11個目
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寝不足だ。寝不足です。
昨日はいろいろありすぎて、疲れて眠れるかと思いきや、ベッドに入っても次の日の予定を考えると興奮してしまい、なら本でも読むかと手元灯をつけてページをめくるも内容が入ってこない。
諦めて、カモミール入りの香草茶を入れて飲みながら、テーブルにデザイン帳を広げて新しい変身魔法を考えていたら、そこで寝落ちして、気がついたら朝でした、と。
首が痛い。首が痛いです。
練習中の今日もお疲れさ魔法を早く習得せねばと思いながら、顔を洗い、自作の蜂蜜配合クリームを塗って、ギルドに行く支度を始めた。
「今日の服は‥‥‥」
備え付けのクローゼットを開けて、シャツとワークパンツばかりの服の中から色を選ぶ。昨日は上下砂色だった。
今日は、楽しいナナシーたちとのランチがある。
胡桃色の髪と薄紫の瞳の少女を思い浮かべ、その色を邪魔せず馴染む胡桃染のワークパンツに決めた。天使ファーストだ。シャツは白の丸襟にした。地味を好む彼女にとっては、いつもよりお洒落にしたほうだった。
依頼先でもらった食用薔薇をジャムにしたので、温めたスコーンにつけて食べた。ランチもあるし、食べるのは一個にしておいた。薔薇ジャムはいくつか小瓶に入れたので、手土産にラッピングした。
着替えて、いつものワンショルダーリュックを斜め掛けにし、ロロは自宅を出た。
「おはよう、ロロ」
ギルドの大扉前にいる案内人は、ベテラン冒険者のゲイトだった。立ち姿が格好良い。歳は四十代半ばの、イケオジというやつだ。
「眼福です」
「ん?」
「違った、おはようございます」
広間の長椅子に、待ち合わせのパーティーが三人いるようだった。
今日の受付はレイラだ。
「レイラさん、おはよう!」
「ロロちゃん、おはよう」
濃紅の髪と瞳の妖艶な美女レイラは、メイナと仲良しだ。長い髪を後ろに丸めて長いピンで一纏めにしている。
「首筋がなんとも艶めかしい」
「ロロちゃん最近思ったこと口に出てるわよ」
「おっと」
前世を思い出してからよりヒドくなったようだ。
「メイナたちは来てるけど、まだ仕事よ。探索魔法の相談ね」
「冒険者やめても忙しいね」
「彼女はギルドに欠かせない人だわ」
「しばらく時間潰してるね」
「ええ、そうしてね」
ギルドカードを見せて階段入口に向かい、ランチの準備で忙しい厨房の料理人を温かい気持ちでスルーして、地下へ行くことにした。
相変わらず薄暗い地下通路の先の扉に、また新しい貼り紙があった。
『留守だ!』‥‥‥こんなオープンな留守は初めて見た。
がっかりして階段を上り、このまま二階にこっそり様子を見に行くか、カフェの隅っこにいるか、外に出るかを悩んだ。
「暇になってしまったでござる」
「ござるってなんだよ」
「うわ、びっくりした」
振り向くと、白襟シャツとルビー色のループタイに、ダークグレーのスラックス姿のカイがいた。
ロロの瞳がキラキラしているのをカイが気付いて、こいつの憧れはキッチリした大人の服装だけなのでは?と、不安になった。
「メイナの仕事の打ち合わせが早く済んだ。寝ていたナナシー起こしてるから、カフェで待とう」
「やった!」
はしゃぐロロの頭をポンポンとして、カフェの予約席へと二人並んで歩いた。
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