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-Prologue-
【Prologue】
闇。日も落ちた世界には、いつもの様に夜の帳が下りている。
夜の繁華街の喧騒がまるで一つの音楽の様に響く中、
そこにだけは静寂があった。
夜。『夜』というたった一文字が、そこの情景と何とも言えぬ妖しさを表現するのに相応しいだろう。
ビルの屋上でぼんやりとした繁華街から浴びせられる光を身体に受けながら、
高校生と思しき少年がむくりと起き上がった。
―――――いつからだろう。夜を『夜』と意識するようになったのは。
―――――いつからだろう。『暗闇』を身近に感じるようになったのは。
―――――いつからだろう。『闇』が自分を照らすものだと気付くようになったのは。
―――――いつからだろう。
今日も空は――――――――――――――――――――
黒い。
【Lacquer Black-falls in the dark-】
静かに、『夜』は深まってゆく。