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林檎のロロさん  作者: Tada
12/151

12個目

ブクマ・評価・いいね、ありがとうございます。



 なんということでしょう。

 モッサモサの中に、天使がいます。


「エビフライ!」


 なんということでしょう。

 モミアゲのことを、エビフライと言う天使がいます。


「あのモッサモサを、エビフライの(ころも)に見立てるとは‥‥‥!」


 なんという芸術的な感性!


「くっ‥‥‥!モミアゲを黄金色にすべきだった!」

「やめてやれよ」


 カイのデコピンが、悔しがるロロの額にヒットした。


 メイナとナナシーが二階から下りてきて、カフェ入口で出迎えたのが、ギルドの料理人たち。

 彼らのモミアゲを見たナナシーは、エビフライ!と可愛い笑顔で喜んだ。メイナはちょっと引いていた。

 料理長たちは、満更でもないらしく、笑顔で彼女たちを席に案内する。


「ロロちゃん!」

「ナナちゃん!」


 瞳と同じ薄紫と白いレースのワンピースが、ふわり、目の前で踊るように花開いた。


「「天使降臨」」

「アンタら」

 

 カイとロロの呟きにマルコが呆れた。

 血の繋がりはなくても、育て方次第で似てしまうことの恐ろしさを感じた。


「ロロちゃん、あいたかったの!かあさまブーケをください」

「はいよ」

「ロロちゃん、プレゼントがあります!」


 メイナがショルダーバッグからブーケを出した。魔法鞄だ。ブーケは、白と水色の重ね紙に包まれ、薄紫のリボンで結ばれていた。ルビィ家の花壇の花と香草(ハーブ)だとすぐに分かった。


「ナナちゃんが作ってくれたの?キレイだね」

「はい!」

「ありがとう!嬉しい!お家に飾るね!」


 皆が笑い合う二人の少女を温かく見守っていた。


「よし、ランチにしよう!」


 カイの言葉で皆が席に座り、料理長たちは厨房へ戻った。

 



 * * * * * * * * * * *




「‥‥‥随分と、賑やかですね」


 午後からの出勤になっていたユルは、カフェからの楽しげな声をレイラに聞いた。


「ふふ、ギルマスの家族が揃ってランチをしてるのよ」

「‥‥‥ああ、そうでしたか」


 昨夜のロロとの会話に出ていたことだ。代表の娘と久しぶりに食事をする、と。

 自分と違い、コロコロと表情を変えて話をする少女だなと思った。ロロとは初めて仕事以外で会話をした。

 前世の記憶を持ち、ロロとして生まれてから保護されるまでの記憶がない。大変なことだ。

 自分だったら耐えられるだろうか?どうしてあんな風に、笑えるのだろうか。

 逃げてきた自分には、わからなかった。




 * * * * * * * * * * *



 

 ランチのスイーツはアップルパイだった。

 ジンが作ったアップルパイは、初めてギルドに来たときに食べた、思い出の味だ。


「じゃあ、今日のお茶はミルクティーにしようかな」

「ロロちゃんは、リンゴが好きだね」


 マルコもミルクティーを頼んだようだった。代表室に行くと、ロロ好みのお菓子や紅茶を出してくれる。いつも不思議だった。


「リンゴは昔から好き」


 昔から。たぶん前世のことだろうと、カイもマルコも思った。メイナにはまだ伝えていないし、ここではこれ以上の話は出来なかった。

 ナナシーが静かになった。


「ああ、ナナシーが眠そうだ。そろそろ失礼しようかな」

「メイナさん、今日はありがとう」

「楽しかったよ。薔薇ジャムありがとうね。ロロ、ひとり暮らしで困ったらいつでもおいで」

「うん」

「兄さんも」

「ああ」


 メイナが立ち上がり、ナナシーをおんぶした。元冒険者だとしても、力持ちだ。


「カイ、また後でな」

「気をつけてな」


 メイナは料理長たちにお礼を言って、受付のレイラと少し会話をしてから帰っていった。


「さて、俺たちも仕事に戻るか」

「はあ、楽しい時間は終わるのが早いな。俺にも薔薇ジャムありがとうね。ロロちゃんは、この後どうする?」

「メリーさんいないし、帰ろうか迷ってる」

「爺いないのか?」

「うん、留守だった」

「そうか。まあ、今日は明るいうちに帰れよ」

「はぁい。ごちそうさまでした」

「またね、ロロちゃん」


 カイが厨房の料理長と話をしてる途中で、モミアゲがもとに戻り、吹き出したマルコが腹を抱えて階段を上っていった。カイも下を向いて震えながら戻っていった。


 ぽつんとひとり残ったロロに、ジンが話しかけた。


「ロロ、ミルクティーのおかわりは?」

「あ、いただきます」

「新作のチェリーパイ作ったから、帰ったら食べてみて感想をくれよ。包んでおくから」

「本当?楽しみ!ありがとう!」


 三人の料理人が嬉しそうにしている。

 美味しかった。楽しかったな。

 あ、ブーケ!防腐魔法をかけて、徐々に素敵なドライフラワーになるようにしようかな!


 帰ってからの楽しみがまたひとつ増えた。


読んでいただきありがとうございます。

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