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林檎のロロさん  作者: Tada
26/151

26個目

※ほぼマルコ視点です



 マルコが給湯室にいると、ロロがやってきた。片付けを手伝ってくれるらしい。使った食器を洗浄魔法でキレイにすると言った。厨房で手伝いをしていたことが役に立っているそうだ。

 ロロは楽しそうに魔法を使う。

 子供の頃「キレイになあれー」とクルッと回って言った時は可愛くて吹き出したが、‥‥‥今でもしてないよね?


「キレイになあれー」

「あ、言うんだ」


 回らなくて良かった。そして、ピッカピカにしてくれた。本当に新品のようだ。


「ありがとう」

「ふふっ、どういたしまして」



 以前、ちょっとした騒ぎになったことがあった。   

 メイナが妊娠した頃のことだ。

 ロロはお手伝いが嬉しくて、子供にしては高度な魔法を使った。ギルドの一階部分を一度の魔法で全てキレイにしたのだ。かなりの衝撃だったが、皆は「ありがとう」とお礼を言った。

 たまたま換金のために寄った他ギルドの冒険者が、広間が新築のようにキレイなことに驚いていた。誰がしたのか聞いてきたので、ロロとは言わず「うちの秘蔵っ子です」と答えると、冒険者は「これだけ良い仕事ができれば、()()()()()()やっていけるな。ギルドの紹介があれば貴族の屋敷でも働ける。女の子なら良い嫁さんになるな!」と言った。

 ロロの顔は真っ青だった。それから泣き出してしまった。「ここにいたい」「追い出さないで」と泣き叫んだ。

 あの冒険者に悪気はなかった。だから誰も責めなかったし、もう大丈夫だからと、帰ってもらった。

 ただロロが幼かっただけ。

 記憶をなくしていても、言葉はわかるし体が覚えていたのか魔法も使えた。理解も早かった。だが精神年齢は四・五歳くらいだった。

 知らない場所に来て、やっと居場所ができて、大好きなメイナが妊娠して。不安定な時だった。

 それからのロロは、目立つことをしなくなった。

 ナナシーが生まれてからは少し落ち着き、お手伝いも変わらずしてくれたから、皆は今までどおり「ありがとう」とだけ言った。将来どうしたいかは、いつの日かロロが決めることだと、皆が思っていた。



 冒険者になり、独り立ちをして、前世を思い出した今なら、どうなのだろう。


「ロロちゃん」

「なあに?」


 マルコはロロの頭を撫でて、露草色の瞳に笑って言った。


「良いお嫁さんになれるね」


 泣くだろうか?

 怒るだろうか?

 笑ってくれるだろうか。




「セクハラです」


 あれ?






「マルコさん」

「あ、はい、ごめんなさい。許してください」


 マルコは困って、ロロの頭から手を退けた。シュンとしたマルコにロロは手を伸ばした。


「マルコさん、頭をこちらに」

「はい、お嬢様」


 何をされるのかビクビクと頭を差し出した。料理長たちの、先日のアレが頭に浮かんだ。


 ロロは、マルコの頭を撫でた。

 目を瞠って固まったマルコに、ロロが笑った。


「もう大丈夫だよ。泣いたりしないよ」


 グルグルとマルコの頭をたくさん撫で回して、乱れた胡桃色の髪に満足したら、先に戻るねと給湯室を出ていった。



「なんだよ、ははっ」


 やられたな。

 クシャクシャになってしまった髪を、マルコは直そうとして手を止めた。


「‥‥‥俺が泣きそ」



読んでいただきありがとうございます。

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