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林檎のロロさん  作者: Tada
17/151

17個目



「レイラです」

「入れ」


 ノックの後にレイラが代表室の扉を開けた。


「失礼します」


 レイラはロロの存在を確認したあと、マルコに「よろしいですか?」と聞いた。


「どうしたの?」


 マルコがレイラに歩み寄った。二人で何やら小声で話をしている。マルコが頭を掻いた。


「ちょっと行ってくる。必要があればカイさん、アンタに対応してもらうよ」


「そうか」

「ロロちゃんは、ゆーっくりしてて、いいからね!」


 レイラとマルコが出ていった代表室で、カイとロロはお互い黙ってお茶を飲んだ。マルコが入れてくれた今度の紅茶はナッツの香りだ。


 あ、チョコレートに合いそう。


 察したカイが自分のデスクの引き出しのチョコレートを出してきた。


「ありがとう」

「ああ」


 マカロン全種類食べたのに、やっぱり別腹ありましたわ。このチョコレート、ほろ苦いけど美味しいなぁ。


 ロロは大人の味を堪能した。


「‥‥‥」

「‥‥‥」

「私、足止めされてる?」

「ぶっ、ケホッ、ケホ‥‥‥、お、お前」

「もう紅茶飲んじゃったから暇だな」

「‥‥‥まあ、ゆっくりしていけよ」

「えー」


 よくわからないが、行くなということらしい。まあ、逆らうつもりもないので、仕方なくカイの話し相手になることにした。




 * * * * * * * * * * *




「悪かったな、ユル、交代だ」


 突然後ろから肩に手が乗った。

 殴られるかもしれないと固くなっていたユルの体が、ビクッと跳ねた。


「用があるなら、案内人が中に連れて行くから、受付で手続きしてくれ。それが、このギルドのルールだ」


 いつの間にか開いていた大扉から、銀灰色の髪の冒険者が現れ、ユルの後ろに立っていた。ユルよりも少し上から聞こえる落ち着いた低い声と、背中に感じる温かさが、ユルに力をくれた。


「‥‥‥ゲイトさん、あの、ありがとうございます」

「遅れて悪かったな、休憩するといい」


 いや、今日ゲイトは案内人の仕事を受けていない。

 明日からダンジョンに入るから、魔法鞄に入れるための大量の食事を受け取りに、厨房前のカウンター席にいたのだ。

 騒ぎに気付いて、来てくれた。


「俺が案内する」

「‥‥‥ふん、さっさとしろ」


 ユルは、どこまでも高慢な男に苛立ったが、ポンポンと背中を叩かれたので、自分の立場を思い出した。


 自分は【紅玉(ルビー)】の鑑定士だ。

 あとはギルドの判断に任せるべきだ。


「‥‥‥宜しくお願いします。私は、自分の仕事に戻ります」

「承知した」


 金色の瞳など、ユルの中ではもう欠片も残っていなかった。

 



「ギルドは初めてか?」

「‥‥‥何が言いたい」


 金色の長い髪の男は、前を歩く男の威圧(プレッシャー)をピリピリと感じていた。


「ギルドにはギルドのルールがある。それを知らないのは、初めて来た人間か、馬鹿しかいない」


 金色の瞳が、銀灰色の後髪を睨んだ。


「もしも冒険者を名乗るなら、身分など関係ないものと思え。誰だろうと関係ない。貴族だろうが、王族だろうがな」

「‥‥‥っ!!」

「まあ、客ならば話は別だ。リリィ」

「はい、ゲイトさん」

「お客さんだ、話を聞いてくれ。ああ、それから、これは忠告だが‥‥‥」


 冒険者ゲイトはカウンターに手を付き、本日の客に最後の案内をした。


「ギルドに依頼があるなら、ギルドを敵に回さないことだ。因みに、ここの正規職員はそこのリリィも含めて、元A級以上の冒険者だ」


読んでいただきありがとうございます。

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