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林檎のロロさん  作者: Tada
53/151

53個目

ブクマ・評価・いいね、ありがとうございます。



 トムに作ってもらったヘアピンは、明日から使うことにした。一番は、やはりレイラに。

 コイルに小瓶をもらってヘアピンを入れた。そのまま魔法鞄に入れておく。ヘアピンの代金を払おうとしたら、レイラにはプレゼントで自分から渡すし、ロロの分は試作品だからと言われた。パンも朝食にするから、逆にありがとう、と言われてしまった。

 地下通路を歩き、階段でそのまま二階へ上った。代表室からユルが出てきたところだった。


「ユルさん、おはようございます」

「‥‥‥おはようございます、ロロさん」

「昨日はありがとうございました」


 魔法鞄のお祝いとしてもらった、鶏挽き肉入り蒸し饅頭と揚げ饅頭はまだそのまま減っていないが、欲しい時・必要な時に食べようと思う。ユルは少し微笑んで、どういたしまして、と言った。


「‥‥‥明後日、早朝から王都に行くことにしました。鑑定が三日間出来ないので冒険者の方にご迷惑おかけしますが」

「そうですか。ケルンさんも一緒に?」

「‥‥‥はい。乗合馬車ではなく、祖父の知り合いの冒険者の方が二人護衛も兼ねて、馬車を借りて行くことになりました」


 それならば、安全性も高まるし、しっかり予定を組めば休憩も出来る。


「気をつけて、行ってきてください」


 ユルが三日間も居ないのかと思うと、少し寂しくなるが、その間も自分の出来ることを頑張ろうと思った。


「‥‥‥はい。では、掲示板に明後日から三日間は鑑定が出来ないことをお知らせしなくてはいけませんので」


 ユルは階段を下りて行った。


「なんだ、やっぱり寂しいか?」

「うわ、びっくりした」


 カイが後ろからロロの頭に顎を乗せて言った。


「うん。でも、良い方向なんだよね?」

「お前は時々親みたいな目線になるな」


 笑って頭を撫でて、一緒に代表室に入った。


「おはよう、マルコさん。昨日はありがとう」

「お、おはよう!ロロちゃん」


 今日のマルコの服は、久々にワークジャケットにカーゴパンツだ。色は髪色と同じ胡桃色だった。


 いいな、胡桃色。次の服はこの色に染めてみようかな。


「紅茶入れておくからね」

「どこかに行くの?‥‥‥あ、もしかして」

「うん。これから、ゲイトさんのところには俺が行くね。何か伝えたいことある?」

「ううん、私はいい。この前にお話ししたから。マルコさん、気をつけてね」

「うん、ありがとう」


 マルコは給湯室に紅茶を入れに行った。


「ユルさんとゲイトさん、王都で会えるかな?」

「いや、ユルは王都にほぼ一日しか居ないから、難しいだろうな」


 ユルにはもう少し実家でゆっくりしてほしいが、今回は急な話だったから仕方がない。今回のことがきっかけで、また調整してしっかり休暇をとって王都の実家に行けたらと思った。

 マルコが紅茶を運んできた。


「ロロちゃん、どうぞ」

「ありがとう。マルコさんこれ良かったら」


 紙袋に入ったチーズパン二つを渡した。


「パン屋さんに行ってきたんだね、ありがとう」


 マルコは自分の魔法鞄にパンを入れた。

 

