65個目
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お泊り会は、ちょっとした親孝行になったようで。
シメに今日もお疲れさ魔法をしたら、出勤してきたマルコが引くほど、カイが爽やかな代表になっていた。
リフォームが楽しみだなマルコ!と浮かれている。
「あぁ、楽しみだよ。それで、ランスさんはいつ来るのかな?」
「そういえば、時間のこと決めてなかったな」
「‥‥‥」
室温が少し下がった気がしたと思ったら、カイが通常モードに戻っていた。浮かれタイムは終了したらしい。マルコの冷気が終わらせた。
そして、ランスが来たら大会議室に案内するように受付に言ってくる、と逃げた。
「マルコさん」
ロロは、魔法鞄から厨房の食品専用魔法袋を出した。
「ジンさんからチーズケーキのホールをもらったの。皆で集まった時にでも食べてって。この袋を厨房に返したいんだけど、ケーキをマルコさんに預けていい?」
「それなら、カットしておいて給湯室の食品収納庫に入れておこう。代表室で食べらるようにすればいいんだね?」
「うん、お願いします」
マルコが給湯室へ行くと、一人ソファーに座ったロロは、丸襟の白シャツにリボンタイをしていないことに気がついた。今日は何色にしようか考えて、深紅のリボンタイを出し、リボン結びをした。
「よし」
「ん、いいね」
いつの間にか戻ってきたマルコが、ロロのリボン結びを見ていたらしい。
「ロロちゃん、紺色のリボンタイもあるの?」
「紺色?部屋のクローゼットにあるよ?」
「そう、似合うよね、きっと」
してこいってことだろうか。わかったと言って、その代わりマルコの貴公子スタイルをリクエストした。「俺でいいの?」と笑って、じゃあ明日ねと言った。よし。
それから、ピアスホールを開けるのを頼んだら、耳のどの位置にするか考えようねと言われた。なるほど。
何だか今度はマルコの機嫌が良くなった。もう一度給湯室へ行くと、鼻歌で紅茶を入れて運んできた。
「あのチーズケーキ、とても美味しそうだね。ユルくんが戻ってきたら皆で食べようか」
「うん!」
マルコが隣に座り、耳を見てもいい?と言われた。ヘアピンをしている方は耳を出しているので、どうぞと見せた。
「なんか、ちょっと恥ずかしいね」
「うん、わかるよ。ロロちゃんの耳は良い形だね」
「ソウデスカ?」
‥‥‥まだかな?まだ見てるのかな?
「スタンダード・ロブ、それか、トラガス良いんじゃないかな」
近い、近い、近い。声が近いよ。
「スタンダード・ロブって耳たぶだよね?トラガスって?」
「ここ」
「ひゃん!」
「ふふっ」
耳穴の近くの軟骨あたりを触ったマルコが、悪戯っぽく笑った。
「擽ったい!ダメ、耳たぶにする」
「そう?」
「イチャイチャするな」
「うわ、びっくりした」
「痛い痛い痛い」
カイがいつの間にか戻っていて、ロロから離すようにマルコの耳を引っ張っていた。
「ピアスの位置決めたか?」
「耳たぶにする」
「そうか」
「早く離してくれない?」
「ふん」
パッと耳から手を離して、大会議室に行くように言った。
「ちょうどランスが受付に来ていた。大会議室にいるからマルコ行って来い。ロロは、後で様子を見てから」
「了解」
マルコは、ピアスホールは後日ねと言って、代表室を出た。
「あいつ、油断も隙もないな」
「じゃあ、私は厨房に魔法袋返しに行ってくる」
「少し時間潰してこいよ。まだカフェは開いてないからな。料理長たちの手伝いするか、邪魔しないようにな」
「はぁい」
ランスとマルコが話をして、必要ならロロを呼ぶということらしい。代表室を出ると、転ばないようにスススと歩いた。スススと階段も下りた。スススと厨房に行くと、ジンが悲鳴をあげた。
「ロロ!びっくりした」
「申し訳ない」
厨房はやめておこう。
「おはよう!魔法袋を返しに来たよ。どうもありがとう」
「そうか、もう食べたのか?」
「まだ食べてないの。マルコさんにカットしてもらったけど、ユルさんが王都から帰ってきたらみんなで食べようと思う」
料理長に何かお手伝いしたいと言ったら、カフェのテーブルや椅子を拭いてほしいと言われた。布巾で拭くのは久し振りだ。ミドルエプロンと、除菌された布巾をテンから受け取った。
