15個目
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「‥‥‥おはようございます」
何故、ここにいるのだろう。
ロロとザックは、目の前に立っている美青年に衝撃を受けていた。
「え、ユル?」
「ユルさん、どうしたんですか?」
かなり目立っている。
白シャツに黒のループタイ、グレーのベストに黒のスラックスのスタイルで、黒髪七三分け眼鏡の男が、ギルドの大扉前にいるのだ。
違和感がすごい。
「‥‥‥今日の案内人を私が申し出ました」
なんでまた?と、ロロとザックは思ったが、ここで立ち話をするわけにもいかない。通行人(ほぼ女性)はこちらをチラチラ見ているが、何やら近付けないオーラがユルから出ているらしい。
「‥‥‥ロロさん、副代表がお話があるそうです」
「わかりました、ありがとうございます」
真面目なユルにロロはにこっと笑って大扉の中に入ると、ザックが不思議に思っていたことを聞いた。
「ロロちゃんは、どうしてユルには敬語なの?」
「‥‥‥?」
「無自覚?」
「うーん?でも、ユルさんだけではない、はず?」
「例えば?」
「例えば‥‥‥あー、ゲイトさん?」
「えっと、渋い感じの冒険者の?」
「うん、いつも格こ‥‥‥あ、なるほど」
「?」
「私が格好良い、と思った人には敬語になるのかも」
「‥‥‥え、あ、そうなんだ」
何だか微妙な顔のザックが「それじゃ、またね」と言って、受付に声かけてから地下工房に行ってしまった。
「リリィさん、おはよう!」
「ロロさん、おはようございます!ザックさんと一緒だったんですかぁ?」
「カルーダンのベンチでパン食べてたらお茶くれた」
乙女色の美女がふふっと笑う。
「ロロさんは食べてばかりですねぇ」
「失礼な。ところで、ユルさんはどうしたの?」
「あー、今日の午前中は冒険者の方が誰も入ってなくてですねぇ。そんな時はいつもギルド員の誰かが出るんですけどぉ」
「ユルさんが申し出たと」
「そうなんです!びっくりですよぅ」
もう少し聞きたかったが、大扉から入ってきた人がいたので、リリィに代表室へ行くと言って受付を後にした。
階段を上る前に足を止め、厨房に向かった。
「おはよう!昨日はごちそうさま!」
「「「おはよう」」」
料理人たちが笑って返してくれた。
「ジンさん、チェリーパイ美味しかったよ!」
「そうか、良かった。限定メニューにしようかな」
「暑い日にはアイスクリーム添えても美味しそう!」
「なるほど!了解であります!」
三人ともビシッと敬礼をしたので笑った。またね、と手を振って階段へ向かった。
二階には代表室の他に、トイレ、資料室、仮眠室、大会議室がある。大会議室が使われることは殆どない。
ロロは、代表室の扉の前に来てノックする。
「ロロです」
「どうぞ」
扉を開けると、右奥のデスクに腰掛けるカイと、その前のソファーの近くに立っているマルコがいた。
ロロは、マルコの服がいつものワークジャケット・カーゴパンツではないのに驚いた。紺青の襟付きシャツに黒のスラックス、少し開いた襟の中にシルバーの柄のアスコットスカーフをしている。メイナと同じ胡桃色の髪に少し垂れ目なのが甘い。
「貴公子降臨」
「ぷっ」
「なるほど」
キラキラした瞳でマルコを見るロロに、カイが納得する。
「実験は?」
「成功だ。またひとつロロのことがわかったな」
呆れ笑いでカイがデスクからソファーの方へ移動した。
「ロロちゃん、紅茶入れるよ。ここ座って」
「ありがとうございます」
「おいロロ、マカロン食べるか?」
「食べる、ありがとう」
「なんでマルコだけ敬語なんだよ」
「うーん?その話さっきもした」
カイの向かいのソファーに座ってから、パン屋でザックに会い、それからギルド前でユルに会って、その時の会話からザックに敬語のことを言われた、と話した。
「お前、ゲイトさんにも敬語なのか?」
あの人は、冒険者のよくあるスタイルのはずだ。銀灰色の髪を後ろに撫でるようにラフに流し、黒のタクティカルジャケット・パンツにブーツスタイルだ。確かに、中年だが引き締まった筋肉と高身長は格好良く、男の冒険者でも憧れる人だが。
「お前、ただ格好良い男が好きなのか?」
「失礼な」
ロロが頬をむうっと膨らませた。
「見て呉れだけの中身のない人間には興味はない!」
「怒られた!」
ぷりぷりしたロロに、マルコがにこやかに紅茶とマカロンを持ってきた。
「どうぞ、お嬢様」
「眼福です。違った、いただきます」
「お前、病気だな」
「失礼な」
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『古書店の猫は本を読むらしい。』も、スローペースで連載中です。こちらもどうぞよろしくお願い致します。
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