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出会い 一

03

 

 すぐに煙が薄らいで、そいつの姿がはっきりと見えてきた。

 泥で汚れた薄手の毛布を肩にかけている。サンダルに裸足、薄汚いズボンにところどころ穴の空いた灰色のトレーナー。手入れされていない白い口髭。糸のように細い垂れ目。くたびれたキャップを被っている。背が低い、よぼよぼの小汚い老人だ。

 弱そうだ。こいつが本当に巨大男を消したのか? と俺はもう疑い始めていた。


「いやあ、すまんすまん。ちいと寝ておった」

 片手をあげ、のんきな声でそいつが言う。外見はともかく、どうやら俺たちを襲うつもりはないらしい。


 俺は無言で頷き、一緒に倒れ込んでしまった女の様子を確認した。さっきから俺のシャツの裾を掴んで離そうとしない。見ると、目をかっと開き、真一文字に口を結んでじっとしている。

「おい、あんた……」

 肩を揺らし覗き込むと、女がはっと我に返った。濡れた黒い瞳に俺の顔が映る。

「さっきはごめん。怪我ない?」

「だっ大丈夫」

「……ほんとうに?」

「本当だよー。助けてくれて、ありがとう」

 女がニカッと笑う。無理はしていないようだ。

「元気そうで良かったわい」

 後ろから声がして振り向くと、老人が顔を皺くちゃにして微笑んでいた。見れば見るほど普通の人だ。

「あなたが私たちを助けてくださったんですね! ありがとう!」

 女が目を輝かせる。

「あんなに大きな人を見たの生まれて初めて!」

「ふむ、そうじゃろう。あやつらが元の姿でここに現れるのは滅多にないからの」

「えっ……あやつら? 元の姿?」

 これは俺だ。

「あんな人が何人もいるの?」

 女が驚く。

「そりゃあおるとも。君たちは運がよいな。こじきがわしと気付かれていたら、あやつはもっと頭を使って君たちを襲おうとしただろう」

「こじき……?」

 老人の言葉に俺ははっとした。猫を見つける前、通り掛かった公園にこじきがベンチで寝ていたのを思い出した。毛布を被っていたような気がする。こいつは最初からいたのか。



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