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林檎のロロさん  作者: Tada
25/151

25個目

ブクマ・評価・いいね、ありがとうございます。



「やーめーてー」 


 リリィが心配して、ロロを代表室まで運ぼうと、なぜかお姫様抱っこした。絵面がおかしいので「おーろーしーてー」と騒いでいたら、事務室から出てきたユルに「‥‥‥お静かに」と怒られた。

 足の小指をぶつけたと言ったら、リリィと同じようなことをしようとしたので、全力で断った。

 それならせめて、と事務室で急ぎ支度をして戻ってきたユルと、いま一緒に階段を上っている。手を引かれて。


「ナゼコウナッタ?」

「‥‥‥今日はリボンタイをしているんですね」

「ぅあ、はい。変ではないですか?」

「‥‥‥青が、良くお似合いです」

「アリガトウゴザイマス」


 ユルが少し微笑んだような気がしたので、ロロは安心した。代表室の前に来たところで、今日の彼の服装を見た。


「ユルさんも、今日は青のアスコットタイなんですね」

「‥‥‥はい。変ではないですか?」

「ユルさんも良くお似合いです」

「‥‥‥ありがとうございます」


 白シャツに青のアスコットタイ、ダークグレーのベスト、黒のスラックス。

 あれ?なんか、似てない?


「え、ちょっと二人とも何それ!」

「おい、何だそれは!」


 いつの間にか扉が開いていて、入口に立つマルコと、ソファーに座るカイが、こちらを見て顔を顰めている。

 え?違うよ?偶然だよ?ペアルックにしたわけじゃないよ?


「「なんで手を繋いでるんだよ!」」

「「‥‥‥あ」」





 

「つまり、リリィさんのお姫様抱っこを拒否した結果、なんやかんやで、こうなった」 

「その、なんやかんやが知りたいんだが、間違いないか?リリィ」

「間違いないですぅ」

「うわ、びっくりした」


 振り向くと、リリィが笑顔で立っていた。


「リリィさん、いつからいたの?」

「ナゼコウナッタ?からですぅ」


 ほぼ最初からだ。

 カイさんもそうだけど、なんで足音消すの?


「料理長がお二人を見て、今すぐ尾行し(つけ)なさい!と言ったので」


 料理長、過保護(アンタも)か。


「ユルさんはロロさんをエスコート、お互いの服装を褒め合っていましたぁ。以上であります!」

「ご苦労さま、リリィさん」


 マルコが納得した笑顔でリリィに「お仕事に戻ってね」と言った。リリィがスススと下がって扉の向こうへ消えていった。あれか、あの歩き方で足音しないのか。


「さ、とりあえずお茶にしよう!」


 パンッと手を叩いて、何事もなかったかのように、マルコが給湯室へ行った。カイが座るように言ったのでユルと並んで座ろうとしたら「ロロはこっち」とカイの隣に座らされた。


 やれやれだな。


 アップルティーの香りがしてきた。

 すーはーすーはー、と嗅いでいたら「やめろ」とカイにデコピンされた。むうっとおでこを押さえていると「‥‥‥良い香りですね」とユルが穏やかに言った。

 マルコが給湯室から紅茶を運んできた。今日は、白シャツと首元に淡水色(うすみずいろ)のアスコットスカーフ、ダークグレーのスラックスだ。キラキラした瞳で紅茶を受け取るロロが「ありがとうございます、マルコさん」と言うと、カイがちょっと悔しそうに「俺も着替える」と立ち上がって、マルコに止められた。


「いい歳して張り合うなよ」

「むう」


 口を尖らせて座り直すカイを、ロロとユルは温かい目で見ていた。マルコは二人に「孫を見るような目だね」と笑った。


「孫といえば、足の小指をぶつけたら、またちょっとだけ思い出したよ」

「孫のこと?」


 飲んでいたカップをソーサに置いて、マルコが聞いた。ロロが頷いた。


「うん、名菜ちゃん」


 カイもマルコも驚いた。ロロはナナシーを『ナナちゃん』と呼んでいるのだ。ナナシーの名前は、ロロが考えて決めた。


「心の何処かで、覚えてたのかな」

「‥‥‥そうかもな」

「ロロちゃん。やっぱり、おばあちゃんになるまで長生きしたんだね」

「ふふっ、そうみたい!」


 それから、魔法がある異世界の小説に興味があったから転生できたのでは?と考えたが、転生者だらけになりそうなのでソレはないなと思った。


 それから、ランチを食べた。マルコが昨夜買ったテネッタ牛の串焼きと鶏挽き肉餡入り蒸し饅頭に揚げ饅頭を用意すると、ロロは「やったぁ!」と喜んだ。


「夜にしか売ってないから、なかなか買えないの」


 ユルは、なるほど、と納得した。十五歳の少女が出歩くには夜の街はやはり危ない。マルコはそれを考慮して、ロロのために買ったのだろう。

 人を思い遣る心が、当たり前のように、ここの人たちにはあるのだな。

 ユルがそう思っているうちに、カイとマルコが串焼きと饅頭を、皿に次々と盛ってきた。


「ユルくん、はい、もっと食べなさい」

「ほら、ユル、ちゃんと食べろ、体力つけろ」

「それ、パワハラです」

「「何それ!」」

「‥‥‥ふっ」


 温かい賑やかなランチだった。

 

読んでいただきありがとうございます。



『古書店の猫は本を読むらしい。』も、スローペースで連載中です。こちらもどうぞよろしくお願い致します。


https://ncode.syosetu.com/n5529hp/

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