インタビュー記録 ⑫
瀬戸: これだけはマジで引いたんだけど。仲間の過去、盛りすぎだろ。残酷にすればいいと思ってんの?
調査員: 仲間の背景……。悲劇的な過去を乗り越えて強くなる、というのは物語の「深み」を出す定番ですが。
瀬戸: 深み? 泥沼だろ、あんなの! ヒロインは目の前で村を焼かれて家族全員アレされて、ライバルは親友に裏切られて拷問されて、挙句の果てに唯一の理解者だった妹が魔王の生贄……。
盛りすぎなんだよ! 設定の詰め込みすぎ!
調査員: 読者の同情を誘い、キャラへの愛着を持たせる手法としては一般的ですが。
瀬戸: 「手法」で済むかよ! 俺、そいつらとパーティ組んで旅してんだぞ? 焚き火を囲むたびに、どいつもこいつも「実は私の村は……」って、一晩中暗い話を始めるんだ。
……こっちは明日も魔物と戦わなきゃいけないのに、どんな顔して聞けばいいんだよ!
「大変だったね」で済むレベルじゃねえだろ。
調査員: 主人公として、彼らの心の傷を癒やしてあげるのも役割の一つでは……。
瀬戸: 無理だろ! 精神科医連れてこいよ!
なのに作者は、俺が「……君の悲しみは、僕が背負うよ(キリッ)」とか言うのを期待してやがる。
言えるか!ハゲ!
調査員: ……。
瀬戸: 作者はな、キャラを不幸にすればするほど「エモい」とか思ってるんだろうけど、現場にいる俺からすれば、ただの『不幸の博覧会』だ。
あいつら、一歩歩くたびにトラウマのフラッシュバックで震えてるんだぜ。そんな状態で戦場に連れて行く俺の罪悪感、考えたことあんの?
調査員: つまり、過剰な悲劇設定が、瀬戸さんの精神を削っていたと。
瀬戸: そうだよ。こっちの世界に戻ってきて、テレビで「最近の若者は……」とかいう平和な悩みを聞いた時、マジで安心したわ。
「バイトがだるい」とか「好きな子に振られた」とか、その程度の「軽い悩み」がどれだけ幸せなことか。……仲間の人生を「重厚なストーリー」にするために、わざわざ地獄をトッピングするような世界、正気じゃねえよ。
調査員: ……。
瀬戸: 調査官。……俺、これから実家に帰って、親父の「腰が痛い」っていう、何の伏線でもない、ただの愚痴を三時間くらい聞いてくるわ。
「誰も死なない、誰も不幸にならない、ただの愚痴」……。それが俺にとっての、最高の癒やしだわ。




