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インタビュー記録:次元帰還拒絶事案 No.88

対象者: 瀬戸 蓮(元・異世界救世主レイアス)

聞き手: 多元宇宙監視委員会 調査員


調査員: 瀬戸さん、落ち着いてください。あなたが異世界の王宮を爆破し、聖剣をドブに捨ててまで「強制帰還プログラム」を起動させた件について、事実確認を行いたいだけです。


瀬戸: (苛立ちを隠さず机を叩く)……落ち着いてられるかよ。あんたら、あっちの世界の空に浮かんでる「数字」を見たことあるか?


調査員: 数字……? いわゆる「視聴数」や「評価数」のような概念的エネルギーのことでしょうか。


瀬戸: そうだよ。俺が魔物を一匹倒すたびに、空に『+10,000いいね!』とか『アニメ化決定!』とかいう幻覚みたいな文字が躍るんだ。俺が泣こうが叫ぼうが、あっちの連中は『エモい展開だ』『主人公の覚醒フラグだ』って盛り上がってやがる。


調査員: それは……転生者にとっての栄誉ではないのですか?


瀬戸: ふざけんな! 俺はただ、大学の帰りにコンビニで新作のアイス買おうとしてただけなんだよ。それが、いきなり光に包まれて、見たこともないバケモノと殺し合いをさせられて……。「チート能力だ」「ハーレムだ」って、そんなもん誰が頼んだ?


調査員: ですが、あちらの世界ではあなたは英雄として……。


瀬戸: 英雄? 笑わせるな。俺はただの『コンテンツ』だったんだよ。俺が血を吐いて戦う姿を見て、画面の向こう側の誰かが「スカッとする」ための道具だ。……知らねーよ、そんな都合のいい期待。俺の人生は、あんたらの娯楽じゃないんだ。


調査員: しかし、戻ってきた今のあなたには、魔法も権力もありません。


瀬戸: ああ、最高だよ。魔法なんて使えなくていい。指先一つで火が出るより、ガスコンロで湯を沸かすほうがよっぽど安心する。


……いいか、俺が欲しかったのは『いいね』の数じゃなくて、土曜の朝に昼まで寝て、適当なサブスクで映画観て、マック食って……っていう、どうしようもなく退屈で、誰にも見られていない「自分の生活」なんだよ。


調査員: つまり、失踪の理由は……。


瀬戸: 「飽きた」んだよ。他人の期待に応えるだけの物語に。……俺を、ただの『名もなき一般人』に戻せ。それ以外、何もいらない。

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