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林檎のロロさん  作者: Tada
19/151

19個目



「ロロ、昼飯は食べたのか?」

「こんにちは。食べたけど、別腹ならいくつかあります」


 カフェのカウンターで、エールを飲むイケオジに遭遇した!


「そりゃすごいな。じゃあ、隣の席に来ないか?」

「ヨロコンデ」


 厨房のドットが、料理を次々に袋に入れている。T・J・D(テンジンドット)マークのついた食品専用魔法袋(マジックバッグ)だ。これに作った料理を入れて、冒険者に渡す。


「ゲイトさん、明日からダンジョンでしたよね?」

「ああ、そんなに深くまでは行かないが」


 それにしてはすごい量の食事を持っていくんだな、と思った。


「他の依頼もあるからな。行くのはダンジョンだけではないんだ」


 ロロが不思議そうにしていたのがわかったのか、教えてくれた。念のために多めに注文したのだろうが、たぶん一月分はありそうだ。

 カウンター越しにジンがひょこっと顔を出した。


「ロロ、新作のレモンパイがある。食べるか?」

「食べる!紅茶はさっき飲みすぎたから、お水でいいよ。あ、自分でやろうか?」

「いや、厨房荒れてるからな、持ってくよ」

「ありがとう!あれ?テンさんは?」


 仲良し三人組なのに一人足りない。


「テンは、ユルと俺のあとに案内人になってもらった」

「は?」


 ゲイトは、ロロの顔を見て吹き出した。

 

「ロロは可愛いのに表情豊かで面白いな!」


 頭をポンポンされた。ご褒美ですか?


「ユルさんもそうだけど、今日は何かあったんですか?テンさんまで」

「たまたま冒険者がつかまらなかったのと、後はそうだな‥‥‥ユルがちょっと客に絡まれてたな」

 

 ゲイトはエールを飲みながらロロの反応を見ていた。

 ユルに絡む?この街の人ならそんなことはしない。ロロが顔を顰めた。


「金髪の美青年だったぞ?」

「ほう、金髪の美青年」

「興味があるのか?」

「あるっちゃありますね」

 

 ゲイトに答えて笑いかけると、ゲイトはカウンターに肘をついて、ロロの顔を真っ直ぐに見ていた。


「‥‥‥なんです?」

「ロロ、いつかダンジョンに行かないか?」

「え?ゲイトさんと?」


 驚いていると、俺と二人で行くのはギルマスが許してくれたらだな、と笑った。

 レモンパイが出てきて、さっそくいただいた。爽やかな酸味と甘味が絶妙だ。ぜひ夏の限定メニューに入れてほしい。美味しそうに食べるロロを眺めながら、ゲイトは再び話し始めた。


「今な、ベテラン冒険者のあいだで、若い冒険者をダンジョンに呼ぼう!って活動していてな」


 へぇー。


「ダンジョンに行くにも金がかかるだろ。下に行けば行くほどな。だからまあ、手頃な金額で入れる十階までだが、その中で店を出したりな」


 ほう!


「寝泊まりして、ベテラン冒険者から楽しさや稼ぎ方、基礎を学ぶ場所にしようとしてるんだ」

「お店はグルメもあります?」

「もちろんだ。ドットたちみたいな、料理が好きな冒険者はけっこういるもんだぞ」

「それなら、行ってみたくなりますね!」

「そうか!」


 ニカッと笑って、ロロの枯茶色の髪を撫でてきた。


「ギルドがベテランに仕事を依頼して、冒険者を育ててもらい、そうして受け継いでいく。これからそんな風になっていくだろう」

「ゲイトさんも、育てる人になるんですか?」

「俺なんかは怖がられる」

「そんなことないです、眼福です。違った、大丈夫です」

「ん? ところで、ドットたちみたいに話してくれないのは寂しいな。なんで敬語なんだ?」


 なんでみんな気にするんだろう?


「私って、格好良いと思った人には敬語になるみたいです」


 本人を前に言うロロに、ゲイトは目を丸くした。それから、ニカッと笑い「ふーん、そうかぁ」と銀灰色の瞳が厨房を見た。

 料理長たちが切ない顔をしていたので、可笑しくてゲイトは吹き出した。


 しばらく話したあと、魔法鞄に料理を入れ終えたゲイトが、代金を支払い、これからギルマスのところに行くと言った。しばらく会えなくなるゲイトに「いってらっしゃい」と言うと、また頭を撫でられた。大人って撫でるの好きだな。


 お腹は甘いものでいっぱいだ。

 これからどうしようかなと、後片付けで忙しそうなドットとジンを見たロロは、閃いた。


「そうだ!テンさんの代わりに私が案内人になれば」

「「それはダメ!」」

「えー」


 却下された。



読んでいただきありがとうございます。

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