43個目
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「メイナ、明日はナナシーと来れるか?」
遅く帰ってきて直ぐに、カイが聞いてきた。
ロロと話す時間をとれるよう調整しておいてほしいと言われていたので、予定は空けるようにしていた。
「大丈夫だよ。昼前に行ってもいい?」
「ああ、代表室に来てくれ。ナナシーは俺とカフェでデートだ」
「ふふ、わかったよ」
「ナナシーの寝顔見てくる」
メイナは、軽食とお茶を用意してダイニングで待った。カイが二階から下りてくると、これからの話をした。
しばらくの間、マルコと一日交代で泊まりになり、ワケアリを預かることになったこと。その人物についてはまだ詳しく話せないこと。
「カイも兄さんも疲れてないか?」
「疲れた!だが、ロロがすごい魔法を考えてな」
身体が軽くなったと喜ぶカイに、メイナがふふっと笑った。
軽食は、小麦粉と卵とミルクで焼いた薄い生地に鶏肉とサラダを巻いたもので、すぐになくなった。
先日のランチでロロに教えてもらったものだ。夜食にすぐに食べられるものはないかと言ったら、生地の作り方と、鶏肉を焼いてサラダを用意して、それを生地で包んで、食品収納庫に入れておくのはどうか?と。
やってみたら面白くて、ナナシーもお手伝いしたいと喜んだ。
「これ、美味かったな」
「ロロに教えてもらって、ナナシーと作ったものだよ」
「最高だ。また頼むよ」
「私たちのランチにもちょうどいい。鶏肉を別のものにしても良いそうだ。あの子は、スゴイね」
マグカップのお茶を持って二人でソファーに寄り添って座った。
「明日は、七年前のメイナたちの話をして、ロロからの話も聞いてくれ」
「わかったよ」
「それから、しばらく家のこと頼むな」
「ふふ、大丈夫。心配性だね、カイ」
カイはメイナの胡桃色の髪を撫でてから頬に手を添えて、優しく口付けた。
* * * * * * * * * * *
疾風のロロ・アフロ!
ちょっとカッコイイけど、ただ急いでギルドに行きたいだけ。
朝起きたら、後ろが潰れて平べったいアフロになっていたので、再び濡らして温風!枯茶色の美しい球体の出来上がりだ。
なんだろう。クリスマスツリー感覚で飾り付けたくなる。花とか、ペンとか、入りそう。異空間に繋がっていそう‥‥‥。
とりあえず、服は何を着るべきだろうか。
いつもの砂色の上下を着て鏡を見たら、人間マッチ棒みたいになった。
もういっそ派手にしちゃったほうが、アフロが目立たなくなるのではないだろうか?
しかし、クローゼットを探しても派手な色など持っていなかった。
ならば、シックにオシャレにしよう。
白の丸襟シャツに白の太いリボンタイ、黒色のクロップドパンツ。これで行こう!
疾風のロロ・アフロ!
鍵を閉めたか確認に戻ってしまったので、本日二度目の疾走です。
案内人のC級冒険者ルッツは、全力で走ってきた丸い髪型の少女を二度見すると、話しかけられた。
「‥‥‥ルッツさん!早く、開けて!」
「スゴイな。そっくりな双子の俺がルッツだとわかるとは、君は何者だ?」
「扉!開けて!」
「君、名前は?ここは冒険者ギルドの」
「開けてってば!」
立ち塞がるルッツの腹にアフロ頭で突っ込んだ。
「うおっ、ちょっ、待っ、本当、誰っ?」
「うわあぁぁん!」
「だから!‥‥‥え?ロロ?」
「何で今日に限って双子のお尻にホクロがあるほう!」
「言うなよ!」
「リッツさんならわかってくれるのにぃ!」
ルッツはすぐに扉を開けてロロを入れた。
「その頭はどうしたんだ?面白すぎて笑えないぞ?ははは!」
「ぬうぅ!笑った!」
リッツより性格がちょっと意地悪なのがルッツだ。
涙目で睨みつけるロロが可愛くて、つい揶揄ってしまった。
「何だこのフワフワ。ちょっと触らせてくれ、どうなって‥‥‥」
「ルッツさぁん、女の子に触る案内人は失格ですよぅ?」
いつの間にか背後にリリィが立っていて、ルッツはビクッとなった。
「リリィさん、いやコレは‥‥‥」
「リリィさーん」
「はーい、ロロさん。さぁこちらに行きましょうねー」
「‥‥‥」
ルッツは「フワフワ触ってみたかった」と、切ない気持ちで仕事に戻った。
「ロロさんは本当に可愛い人ですねぇ。ありがとうございますぅ」
「ん?何が?」
リリィは、丸い頭のロロがフワフワおもしろ可愛いくて、とりあえず感謝した。
「あらあらあら、まあまあ!」
レイラが頬を赤くして近付いてきて、フワフワの髪に触れた後、おでこにチューした。
「???」
「なんって愛らしいの!」
「レイラさん、ズルいですよぅ!」
リリィには頬ずりされた。ロロがハッとした。
「まさか、アフロは女子にモテるのか?」
「「あふろ?」」
「あ、ギルドカードの更新お願いします」
「了解ですぅ」
受付にあるギルドカードの認証機にカードを入れた。認証機の上に透明な魔石が付いている。ロロが、魔石に手を乗せると更新が始まって魔石が光り、終了すると消える。これをするのはカード発行の時以来だ。ロロは緊張して消えるまで待った。
「‥‥‥ちょっと時間がかかってますねぇ?」
「更新情報が多いのかしら‥‥‥」
こそっと二人で話していた。ロロが不安そうにしている。
「ロロさん、今日の夕食会のメニューが楽しみですねぇ」
「う、うん」
「大丈夫よ、何も心配いらないわ」
「‥‥‥ありがとう」
やがて、光が消えた。
リリィがカードを出して確認する。固まっているリリィに気付き、レイラが覗き込む。
「あの、やっぱり‥‥‥変なの?」
「「!」」
リリィとレイラがハッとして、また笑顔になった。
「データ更新完了よ」
「スキルアップ素晴らしいですよぅ!ロロさん!」
「ありがとう!えへへ」
二人にお礼を言って、カイさんのところに行ってくる!と嬉しそうに走って行った。
「驚きましたよぅ、レイラさん」
「属性が増えてたわね。認証機でわかるのは限度があるけど、ギルマスたちが心配するわけね」
それにしても、あの髪型は、そう見えないほどフワフワしていて可愛い。抱きしめたくなる。
思い出しては溜息を吐く二人の美女に、ギルドに来た冒険者たちはドキドキして、しばらくザワついた。
「ロロです」
ノックして名前を言うと「どうぞ」と声がした。マルコの声だ。少しだけドキドキした。
「ぷっっは!」
「くっ、ロロ、何だその‥‥‥」
ロロは黙って扉を閉めた。自分がアフロなことを忘れていた。
「おはようございます」
「やめろ、その髪型で死んだ目をするな」
「こ、こう、紅茶ぁぁ!」
マルコが給湯室に逃げた。
「ちょっとディーノさんのところに行ってくる。笑わないし、あの人笑わないし!」
「お、おう。‥‥‥すぐ戻れよ」
ロロは、防音室にいるディーノのところに行った。
昨日から変わらず静かに眠る金髪の青年に、ひたすら愚痴をこぼした。
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