30個目
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今日もお疲れさ魔法が出来るようになって良かった。寝る前にしっかりすることで、次の日の朝が違う。
「身体が軽い。素晴らしい」
ベッドの中で感動しているロロは、これも属性が増えたからなのかと考えた。
これは青と赤と白の魔力を使っているのかな?
血液の流れに合わせて身体を温めながらゆっくり疲れた身体を巡り癒す。
なんでそんなことも考えなかったんだと、昨日までの自分を情けなく思った。
自分は、ロロは、客観的に見て幼いと思う。スタートの八歳が記憶なしだったから、十五歳の今は精神年齢は十歳から十二歳くらいかもしれない。
前世を思い出して、今はごちゃごちゃな感情になっているが、そのうち実年齢に心が追いつくようになるだろう。‥‥‥たぶん。
昨日は帰ってから物作りに夢中になってしまった。肩が凝ったのは久しぶりだ。
出来上がったのは小さい香り袋。生成の布をチクチク縫って、小さい巾着袋にして、細いリボンを通して。大きいプランターで育てたローズマリーをカットして防腐魔法をかけ、ひとつひとつ袋に入れてリボン結びをした。テーブルに巾着袋の山が出来た。
「調子に乗ってたくさん作っちゃった。ギルドのみんなは深紅のリボンね」
寝ようとして、ふと、料理長たちのT・J・Dマークの魔法袋を思い出した。染料を出して巾着袋の右下に小さくカタカナのロロと書いた。
「四角が二つみたいなった!ふふっ」
誰もカタカナはわからないから、聞かれたら「これは四角です。四角が好きなのです」と答えればいい。ふふふ。ふふふふふ。
そうして、睡眠時間を削ってしまったのだった。
灰赤のノーカラーシャツとワークパンツに着替えていつもの支度を済ませ、手提げ袋に香り袋を入れて、「火の元よし!」と出発した。
先ずは【カルーダンのパン】だ。お店の開店時間は午前七時なので、そろそろ開くはず。
「あら、おはよう!今日は早いのね」
「おはよう!カルーネさん。職人さんが手軽に食べられるパンってどれ?」
「ロールパンサンドが二種類あるわよ。ポテトサラダとベーコンエッグ」
「三個ずつください」
紙袋に入れてもらって支払ったあと、香り袋の青色リボンを二つ渡した。
「これ、作ったの。いつもありがとう!」
「ロ、ロロちゃん!あなた、あなたー!」
「え」
カルーネの大声に、厨房のダンノが「どうした!」と飛んできた。私からの香り袋を貰ったと泣いて喜ぶカルーネに、ダンノが貰い泣きするという、渡した本人ドン引きの朝のひと時だった。
【ローラン精肉店】はまだまだ開かないので、モリーへ用意したメッセージカードを付けてポストに入れた。
ギルドの大扉には、テンが立っていた。鈍色のタクティカルシャツとパンツは冒険者時代の物で、少しキツそうだがいつもと違うスタイルで頼もしい。
「おはよう、ロロ!」
「テンさん、おはよう!今日も案内人誰もいないの?」
「いや、たぶん八時になったら交代ッス」
「そうなんだ。あ、これ作ったの。いつもありがとう」
深紅のリボンの香り袋を渡した。テンは、涙目で震え始めた。「大事にするッス!」と敬礼した。みんな、ちょっとオカシイからね?
受付にはリリィとレイラが二人揃っていた。
「ロロさん、おはようございまーす」
「おはよう、ロロちゃん」
「おはよう!レイラさんリリィさん。受付は八時からだよね?早くない?」
「ロロさんが朝一番に来るって言ってましたからね!レイラさんも私も会いたかったんですよぅ」
「うそ、モテ期?」
でも、若い男性冒険者にぜひ言ってあげてください。すごーく頑張れると思いますので。
「何となくだけど、今日カイさんたち忙しいんでしょう?これ、みんなに作ったの」
深紅のリボンの香り袋を多めに渡した。
「ローズマリーね?良い香り。とても可愛いわ。それに‥‥‥」
「す、スゴイです!私めも、いいんですかぁ?」
「う、うん。いつもありがとう」
二人とも目がウルウルしてる。どうしてみんな興奮するの?‥‥‥私、これに変な魔法使ってないよね?夜中に作るのやめたほうがいいかな。
「ロロさん、あの、これって香りの他にも、効果が?」
あ、そうだ。言うのを忘れてた。
「うん、魔除け」
二人がギョッとした。それからニコニコと作り笑いになった。怖い。
テンにはさっき渡したことと、メリーたちにはこれから渡すので、他のみんなの分はお願いした。
レイラに預けて、地下の工房へ向かうことにした。
「レイラさん、ローズマリーって魔除けになるんですか?昨日応接室のリースに付けてましたよね?」
レイラが意味深にふふっと笑った。あれ、知っててリースにしたんだ、とリリィは震えた。
「それより、この香り袋‥‥‥」
「スゴイですよねぇ。魔除け効果ホントにあるんじゃ?」
それにしても、なんてタイミングで作ってきたのだろう。
「‥‥‥ギルマスのところに行ってくるわ」
「了解ですぅ」
「これを、ロロが?」
代表室にはカイ・マルコ・ユルが揃っていた。
「‥‥‥くっ、鑑定したくても出来ないなんて!」
ユルが珍しく感情的で、とても悔しそうだった。今日は、鑑定依頼があるので、魔力が使えない。
「スゴイな、これ。何となくわかるよ、香り袋っていうか、守り袋だよね」
マルコが苦笑いした。ロロには今日のこと何も言ってないのに、偶然なのだろうか?
「まさか、接触してないよね?」
「考えたくないな」
ロロはただ、昨日のオバケから皆を守りたいだけだったのだが、予想外の騒ぎになった。
読んでいただきありがとうございます。
『古書店の猫は本を読むらしい。』も、スローペースで連載中です。こちらもどうぞよろしくお願い致します。
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