インタビュー記録 ④
調査員: 瀬戸さん、他に具体的にどのような「ところ」が苦痛だったのか、記録のために詳しく伺えますか?
瀬戸: (深いため息をついて)……全部だよ。まずさ、転生した瞬間に「あ、ここはあのゲームの世界だ!」とか「ラノベで見た展開だ!」って即座に受け入れなきゃいけない空気。あれ、何なの? 普通、知らない場所に放り出されたらパニックだろ。なのに、頭の中に直接『設定』が流し込まれてくるんだ。
「お前は追放された不遇職だ」とかさ。……勝手に決めんなよ、俺の職種。
調査員: いわゆる「メタ的な知識」による適応ですね。
瀬戸: 適応じゃない、強要だよ。あと、あの「鑑定スキル」。あれが一番クソだ。道端の石ころから、初対面の相手のステータスまで全部数字で見える。……想像してみろよ。飯を食えば「栄養価」が出て、人と話せば「好感度」が見える。情緒もへったくれもねえ。世界が全部、作者が書いた「データ」に見えてくるんだ。
調査員: 効率的に攻略できるのは、転生者の特権では?
瀬戸: 攻略? 俺はゲームをしに行ったんじゃねえ、生きてたんだよ!
なのに空の向こうから「ここでこのスキルを使えば、読者が喜ぶぞ」っていう無言の圧力が降ってくる。魔王を倒すのも、裏切り者に『ざまぁ』するのも、俺の意志じゃねえ。……全部、画面の向こうでニヤついてる読者と、数字が欲しい作者の「接待」だろ。
調査員: ……。
瀬戸: だいたい、なんで俺の周りの女は、ちょっと助けただけで「一生ついていきます!」なんだよ。
重すぎるし、不自然すぎるだろ。あいつら、人間じゃなくて、ただの『属性の塊』なんだ。俺の好感度を上げるためだけに配置されたNPC。
……会話してても、あいつらの背後に作者の指が見えるんだよ。「ほら、こういう展開が好きだろ?」って透けて見えるのが、最高に気持ち悪い。
調査員: それで、あちらの世界での栄華を捨てたと。
瀬戸: 捨てたっていうか、逃げ出したんだよ。アニメ化だの、重版出来だの、知らねーよそんなこと。
俺は、誰にも見られていない、誰の期待も背負わない、ただの「瀬戸」として生きたいだけだ。
調査員: 今は、その望み通り「ただの一般人」ですが。
瀬戸: ああ、最高にだるくて、最高に自由だ。……あ、調査官。もしあいつ(作者)に会ったら言っといてくれ。「お前の書いたシナリオ、一ページ目からクソ」ってな。




