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出会い 二


「こじきさんなのに、大きい人を消しちゃうなんて魔法使いみたい!」

「そうじゃ。わしは魔法使いじゃ」

「魔法使い! すごーい!」

「そんなわけないだろ! あんたも簡単に信じるなよ!」

 女の目が一層輝きだしたので思わず突っ込んでしまった。

 出会った時から感じていたが、この人は凄く素直だ。素直すぎて危なっかしい。知らない人にほいほいついて行ってしまいそうだ。

「ふむ、冗談が通じなくてとても残念じゃ」

「なんだー。わくわくしたのに」

 呑気な会話が続くので、俺は痺れを切らして一気に言った。

「教えてくれ。あんた何者なんだ? あのデカい男は一体なに? 元の姿って? 今一体何が起きているんだ?」


 数秒間の空白。老人は細い垂れ目で俺を見つめ、俺はその口が開かれるのを黙って見つめていた。

「落ち着いておくれ。よし、きみのためにちゃんと話そう。もちろんお嬢さんのためにも」

 それまでと打って変わって、諭すように静かな口調だった。俺は、暴れていた馬が次第に大人しくなってゆくような感覚に包まれた。老人の一言で、自分が嘘のように落ち着いていくのが分かる。

 女もじっと黙って老人を見ていた。

「その前に、お二人の名前を教えてくれんかね」

 呼び名がなくてはことは始まらんからのう、と老人は弱弱しく笑った。

「……深代紫」

「西田梅といいます」

「紫と梅じゃな。わしについて来なさい」

 ここじゃあまりにも目立つ、そう言って老人は背を向けて公園の方へとゆっくり歩き出した。俺も立ち上がり、女の手を取って立ち上がらせてやる。

「ありがとう」

 女は自分の服についた汚れをはたき、それから黙って俺をみた。

「ふかしろゆかりくんって言うんだ」

「……ああ」

「じゃあ、改めて。ゆかりくん。さっきは助けてくれて本当にありがとう」

「大したことしてない」

 ぼそっと呟いた。一日でこんなに感謝されたのは久しぶりだ。

「わたしのことは梅でいいから」

「……うん」

 女、もとい、梅は、また虫取り少年のようにニカッと笑った。




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