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林檎のロロさん  作者: Tada
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48個目

ブクマ・評価・いいね、ありがとうございます。



 メイナとナナシーが帰り、代表室にユルが来て、いよいよ魔法鞄(マジックバッグ)の持ち主登録をすることになった。

 ロロの髪型を三度見したユルに、カイとマルコは吹き出しそうになったが堪えた。

 マルコに預けていた灰赤のワンショルダーリュックを受け取った。鑑定前のユルはわかっていないようなので、マルコが説明した。


「ユルくん、これレッドドラゴンの革だよ」

「‥‥‥レッ!‥‥‥よ、良い色ですね」

「ふふ、ありがとうございます」


 ユルの混乱が色々と凄いようなので、一先ず四人でお茶を飲むことにした。カイは愛娘とのデートでリフレッシュ出来たのか、最近の中で一番顔色が良かった。日々成長していく娘の可愛さと健気さに感動したらしい。三人が温かい目で紅茶を飲んでいる。


「ロロ、メイナはどうだった?」

「あんまり驚いてなくて、むしろ納得してたよ」

「納得?」


 メイナが出産してからナナシーの子育てを手伝っていたロロに、時々母親か義母がいるような頼もしさを感じていたようだった。


「前世を思い出す前でも、婆さんっぽいのが出てたのかもな」

「まあ、時々変な落ち着きをみせるよね」

「‥‥‥確かに」

「なんか複雑なんですけど?」

 

 ユルがもう大丈夫そうなので「さ、そろそろ始めるか」と、カイは合図してマルコにティーカップを下げてもらった。


 眼鏡をはずし、ワンショルダーリュックを手にしたユルは「‥‥‥素晴らしい、完璧です」と、メリーとザックが作った魔法鞄を称賛した。ポケットを増やしたことも斬新らしい。

 ロロが黄土色のリュックに付いていた林檎の形のピンバッジを、魔力を流しながら新しいリュックのタグに付け留め具で固定した。

 ユルが鑑定をして、ピンバッジの定着と魔法鞄の持ち主がロロになったのを確認した。

 

「ギルドカードに登録してこい」

「行ってきます!ユルさん、ありがとうございます」


 フワフワのロロの髪型が気になるのか、今日の青碧の瞳はやや視線が上方向だ。アフロに向かって「‥‥‥どういたしまして」と答えていた。


 受付にレイラがいたので、新しい魔法鞄をギルドカードのデータに追加してもらった。

 もしもの時の魔法鞄の受取人は、前と同じようにカイたち家族にしてほしいとお願いした。

 ロロはデータ追加されたギルドカードを受け取り、「良い色の魔法鞄ね」とレイラに褒められて、また代表室に戻った。


 テーブルには、ランチが用意されていた。


「どうぞ、ロロちゃん」


 マルコが昨日ロロを見送った後に【カルーダンのパン】で買った、サンドイッチとロールパンサンドだった。

 ロロが渡した香り袋のことで、マルコは精肉店とパン屋に話しに行った。守り袋の効果があることは、精肉店のモリーは気がついたようで、誰にも言わずに大事に持つことにすると約束した。パン屋の夫婦は、普通にロロの手作りを喜んでいただけのようで、守り袋と知り驚いていた。こちらも、誰にも言わないと約束してくれた。サンドイッチとロールパンサンドはその時に購入した。


「美味そうだな、食べよう」

「ロロちゃん、パン屋のご夫婦がまた来てくれって言ってたよ」

「うん、明日行く」


 もう魔法鞄があるから、白パンを多めに予約しようと思っていた。

 食事をしながら、カイに黄土色のリュックについて話した。ザックにお財布を作ってもらうことになったと言った。


「そうか、良かったな。お前にあげたものだ。お前の好きにしていい」


 ユルは何も話さなかったが、穏やかに話を聞いていた。

 マルコは、タイミングを考えているようだった。ロロは遠慮してるのかなと思い、こちらから話を切り出した。


「マルコさん、さっき私にしてくれた話で、気になるところがあったんだけど」

「ありがとう、気を遣わせてしまったね、ロロちゃん。カイさん、ユルくんにも聞いてもらいたいんだけど‥‥‥」


 マルコは、メイナと行った第五騎士団の依頼の時のことを話した。

 【記憶失くしの森】で第五騎士団に合流する際に、副団長のサイラスの様子と騎士団の中で情報の混乱があったこと。子供の持ち物と言われていた懐中時計が、誰の物か結局わからないまま、出所も未だにわからないこと。


「たぶん、すでに王都で鑑定士に依頼しているはずなのに、何も結果を報せてこないのは、わからなかったってことだよね?」


 マルコが、ジルニール団長は持ち主が現れなければ鑑定士に依頼も考えると言ったことを、ロロに説明していくうちに思い出したのだと言った。


「‥‥‥あの、王都でしたら、私の両親か兄たちが引き受けた可能性は?」

「あるかもしれないな。あぁ、ゲイトさんがまだ居てくれたら良かったな。王都で団長に会うと言っていた。まだダンジョンにいるだろうか」

「今日、冒険者の中でダンジョンに行ってる人がいるかもしれない。換金に来た冒険者がいたら、受付でゲイトさんに会ったか聞いてもらおう」 

「‥‥‥今、私が伝えてきます。お話を進めていてください」 


 ユルが立ち上がり、代表室を出た。


「カイさん、私はね、懐中時計の持ち主がディーノさんじゃないかと思ってる」

「‥‥‥!」


 ディーノの年齢が二十歳なら。七年前の十三歳の出来事がロロと同じ日だったとしたら。


「忘れられたディーノの持ち物だとしたら、鑑定結果がどう出たかわからないね」

「待て、団長は帰る前に何かモヤモヤするって言ってなかったか?」


 騎士団の混乱が、ディーノについての記憶が突然消えたことなのだとしたら。


「そもそも辺境伯領での演習ではなく、連れ去られた第二王子を探していたのかもしれないよ。本当は俺たちに彼を探してもらおうとしてたとか?」

「ますます、それが真実に思えてくるな」


 カイとマルコが頭を抱えている。ロロはロールパンサンドを食べながら、二人の話を聞いていた。


「でも、懐中時計は手元にないし、ディーノさんの目が覚めないとわからないよね?」

「「そうなんだよー」」


 ロロが言ったことで、今度は二人とも肩を落とした。


 ノックの後にユルが戻ってきた。ダンジョンに行った冒険者が来たらゲイトのことを聞いて、会った者がいたら連絡が入ることになった。


「‥‥‥あの、しばらく予約の鑑定依頼がないのですが、調整して、もし三日いただけましたら王都に、実家に行っても構いませんか?」


 ユルは、ガルネルに来てから一度も王都の家に帰っていないので、カイもマルコも驚いた。


「ユルくん、ご実家に懐中時計と子爵の話をしに行くの?」

「‥‥‥はい。良い機会かもしれません。帰ったら祖父にも相談しますが‥‥‥、私も一歩踏み出してみたいのです」


 ユルがロロを真っ直ぐに見て微笑んだ。

読んでいただきありがとうございます。

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