「あのね、今日は出来ないけど、そのうち洗浄魔法でギルドのお掃除させてもらうから、その時はお願いします」
エプロンを結びながら言うと、三人が驚いて手を止めた。
「洗浄魔法を仕事にできないかと思ったの。まずは二階から、カイさんかマルコさんに付いてもらって、魔力回復薬も用意してないと出来ないんだけど」
テンが二人の過保護っぷりに吹き出した。
「また、ロロの洗浄魔法が見れるんスねぇ」
「クルッと回ってキラキラして可愛かったもんなぁ」
さすがに回らないです。でも「キレイになあれー」は言わないと上手くいかないのだ。不思議だ。
「そうか‥‥‥」
ドット料理長はただそれだけ言って、仕事に戻った。
「ははっ、隊‥‥‥料理長、嬉しそうな顔してるッスよ」
それなら良かったと、ロロは拭き掃除を始めた。
うっかり魔法をかけないようにしないといけない。
無表情で拭いてたら、ロロ怒ってる?とジンが青い顔をしてきた。ジンは怖がりなのだろうか。真面目に掃除してるだけと言ったら安心していた。
無表情はやめて、鼻歌で掃除をしたらテーブルに艶が出てしまった。鼻歌ダメだ。無表情より少しだけ口角を上げて拭いたら、ジンも心配せず掃除も上手くいった。
「拭き掃除、コントロールが、難しい」
「ロロ」
気が付いたらドットが隣に来ていた。どうしたのかと思ったら、カフェの入口に数人の冒険者がこちらを見ていた。もう開店時間?と聞くと、まだらしい。
「もう少しで拭き終わるよ?」
「そうか。では、終わったら厨房に来なさい」
「はぁい」
最後のテーブルと椅子を拭いて、「終わったー」と言ったら、厨房のテンとジンが手招きしたのでそちらへ行った。
「お疲れさま、ロロ」
厨房の奥に小部屋があって、料理人たちのロッカールームになっている。中に長椅子があるので、そちらに座るように言われた。
ジンが蜂蜜レモン水をくれた。
「ありがとう」
冷たくて美味しい。ホゥっと息をついて、掃除の感覚を忘れないようにしようと思った。
「新しく可愛いウェイトレスが入ったのかと、冒険者が噂して集まって見てたッスよ」
「リリィが一番初めに見ていたよ。レイラに引きずられて戻ったけど」
リリィさんや。‥‥‥あ、そうだ。
「もうすぐ開店だよね?料理長ここに来れる?」
「待ってろ」
ジンが呼びに行ってくれた。すぐにドットが来た。
「どうしたんだ?」
「すぐ終わらせるから、ちょっとここに座ってくれる?カイさんには許可が出てるの。扉閉めて」
「?」
ドットを座らせると、ロロが後ろから両肩に手を乗せた。
「今日もお疲れさ魔法・微弱」
「「「‥‥‥!」」」
薄紫色に光るロロを、テンとジンが呆然と見ていた。
体の中の血液の流れを感じて、巡るように温めて、疲れを取って、優しく、優しく。
ドットは、信じられないほど軽くなった身体を確かめて「うん、凄いな」と言った。テンとジンにもするからと言ったら、ドットは黙って頷いて、厨房に戻った。
「ロロ、何だその色‥‥‥」
「絶対に内緒だよ?」
「当たり前ッスよ!」
続いて、テン・ジンに魔法をかけて、元気になった二人を厨房に送った。
飲みかけの蜂蜜レモン水をグイッと飲んで、プハーッと言った。気持ちがスッキリしていた。彼らに少しでも恩を返すことが出来たのが嬉しかった。
「これから、もっともっと頑張るからね!」
扉の隙間から、店内の様子を見る。入口に人が居なくなったら、ジンに言ってこっそり厨房を出よう。
エプロンを外して、軽く洗浄魔法で乾燥まですると、畳んで長椅子に置いた。魔力はまだまだ残っている。疲れも全くない。
今かなと扉を開けると近くにジンがいたので、飲みきったグラスを渡した。「ごちそうさま!また来るね」と言って、スススと厨房を出た。
後ろから「ありがとう」と料理長の声が聞こえた。
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『古書店の猫は本を読むらしい。』も、スローペースで連載中です。こちらもどうぞよろしくお願い致します。
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