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林檎のロロさん  作者: Tada
44/151

44個目

ブクマ・評価・いいね、ありがとうございます。



「あれ?ロロちゃんは?」


 マルコが紅茶とチョコレートを運んで来ると、ソファーにはカイしかいなかった。


「不貞腐れて防音室」

「は?何で?」

「ディーノは笑わないから、だと」


 マルコが困った顔で紅茶を配った。

 ディーノにはあんまり近付きすぎないようにしてほしいのが本音だが、そうもいかない。彼にも、いろんな人間がいることを知ってもらういい機会だからだ。

 マルコもカイも、今朝からディーノに話しかけるようにした。「おはよう」「今日はいい天気だよ」と挨拶から始めた。毎日続けてみることにした。

 

 さて、ロロちゃんは青年にどんな話をしているのかな?俺たちに笑われたって、文句を言ってるかもしれないな。


「本当に、目が離せないというか、可愛いよね」

「‥‥‥」


 マルコがカイの反応を待っていたら、ロロが戻ってきた。


「あー、スッキリした!」

「お前、防音室をトイレみたいに言うな」

「ロロちゃん、メル・ジュエルのチョコレートで許して」

「許します」

「ロロ、こっち来い」


 ポフンとカイの横に座ると、紅茶とチョコレートを食べ始めた。カイがフワフワの頭を撫でる。もぐもぐしながら、露草色の瞳がカイを見上げた。


「うん、確かに可愛いな」

「でしょ?フワフワした妖精みたいだよ」

「お前、笑ってたよな?」


 カイが何故この頭になったのかを聞いた。

 昨夜、髪を温風で乾かそうとして、折角なら潤いと艶を出そうと上乗せしたらこうなった、と説明した。たぶん二十四時間で戻るはずだ、と。

 それと、カイに言われた通りに鏡を見て今日もお疲れさ魔法(マッサージ)をしてみたら、薄紫色コーティングのアフロが映っていたと言った。マルコがまた吹き出しそうになるのを我慢していた。


「青と赤と白の魔力が混ざって、身体を巡るとそうなるのかな?」

「器用なやつだな。それで、ギルドカードはどうした?」

「あ、更新したよ。時間がかかってたみたいだけど」


 ギルドカードをカイに渡した。


「‥‥‥全属性とは出なかったか」


 青・黃色の魔力、水・風・地・知、これは元々あったもの。赤・白の魔力、火・陽・治・浄、これが新しく追加か。黒・緑は、少なすぎて出なかったか?


「リリィとレイラは、なんて?」

「カードを見た時は少し固まってたけど、褒めてくれたよ」

「そうか」


 カイは、マルコにもギルドカードを見せた。


「へぇ‥‥‥ユルくんの鑑定眼のほうが凄いことがわかったね。あぁ、全属性って出なかったのは本当に良かった」

「ユル先生、やっぱり凄い人なんだね」

「ははっ、先生か。鑑定の後にそう言ってたな」

「‥‥‥」


 マルコは、ユルが前向きに考えると言った助手の件を思い出していた。落ち着いた性格のユルは、教えるのに向いているだろう。

 あぁ、考えることが多すぎるな、と苦笑いした。


「ん?来たか?」


 廊下から子供の笑い声が聞こえた。カイとマルコが止めたが、ロロは扉を開けに行った。


「ナナちゃん!メイナさん!」

「ロロちゃ‥‥‥ん?」

「‥‥‥ロロ?‥‥‥元気そう、だね?」


 二人の視線で、ロロ・アフロは今の自分の姿を思い出した。





 白いフリル付きワンピースと胡桃色の靴の娘の横に、デレデレの父親が並ぶ。


「じゃあ、俺とナナシーはカフェでデートするからな」

「とうさまとカヘでデートしてあげます」


 カイさん、してあげますって言われちゃってるよ。


「ナナちゃん、カイさんをよろしくね!」

「ナナシー、父様を頼むね」

「ナナシーちゃん、お父さんをお願いね」

「‥‥‥」

「おまかせください!」 


 ロロとナナシーがビシッと敬礼している。一緒に住んでいた時によく二人でやっていたな、と思い出した。ロロが料理長たちのマネをして、ナナシーに教えていた。

 カイは苦笑いで「じゃあ、行ってくる」と娘と手を繋いで出て行った。

 ロロが、ナナちゃんとデートいいなぁと思っていたら、メイナが「カイがいない日が一日置きであるから、泊まりにおいで」と言った。ディーノがいるため、カイとマルコは、交代でギルドに泊まるからだ。


「メイナさん、カイさん家に居ないと寂しいよね」

「ギルマスと結婚したんだ。そのくらいは大丈夫だよ」

「私がギルドに泊ま」

「「ダメ」」


 マルコが紅茶を入れて、ソファーにはメイナとロロが並んで、向かいにマルコが座った。三人だけで話すのは、いつ以来だろうか。


「さて、ロロ」


 メイナの紺青の瞳が優しく、子供の頃のロロを見ているようだった。


「私たちの話をしよう」




 * * * * * * * * * * *

 

 

 

「ロロちゃんは、かみがたをかえたの?」

「ん?」


 奥のカフェスペースで横並びで座る親子は、ジン特製のアイスクリームを食べていた。飲み物はナナシーがホットココア、カイがアップルティーのストレートだ。


「ロロは、魔法の練習をしているんだよ。失敗を重ねて上手になるんだ」

「ロロちゃんスゴイ」

「うん、スゴイな」


 それにしても、アイスクリームってこんなに美味しかったか?と、食べる機会が少ないカイは感動していた。


「そうだ、あの薄い生地で巻いた鶏肉のサラダ、美味しかったよ」

「ほんとう?おてつだいしたの!」

「ナナシーもスゴイな。また作ってくれるか?」

「はい!えへへ」


 照れながら、両手でココアのカップを持って、足をパタパタさせている。


「ナナシー、俺はしばらく忙しくて家に帰れない日がある。マルコと交代でギルドで泊まりの仕事だ」

「はい」

「メイナを‥‥‥母様を頼むな」

「はい、とうさま」


 聞き分けがいい娘で助かるはずが、我慢していることを考えると切なくなる。ごめんな、と言いかけたが、言葉を変えた。


「ナナシー、ありがとう」


 胡桃色の真っ直ぐな髪を優しく撫でると、嬉しそうに微笑んだ。

読んでいただきありがとうございます。

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