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林檎のロロさん  作者: Tada
7/151

7個目

ブクマ・評価・いいね、ありがとうございます。

  


「マルコ!」


 戻ってくるなり、この部屋の主が勢いよく扉を開け、名前を呼んだ。ガチンと嫌な音もした。


「ちょっともう!アンタは何でそんなに乱暴なのさ!扉止めがまた壊れるでしょ!」


 腰に手をあてて、彼の片腕である副代表のマルコが、呆れながら説教した。よく見る光景だ。


「次やったら修理の人件費アンタの給料から引いてやる!」

「わかったわかった、怒るなよー。あ、ちょうどいいから爺、後で扉止めみてくれよ」

「はぁ、しょうがねぇなぁ小僧は」

「アンタは‥‥‥、メリーさんは偉くて凄い人なんだから、扱き使うんじゃないよ」

「俺だってギルマスでお前より偉いんだけど」

「俺はアンタの義兄(あに)だから、それでプラマイゼロだよ、義弟(おとうと)

「うっわ」


 もう敵わないので、カイは降参することにした。


「お義兄様(にいさま)、奥の防音室にお茶を四人分お願いします」

「キモ‥‥‥了解」

「それから、しばらく‥‥‥」

「ここで待機?あと誰が来るの?」 

「ユルが来るから通してくれ」

「了解。ロロちゃん、メル・ジュエルのチョコレート買ったからお茶と一緒に食べてね」

「ありがとう、マルコさん」


 マルコはメイナの兄で三十一歳。ロロを保護した時にあの場にいた。メイナと同じ胡桃色の髪だが少し癖があり、垂れ目がちで、表向きはにこやかで気さくな人柄だ。

 メイナが結婚・出産して冒険者をやめた時に、マルコはソロで活動するか考えたが、カイにギルドで自分の補佐をしてほしいと頼まれた。冒険者をやめたいわけではないが、保護した少女の心配もあったし、しばらく付き合うつもりでいたが、副代表にまでなってしまった。


 給湯室でチョコレートに合う茶葉を選ぶ。ポットとカップを温め、柑橘の香りの紅茶を四人分と自分のカップにも注いだ。

 代表室の中に防音室がある。誰にも聞かれたくない話をするための部屋だ。

 マルコが紅茶をトレイで運ぶところでノックがして、

ユルを確認すると入室を許可した。


「ユルくん、カイさんたちは防音室で待ってる」

「‥‥‥たち?私一人ではないのですね」

「俺は詳しくはわからないから、まあ行こうか」


 防音室の扉をノックして、ユルを案内し、紅茶を配る。チョコレートの皿はロロの近くに置いた。

 来てすぐにロロの元気がない気がしたのだが、いつも通りにした。

 

「誰も通さないでくれ」

「了解」


 マルコは部屋を出て扉を閉めた。

 何も聞こえなくなった静かな代表室で、自分の席に座り、紅茶を飲んだ。




 ユルは、メリーがいることで魔法鞄(マジックバッグ)の話だと判断した。

 冷めないうちにと、紅茶を飲みながら、先日の受付でのロロのリュックのことを、あの日不在だったユルに話した。


「‥‥‥それで鑑定、ですか?」

「頼む」


 カイが短く答えると、三人がロロを見た。


「嬢ちゃんの今の状態の魔法鞄とピンバッジを鑑定してほしいんだがな」

「‥‥‥ピンバッジもですか?」

「ロロ、リュックを。お前の例の話は、ユルの鑑定の後にしよう」


 ロロが頷いてユルのほうに、どうぞ、とリュックを渡した。手が震えて緊張してるようだ。


 カイは、複雑だった。

 この震えは、ロロが不安からくるものだとわかってはいるのだが。

 ロロは、ユルのファンだ。キラキラした瞳で、仕事をしているユルを見て『できる男カッコイイ‥‥‥』と呟いているのを聞いてしまったことがある。ユルがギルドに来た五年ほど前のことだ。モヤっとしたが、子供の頃の年上への憧れは誰にでもあることだし、と思うようにしていた。


 ロロはもう十五歳で、思春期で、独り立ちしていて。


 ああ、大きくなったんだな‥‥‥。


 あの小さな子が。



「‥‥‥では、鑑定します」 


 ユルの言葉で、カイは気を引き締めた。

読んでいただきありがとうございます。

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