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林檎のロロさん  作者: Tada
11/151

11個目

ブクマ・評価・いいね、ありがとうございます。



 寝不足だ。寝不足です。


 昨日はいろいろありすぎて、疲れて眠れるかと思いきや、ベッドに入っても次の日の予定を考えると興奮してしまい、なら本でも読むかと手元灯をつけてページをめくるも内容が入ってこない。

 諦めて、カモミール入りの香草茶(ハーブティー)を入れて飲みながら、テーブルにデザイン帳を広げて新しい変身魔法(ヘアメイク)を考えていたら、そこで寝落ちして、気がついたら朝でした、と。


 首が痛い。首が痛いです。


 練習中の今日もお疲れさ魔法(マッサージ)を早く習得せねばと思いながら、顔を洗い、自作の蜂蜜配合クリームを塗って、ギルドに行く支度を始めた。


「今日の服は‥‥‥」


 備え付けのクローゼットを開けて、シャツとワークパンツばかりの服の中から色を選ぶ。昨日は上下砂色だった。

 今日は、楽しいナナシーたちとのランチがある。

 胡桃色の髪と薄紫の瞳の少女を思い浮かべ、その色を邪魔せず馴染む胡桃染のワークパンツに決めた。天使ファーストだ。シャツは白の丸襟にした。地味を好む彼女にとっては、いつもよりお洒落にしたほうだった。

 依頼先でもらった食用薔薇をジャムにしたので、温めたスコーンにつけて食べた。ランチもあるし、食べるのは一個にしておいた。薔薇ジャムはいくつか小瓶に入れたので、手土産にラッピングした。

 着替えて、いつものワンショルダーリュックを斜め掛けにし、ロロは自宅を出た。

 


「おはよう、ロロ」


 ギルドの大扉前にいる案内人は、ベテラン冒険者のゲイトだった。立ち姿が格好良い。歳は四十代半ばの、イケオジというやつだ。


「眼福です」

「ん?」

「違った、おはようございます」


 広間の長椅子に、待ち合わせのパーティーが三人いるようだった。

 今日の受付はレイラだ。


「レイラさん、おはよう!」

「ロロちゃん、おはよう」


 濃紅(こいくれない)の髪と瞳の妖艶な美女レイラは、メイナと仲良しだ。長い髪を後ろに丸めて長いピンで一纏めにしている。


「首筋がなんとも艶めかしい」

「ロロちゃん最近思ったこと口に出てるわよ」

「おっと」


 前世を思い出してからよりヒドくなったようだ。


「メイナたちは来てるけど、まだ仕事よ。探索魔法(サーチ)の相談ね」

「冒険者やめても忙しいね」

「彼女はギルドに欠かせない人だわ」

「しばらく時間潰してるね」

「ええ、そうしてね」


 ギルドカードを見せて階段入口に向かい、ランチの準備で忙しい厨房の料理人(モッサモサ)を温かい気持ちでスルーして、地下へ行くことにした。


 相変わらず薄暗い地下通路の先の扉に、また新しい貼り紙があった。

 『留守だ!』‥‥‥こんなオープンな留守は初めて見た。

 

 がっかりして階段を上り、このまま二階にこっそり様子を見に行くか、カフェの隅っこにいるか、外に出るかを悩んだ。


「暇になってしまったでござる」

「ござるってなんだよ」

「うわ、びっくりした」


 振り向くと、白襟シャツとルビー色のループタイに、ダークグレーのスラックス姿のカイがいた。

 ロロの瞳がキラキラしているのをカイが気付いて、こいつの憧れはキッチリした()()()()()だけなのでは?と、不安になった。


「メイナの仕事の打ち合わせが早く済んだ。寝ていたナナシー起こしてるから、カフェで待とう」

「やった!」


 はしゃぐロロの頭をポンポンとして、カフェの予約席へと二人並んで歩いた。


読んでいただきありがとうございます。

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