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林檎のロロさん  作者: Tada
50/151

50個目

ブクマ・評価・いいね、ありがとうございます。

50個目になりました。

これからも、どうぞよろしくお願い致します。

 


 鶏肉の唐揚げのお肉はモリーの精肉店から、香り袋のお礼にくれたらしい。料理長のおかげで美味しいお肉がよりジューシーだ。


「アツアツ、おいひい」

 

 皆は、ロロがアフロから元に戻って、ちょっとガッカリしていた。マルコが二階から下りてきて「え?何かあったの?」と思うほど、咀嚼音が響く食事会になっていた。


 ダイニングの客はすでにいなかったので、厨房の簡単な片付けをした料理長たちも、追加の料理と共にテーブルに来た。ガーリックトーストと、クラッカーに生ハム・スモークサーモン・クリームチーズを乗せたカナッペが並べられると「おぉ!」と盛り上がった。


「スゴイ!オシャレ!」

「俺が作ったッスよ、ロロ」


 テンが嬉しそうに言った。今日は、唐揚げだけ料理長が作り、他の料理はテンが作ったそうだ。


「時々みんなとこうやって食べられたらいいのに」

「良いですねぇ、私もロロさんとこうしてお食事したいですよぅ」

「そうね」


 レイラは髪を紐で結んでいた。明日はヘアピンが出来る予定だから、喜んでもらえたらいいなと思った。

 

 ああ、カナッペも‥‥‥うんまい‥‥‥。


「月に一度、こうやって報告会みたいにする?」


 マルコの提案で、カイも「いいな、そうするか」と言った。それから、視線をレイラとリリィに向けた。二人が立ち上がって、窓と入り口に魔石付きリースを飾った。今から飾り付け?と思っていたら「静音効果の魔法道具よ」とレイラが戻ってきて説明した。外には何となく微かな話し声が聞こえるくらいになるらしい。

 カイがこちらを見ているのがわかった。マルコもユルもだ。そろそろ話を、ということだ。


「皆さんに、食べながらお話があります」


 ロロは手を挙げて、皆の顔を見た。レイラも、リリィも、ドットも、テンも、ジンも、真っ直ぐにロロを見ている。アフロじゃ格好つかなかったから、戻ったのはタイミングとしては良かったなと、ロロは苦笑いした。


「前の魔法鞄が使えなくなったのも、私の魔力の変化も何となく知ってると思うけど‥‥‥私は、前世の記憶を持っている、異世界転生者です。不思議なことに、受付カウンターの角に足の小指をぶつけた拍子に思い出したっていう、ちょっと間抜けな話なんだけどね」

 

 誰も、何も言わず、何も言えず、静かにロロの話を聞いた。

  

「そうは言っても、転生前の自分の名前も思い出せない、まだ中途半端なものなんだけどね。とりあえず、日本という国に生まれて、孫がいて、おばあちゃんになるまで生きて、死んで。そして、この世界に生まれたの。マルコさんとメイナさんに見つけてもらうまでの記憶はないんだけど」


 ロロは、皆一人ひとりの顔を見ながら話すと、次第に、何か言いたそうな顔をし始めたので、ロロは考えて「質問は挙手でお願いします」と言った。


「はい!」

「はい、リリィさん」

「旦那さんはどんな人か覚えてますか?」


 カチャ、カシャン。所々でカップや食器の音が鳴った。


「うーん、残念ながら覚えてない。でもたぶん早くに死んじゃったのかも」


 因みに、孫の名前は名菜ちゃんで、リリィの前で白目になった時に思い出したのはそれだと言ったら、「あの時ですかぁ!」と興奮した。


「はい」

「はい、レイラさん」

「時々おばあさんみたいなことを言うのは、そのせいかしら?」

「ぐふぅ‥‥‥!」


 ダメージを受けたが、「たぶん、そのせいです」と答えた。レイラは納得したようだった。納得されて、またショックを受けた。


「はい」

「はい、ドット料理長」

「料理やスイーツの提案してくれたのは、前世の料理か?」

「思い出す前だけど、今思えばそうかも。でも、料理はとてもよく似ているの。魔法がない、魔物がいない世界だったんだよ」

「そうか‥‥‥そんな世界があるんだな。また教えてくれるか?俺たちは、お前が望むものを作りたいし、もっと料理を知りたい」

「うん、喜んで。ありがとう」


 今日の料理は、前世でも居酒屋やパーティーで食べていたから懐かしくて嬉しかったと言ったら、テンが泣きそうになっていた。


「はい」

「はい、ジンさん」

「アップルパイ食べるか?」

「いただきます」


 ジンはいつも通りだった。




 * * * * * * * * * * *




 マルコがユルとロロを送りに行った。

 食事会後のダイニングと厨房では、テンとジンが二人で忙しく片付けをしていた。皆よく食べて、ロロを中心に楽しく終わった。


 料理長のドット・レイラ・リリィは、代表室にいた。


「防音室に入ってもらう。ロロの転生の話はするな」


 カイが三人を案内すると、美しい金髪の青年がソファーに眠っていた。ドットは、近くで見るのは初めてだった。


「ギルマス、彼はずっとこのまま寝ているのか?」

「ああ、二週間ほどこのままだ。身体の時間は止まっているが、こちらの話は聞こえているそうだ」

「そうか」


 レイラとリリィが顔を顰めているのを、カイは苦笑いで見ていた。「やはりこっちで話そうか」と防音室を出て、代表室のソファーに座るように言った。この部屋にも、魔石付きリースが飾られていた。

 マルコがいないので紅茶が出せないなと思っていたら、ドットが、持っていた食品収納袋(マジックバッグ)から、オリジナルブレンドティー入りマグカップを四人分出した。


「ありがとう、先輩」


 香ばしい風味がする、紅茶とはまた別のスッキリするお茶だった。ロロの提案で出来たお茶だと言うと、レイラとリリィの表情が和らいだ。


「さて、俺の話をまず聞いてほしい」


 カイは、白い髪の少年シロの話から、昼にロロたちとの推測の域を出ない話を、全て話した。さすがにレイラもリリィも、青年の正体と、ユルやロロとの妙な繋がりに、驚きを隠せなかった。


「なるほど。複雑な事情と推察した」


 まずは、ロロのことを知ってもらった上で、皆に秘密の共有をしたいと思ったことを、正直に言った。


「今日はいろいろと話していただけて良かったです。ロロちゃんのことは素直に嬉しいです。それから、彼の性格の歪みの原因がわかれば、怒りよりも憐れに思いますね」

「金色さんが目覚めてから、シロさんが来るまでどうしましょう?」

「王族として扱わなくていいと言われていても、あの性格だからな」


 カイもまだ、彼をどうするべきかと悩んでいた。


「俺もマルコも、ロロも、彼にはなるべく話しかけるようにしている。朝は挨拶からな。ロロなんか、俺たちに髪型を笑われた愚痴をこぼしていたぞ」

「ははは!」

 

 堪らずドットが笑った。レイラもリリィも、彼女らしい行動を想像しながら微笑んだ。


「私たちも、時々そうしても?」

「あぁ、頼むよ。ただ、威圧だけはやめてくれよ?」


 レイラが少し赤くなって「わかっています」と恥ずかしそうに言った。

 

読んでいただきありがとうございます。



『古書店の猫は本を読むらしい。』も、スローペースで連載中です。こちらもどうぞよろしくお願い致します。


https://ncode.syosetu.com/n5529hp/

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