていうように覚えている。

わざわざ星の名前で呼ぶ奴は、俺が知っている中ではベルクしかいない。

「わかった。割と遅めだね」

「本当にいいのか?」

「しつこいなぁ……。そんなについてきてほしくないの?」

俺だって、死にたくないからついてきてほしい。

でも、この旅にはたくさんの危険が伴う。もしかしたら二度とこの街を見ることができないかもしれない。

そんな旅に、親友を巻き込むわけにはいかない。

ましてやベルクなんか、将来性が有望だから、たくさんの人の期待がかかっている。

次期神父だとか、次期ソレイユの王だとか、色々なことが噂として飛び交っている。

俺が死なせたりしたら、責任をとっても取りきれない。

「……本当に良いんだな?じゃあ、第二の衛星の夜に。この広場で。準備しておけよ」

「もう大体は準備してあるよ。新学期入ったときにフラム言ってたでしょ」

相変わらず、準備周到だな。

普通、そんなに早くから準備ってするものなのか?

「そ、そうか。んじゃ、俺はこれから準備するから、今日はもう帰るな」

気がついたら、もう日も落ちかけていた。

今回の式は、前回より長かったな。

「早く準備しなよ? 次に煙の星(カプノス)が回ってくるまで、あと3日しかないんだから」

「カプノス……? ああ、第二の衛星か? 解ってるよ、それくらい。第二の衛星の周期は一か月だろ?」

「半月ね。僕、この後、市長さんに呼ばれているんだ。もう少しで時間だから、もういくよ。ちゃんと準備しておいてね」

「へいへい。わかってますよ。これだから天才は……」

「そうそう、あと三日で、簡単な魔術を取得しておくこと。神父さんに頼んどいたから、もうそろそろ来るんじゃないかな

「いや、俺帰る……」

あの馬鹿神父に魔術を仕込まれるって?

冗談はやめてくれよ。

「力になってくれるって! 僕は、帰るね」

さっさと帰ってしまうベルクを唖然として見送っていると、儀式の後片付けを終えたリュミエールが、軽い足取りでやってきた。

鼻歌まで聞こえてくる。どうやら上機嫌らしい。



「よっ!始めるか。ベルクにみっちり扱いていいって言われたからな! 泣き言言うなよ!! もう馬鹿とは言わせないからな!」



まだ根に持っていたのかよ!

ベルク頼むから、これ以上この馬鹿神父の本質を引き出さないでくれ……。

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