42個目
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※途中からマルコ視点です。
シャワーの後に、綿布で身体を拭いたあと頭にクルクル巻いて、部屋着を着る。ストンと膝下まで長いワンピースだ。
髪を乾かしてみよう。
今までもやってきたのだが、ただの微風だった。もうちょっと赤の魔力を使って温風にしたい。
変身魔法が上達したのは、前世を思い出してからだ。そこで温風を思いつかなかったのは、出来ると思わなかったから。
魔力を知る必要があるな。勉強しよう。
あと、感情も不安定だな。思春期は関係ある?
今日、マルコに大扉を出るまでエスコートしてもらって、「ロロさん、イケメンにエスコートされております!」と脳内実況していたが、帰ってからしっかり思い出して、恥ずかしさで真っ赤になって、床で悶え転がっていた。
日本人で生きてきた私にはいろいろとハードル高いよ、異世界!
とりあえず、それはこっちに置いといて。
折角なら、髪に潤いも残したい。
青は水と風だから多め、赤は温めるために少なめ?ちょっと白も必要かな?‥‥‥あれ?今日もお疲れさ魔法に近い?
でも、あれは風は使わないから同じじゃない。イメージは大事。前世で使ってたドライヤーの感覚にちょっと上乗せして。
潤艶温風魔法!
モワッと、ふんわりした。
鏡で確認すると、漫画みたいなアフロになっていた。
「Oh‥‥‥」
コレ、ドライヤーチガウ。
イメージ、どこで間違えた?
え、これ戻るよね?
やだよ?二十四時間このままなんて。
これで、魔法鞄の登録とか、皆様にご報告とか。
転生者です。嘘だぁ〜!ってなるよね?
もう一度髪を濡らしてみた。
ダメだ。終わった。
なぜ、今日実験してしまったんだ、私。
時間を戻してくれぇぇ!
泣く泣く温風で乾かし、カイに言われていた今日もお疲れさ魔法を鏡の前でやってみた。
「今日は、弱めにしておこう」
鏡に映る、薄紫コーティングのアフロを見て、遠い目をした。
「‥‥‥寝よ」
* * * * * * * * * * *
「マルコ、後は頼むな」
ディーノが防音室にいることによって、カイとマルコが交代で泊まることになった。カイはメイナに明日のことで話があるので、今日代表室に泊まるのはマルコになった。
「何か変化やトラブルがあったら‥‥‥」
「ピアスがあるから問題ないよ」
代表のカイが普段からしている紅玉のピアスの片方を、マルコが持っていた。何かあったら、カイにチリっとした痛みがきて、すぐにわかるようになっている。カイの魔力が必要なので、日中はカイがまた装着する。
「もっといい手段はないかな。ロロの前の世界ではどんなものがあったんだろう」
「ロロちゃんにアイデア出してもらって、トムさんに相談するか。このピアスはケルンさんに作ってもらったんでしょ?」
「ああ」
ユルの祖父がまだギルドにいた頃に作ってもらったピアスだ。
「しばらくは、これでなんとかしよう。じゃあ、明日な」
「お疲れさま」
カイが帰ると、マルコはソファーにクッションとブランケットを持ってきた。
この先これが続くとしたら、仮眠室を改装して部屋を作ってもいいかもしれない。借りてる部屋を出て、ここに住むことも考えた。独り身だからどうにでもなる。プライベートはなくなるが。
「青年の様子を見に行くか」
防音室に入ると、ディーノは変わらぬ姿で眠っている。身体の時間が止まっているから、そのままで大丈夫だと言っていたが。
声は聞こえるらしいけど、どんな魔法なんだ?
下手したら、犯罪に使われる魔法だ。男でもディーノほど美しい男なら、襲われる可能性がある。それほどシロはこちらを信用してくれているのか。
マルコは、青年に何も変化がないことを確認したら、洗面台で顔を洗い、歯磨きをしてソファーに横になった。朝になってカイが来たらシャワーを使わせてもらうつもりだ。
目を閉じると、少女の顔が思い浮かんだ。
今日は、手を重ねてロロの反応をみた。
少し動揺していたようだが、それだけだったように思う。
今までは、頭を撫でるくらいのスキンシップはしていたが、十五歳の年相応の恋が普通に出来るのか知りたくて、一歩踏み出してみた。
ゲイトやユルには憧れはあるようだが、まだ恋とは考えられない気がする。
「どうしたもんかなぁ」
この役は、カイには無理だ。彼は、父親として嫌われたくないと思っているし、嫉妬するから、ロロの恋愛の背中を押してやれない。
自分もメイナも、彼女を見つけた時に、何らかの運命を感じていた。ロロを連れてきた責任があるとも思っている。
自分はもともと結婚願望は他人よりない方だから独身でいたが、この先あの子が一人でいるなら、彼女との結婚も考えていた。
だが、ロロは前世を思い出した。孫がいるほどの年齢だった女性だ。恋を知らない少女ではない。
もし、出来るなら、好きな男と恋をしてほしい。
自分に恋をしてくれていたら、それでもいいと思っているが、ロロはまだ十五歳だし、もう少し様子をみるしかない。
ユルは王都で女性に酷い目に合っているから、時間がかかりそうだが、真面目だし、アリだ。
ゲイトは‥‥‥ちょっと危険な香りがするし、年齢もギリギリ‥‥‥アウトな気もするが、人間性では、アリだ。
「‥‥‥ディーノは、ないよな?」
心配で眠れなくなってしまった。
読んでいただきありがとうございます。