「それじゃ、行ってきます」

「頼むな」


 マルコがロロに手を振って、代表室から出て行った。

 ロロはディーノに挨拶してくると防音室へ行き、またすぐに戻ってきた。


「カイさん、寂しい?」

「ん?静かでいいぞ?書類仕事が溜まってるからな。一気にやるよ」

「私は、料理長たちの所と、掲示板を見てこようと思う」


 冒険者としてこのまま生きていくのか、まだ迷っていた。もし、好きに生きていいと言われたら困るかもしれない。

 前世ならロロの年齢は、高校・大学・就職を順に考えるものだ。


「そういえば、マルコに何か言っただろ?今朝は機嫌が悪かった」

「ん?なんだろう?」


 昨日は‥‥‥あ、これ言ったらヤキモチ焼くからダメなやつだ。ロロはマルコと手を繋いで歩いたことは黙っておくことにした。


「あ、マルコさんの貸部屋がバインバイン通りの近くだねって言った話かな?そこが近いから南地区に住んでるんじゃないよって言ってた」

「それだな」


 マルコが『勘違いされたくないから、早く出たいんだよ』と言ってた理由がわかった。今まで気にせず住んでいたくせに、と思う。


「別に独身なんだからバイーンなお姉さんの所に行ったって怒られないよ、って言ったんだけど」

「十五歳の女の子にそれを言われたのか‥‥‥」


 早く手配してやるか。


 以前、元冒険者の家具職人の先輩に、頼み込んで食堂をカフェに格安リフォームしてもらった。たまに飲みに来るが、そうそう会えない。


「仮眠室二つあるだろ?リフォームして住みたいってマルコが言うんだよ」

「リフォーム!いいなぁ。私も手伝いたい!」

「そうか?確かにお前は好きそうだもんな」


 大会議室も使わないな。俺がギルマスになってから、一度しか使っていない。いや、ロロが小さい頃に探検に使ってたか?‥‥‥それくらいだ。今は会議が必要なら防音出来るようにしてカフェを使えばいい。


「ロロ、お前なら大会議室はどう思う?」

「あの広い部屋?うーん‥‥‥」


 ロロが考え込みながら、リュックからチーズパン二つを出した。


「とりあえず、考えながら朝食いい?」

「最近ここがカフェみたいになってる気がするな」

「おひとつどうぞ、それから」

「ホワッとか?」

「いえ、元々焼きたてのなので、少しこんがり」


 カイが微弱火力魔法をかける。少しこんがり‥‥‥と。

 チーズが少し焼けるいい匂いがした。


「美味しそう!食べようカイさん」

「ああ」


 昨日、ロロがダンジョンまで行くと言った時に、カイは迷った。事情が説明できて、若くても冒険者であるロロに、ギルマスとして頼むことも必要だと。

 今回はマルコが反対して、自分が行くと言い出したのでそうしたが。 


 『過保護も大概にしろよ』


 ゲイトに言われたことを最近何度も考える。過保護。

 皆、どうしてもロロに過保護になってしまう。メイナだって、その年齢ではマルコと冒険者として活動していた。


「美味しかった。ごちそうさまでした」


 パンをこんがりしただけで幸せそうに笑う。

 可愛いんだから、仕方ないじゃないか。それに、メイナと結びつけてくれた天使だぞ。


「あのね、カイさん」

「ん?」

「仮眠室二つはそのままで、大会議室をマルコさんの部屋にリフォームしたほうがいいと思う」

「‥‥‥それは、ディーノがこの先どうなるかわからないからか?」

「うん、もしこのままギルドに残ることも可能性として考えたら、仮眠室は残しておいたほうがいい」

「お前の考えをマルコが帰ったら伝えるよ。でもあいつの部屋には大会議室は広すぎないか?」

「部屋を二つにしてもいいけど、お嫁さんが来るかもしれないよ?」

「ん?マルコに?」


 結婚?一生独身でいそうな気もするけどな。


「カイさん、人生なんて、いつどうなるかわからないよ」

「‥‥‥ソウデスネ」 


 この若さでいろいろあったロロの言葉は説得力があって、カイはすごく納得した。




 代表室から出たロロは、一階のカフェに顔を出した。

もう開店の時間だ。カウンターに座り、蜂蜜レモン水を注文した。まだ客は誰も来ていない。先程の、新メニューと今後のカフェの相談の話を、聞くなら今かと思っていた。


「いらっしゃい、ロロ。チーズケーキ作ったんだが、食べてみてくれよ」


 ジンが、キレイな焼き色のチーズケーキを持ってきた。今日はチーズの日だな、とロロは笑った。ちょっと甘いが、蜂蜜レモン水にも合う。


「いただきます」


 濃厚なタイプだ。よく冷えていて、うんまい。


「美味しいよ、ジンさん。コーヒーとかアイスコーヒー飲みたくなる。ケーキも、テイクアウト用に販売すればいいのに」

「アイスコーヒー?テイクアウト?」

 

 そういえば、ガルネルにはケーキ屋がないな、とロロは思った。いつでもジンが作ってくれていたから、うっかりだ。チョコレートやマカロンなどの王都の菓子は、マルコが特定の商人から買い付けているようだ。

 ドットがカウンター越しに説明を求めた。


「ロロ、順番に、まずアイスコーヒーから」

「冷たいコーヒーです」

「テイクアウトは」

「持ち帰り用の販売です」


 料理人たちは「えー」と言うが、そのままなんだってば。

読んでいただきありがとうございます。

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