インタビュー記録 ⑨
瀬戸:あとな、やっぱり一番許せないのがあの「村人」どもだ。あいつら、思考停止しすぎなんだよ!
調査員: 村人……。救うべき弱き民、という位置づけですが。
瀬戸: 弱き民? 甘やかしすぎだろ。ゴブリンが二、三匹、村の入り口をウロウロしてるだけで「終わりの世だぁ!」とか言って、全員で村長の家に引きこもって震えてる。……いや、お前ら何十人もいるだろ。鍬とか鎌とか持ってんだろ。全員で囲んでボコせよ!
調査員: しかし、一般人には魔物と戦う術がないという「設定」が……。
瀬戸: 出たよ、「設定」! あいつら、俺が来るまで何日も、畑も放置して祈ってるだけなんだぜ。俺が到着した瞬間、手のひら返して「勇者様! 早くあいつらを片付けてください! 畑が枯れちまう!」だ。……お前らの腕っ節は何のためにあるんだ? 筋骨隆々の鍛冶屋の親父まで一緒になって震えてるのを見た時は、マジで眩暈がしたわ。
調査員: 勇者の介入を待つのが、物語の「定石」ですから。
瀬戸: その定石が人をダメにしてるんだよ。あいつら、俺がゴブリンを倒した途端に外に出てきて、「いやぁ、やっぱり勇者様は違うな! 宴だ!」って、俺の報酬を自分たちの飲み食いに使いやがる。
……ふざけんな。俺の戦いをエンタメにして、自分たちは一歩も動かずに『安全』と『感動』をタダで手に入れようとしてるんだ。
調査員: それは……。
瀬戸: 挙げ句の果てに「隣の村にも魔物が出たらしいですよ」って、勝手に次の仕事を振ってくる。……俺は、お前らの便利なリモコンじゃねえんだ。
あいつら、自分たちで解決しようとする『意思』が完全に欠落してる。世界全体が、勇者っていう「攻略ウィキ」を見てるだけのプレイヤーなんだよ。
調査員: それで、救うのが馬鹿らしくなった、と。
瀬戸: ああ。俺が村を出る時、わざわざ「自分たちで戦え」って武器を置いてったのに、あいつら「そんな物騒なもの、使い方が分かりません」って突き返してきやがった。……知るかよ。勝手に滅びろ。
調査員: ……。
瀬戸: 調査官。……俺、こっちに戻ってきて、道路工事の交通整理してるおじさんを見た時、思ったよ。自分の持ち場で、自分の役割を、誰に頼ることもなく黙々とこなしてる。……これだよ、これが「生きてる人間」の姿だろって。




