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林檎のロロさん  作者: Tada
15/151

15個目

ブクマ・いいね・評価、ありがとうございます。

励みになります。

たくさんの方に読んでいただけるよう、これからも頑張ります。



「‥‥‥おはようございます」


 何故、ここにいるのだろう。

 ロロとザックは、目の前に立っている美青年に衝撃を受けていた。


「え、ユル?」

「ユルさん、どうしたんですか?」


 かなり目立っている。

 白シャツに黒のループタイ、グレーのベストに黒のスラックスのスタイルで、黒髪七三分け眼鏡の男が、ギルドの大扉前にいるのだ。

 違和感がすごい。


「‥‥‥今日の案内人を私が申し出ました」


 なんでまた?と、ロロとザックは思ったが、ここで立ち話をするわけにもいかない。通行人(ほぼ女性)はこちらをチラチラ見ているが、何やら近付けないオーラがユルから出ているらしい。


「‥‥‥ロロさん、副代表がお話があるそうです」

「わかりました、ありがとうございます」


 真面目なユルにロロはにこっと笑って大扉の中に入ると、ザックが不思議に思っていたことを聞いた。


「ロロちゃんは、どうしてユルには敬語なの?」

「‥‥‥?」

「無自覚?」

「うーん?でも、ユルさんだけではない、はず?」

「例えば?」

「例えば‥‥‥あー、ゲイトさん?」

「えっと、渋い感じの冒険者の?」

「うん、いつも格こ‥‥‥あ、なるほど」

「?」

「私が格好良い、と思った人には敬語になるのかも」

「‥‥‥え、あ、そうなんだ」


 何だか微妙な顔のザックが「それじゃ、またね」と言って、受付に声かけてから地下工房に行ってしまった。



「リリィさん、おはよう!」

「ロロさん、おはようございます!ザックさんと一緒だったんですかぁ?」

「カルーダンのベンチでパン食べてたらお茶くれた」


 乙女色の美女がふふっと笑う。


「ロロさんは食べてばかりですねぇ」

「失礼な。ところで、ユルさんはどうしたの?」

「あー、今日の午前中は冒険者の方が誰も入ってなくてですねぇ。そんな時はいつもギルド員の誰かが出るんですけどぉ」

「ユルさんが申し出たと」

「そうなんです!びっくりですよぅ」


 もう少し聞きたかったが、大扉から入ってきた人がいたので、リリィに代表室へ行くと言って受付を後にした。


 階段を上る前に足を止め、厨房に向かった。


「おはよう!昨日はごちそうさま!」

「「「おはよう」」」


 料理人たちが笑って返してくれた。


「ジンさん、チェリーパイ美味しかったよ!」

「そうか、良かった。限定メニューにしようかな」

「暑い日にはアイスクリーム添えても美味しそう!」

「なるほど!了解であります!」


 三人ともビシッと敬礼をしたので笑った。またね、と手を振って階段へ向かった。



 二階には代表室の他に、トイレ、資料室、仮眠室、大会議室がある。大会議室が使われることは殆どない。

 ロロは、代表室の扉の前に来てノックする。


「ロロです」

「どうぞ」


 扉を開けると、右奥のデスクに腰掛けるカイと、その前のソファーの近くに立っているマルコがいた。

 ロロは、マルコの服がいつものワークジャケット・カーゴパンツではないのに驚いた。紺青の襟付きシャツに黒のスラックス、少し開いた襟の中にシルバーの柄のアスコットスカーフをしている。メイナと同じ胡桃色の髪に少し垂れ目なのが甘い。


「貴公子降臨」

「ぷっ」

「なるほど」


 キラキラした瞳でマルコを見るロロに、カイが納得する。


「実験は?」

「成功だ。またひとつロロのことがわかったな」


 呆れ笑いでカイがデスクからソファーの方へ移動した。


「ロロちゃん、紅茶入れるよ。ここ座って」

「ありがとうございます」

「おいロロ、マカロン食べるか?」

「食べる、ありがとう」

「なんでマルコだけ敬語なんだよ」

「うーん?その話さっきもした」


 カイの向かいのソファーに座ってから、パン屋でザックに会い、それからギルド前でユルに会って、その時の会話からザックに敬語のことを言われた、と話した。

 

「お前、ゲイトさんにも敬語なのか?」


 あの人は、冒険者のよくあるスタイルのはずだ。銀灰色の髪を後ろに撫でるようにラフに流し、黒のタクティカルジャケット・パンツにブーツスタイルだ。確かに、中年だが引き締まった筋肉と高身長は格好良く、男の冒険者でも憧れる人だが。


「お前、ただ格好良い男が好きなのか?」

「失礼な」


 ロロが頬をむうっと膨らませた。


「見て呉れだけの中身のない人間には興味はない!」

「怒られた!」


 ぷりぷりしたロロに、マルコがにこやかに紅茶とマカロンを持ってきた。


「どうぞ、お嬢様」

「眼福です。違った、いただきます」

「お前、病気だな」

「失礼な」


 

読んでいただきありがとうございます。



『古書店の猫は本を読むらしい。』も、スローペースで連載中です。こちらもどうぞよろしくお願い致します。


https://ncode.syosetu.com/n5529hp/

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