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林檎のロロさん  作者: Tada
13/151

13個目

※料理長ドット視点です



「リリィ、ユルはいるか?」 


 近くでギルマスの声が聞こえた。



 俺の名はドット。五十五歳。元冒険者で、モミアゲ絶賛増量中の料理長だ。


 ロロの魔法はユニークで面白い。二十四時間限定なのがまた儚さがあっていい。願わくば、最近寂しくなってきた頭頂部にしてほしいところだが、二十四時間後の絶望が計り知れないので、やめておいたほうがいいだろう。


 ロロに関わることで、何かが起きているようだ。

 受付カウンターの奥から鑑定士のユルが出てきた。ギルマスに呼ばれたようだ。仲間のテンとジンも何かを感じてユルを見ていた。

 ふと、視線に気付いたのか、ユルがこちらを見た。二度見した。どうした?

 青年は小さく息を吐くと、階段を上っていった。

 

 午後五時からエール以外の酒も出して、カフェは冒険者とギルド職員で少し賑やかなダイニング・バーに変わる。

 俺たちが現役の時は、ダンジョンや仕事の依頼達成で盛り上がり、酔って騒いで喧嘩して椅子を壊す馬鹿がいたもんだが、時代は変わったようだ。


 何となく忙しくしていだが、まだ二階から誰も下りてこないのはわかっていた。

 テンが「隊長、ロロはお腹空いてないッスかね」と、フライドポテトを揚げようとしてたので止めた。昼にあれだけ食べさせたから、さすがに飽きるだろう。

 それから、隊長ではない。料理長と呼びなさい。

 冒険者のゲイトが「今日はギルマスいないな。‥‥‥そのモミアゲ流行ってるのか?」と厨房のカウンター越しに声をかけてきた。

 流行るか?


 さて、部屋で食べられそうな夜食を作っておくか。白身魚のフライにタルタルソースをかけて、厚切りに焼いたパンに切れ目を入れ、千切りキャベツと一緒に挟んだ。余ってもそのまま食品収納庫(マジックボックス)に入れておけばいい。

 

 午後七時を過ぎた頃、ロロがユルと一緒に下りてきた。ユルが事務室に寄った後そのまま二人で帰っていったが、珍しい組み合わせだと思った。‥‥‥付き合ってないよな?

 メリー・バッガー氏が「エールをくれ」とカウンター席に座った。こちらも珍しい。魔法鞄の件が気になったが、黙っていた。飲み終わったらすぐに席を立ち、エール代をカウンターに置いて「お前さんらも過保護で心配症だなぁ」と笑って帰った。


 しばらくして、副代表のマルコが下りてきた。「ぷはっ」と吹いた後に、軽食はあるかと聞いてきたので、作ったタルタルフィッシュパンを渡すと喜んで二階へ持っていった。代金はいつも請求後にまとめて払われる。


 午後九時を過ぎたら客がいなくなったので、今日はこれで終わりにするかと、明日の仕込みと掃除をして帰ることにした。

 明日は、大事なランチの予約がある。


  


 * * * * * * * * * * *




「エビフライ!」


 ギルマスの娘のナナシーが、俺たちのモミアゲに名前を付けた。可愛い笑顔で喜ばれると、満更でもない。

 ロロはとても楽しそうだった。良かった。

 ランチは子供が好きそうなハンバーグとグラタンで、エビフライもサービスした。メイナが複雑な顔をしていた。

 スイーツにアップルパイは絶対だった。

 やっぱり、一番良い顔をして食べる。大きくなってもへにゃっと笑う。俺たちにできることはこの笑顔を守ることだな、うん。


 ギルマスが仕事に戻る前に声をかけてきた。今日の礼と、ロロが心配をかけたこと、それから、近く話せる時が来ると。「先輩、巻き込むぞ」と笑った。

「ああ、巻き込めよ」と格好つけていたら、モミアゲがもとに戻った。後ろのマルコが吹き出して、腹を抱えて出ていった。カイも足早に去っていった‥‥‥。


 ひとり残ったロロにジンが話しかけていた。新作のチェリーパイの話だ。


 ナナシーからもらったブーケと新作のチェリーパイを持って、軽やかに帰る少女の後ろ姿を見送った。


読んでいただきありがとうございます。

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