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林檎のロロさん  作者: Tada
10/151

10個目

ブクマ・評価・いいね、ありがとうございます。



 外はすっかり暗くなっていた。

 いつものガルネル中央区の街の灯りが、今日は特別な景色に感じる。

 二階の代表室の窓から街を見ていたカイが、少し前の話を考えていた。


「紅茶、入れてくるよ」


 マルコが、ひと通り終えた書類整理で凝った肩をぐるぐる回しながら、給湯室に向かった。


「はあぁ」


 疲れた。本当は酒のほうがいいな、と思った。


「ブランデー入りにしといたよ」

「ああ」


 よくわかったな、と苦笑いをした。

 ほのかに香るブランデー入りの紅茶を受け取って、腰窓にもたれてひと息ついた。

 マルコはソファーに座った。


「ロロちゃんの話、信じる?」

「信じるさ。信じて話してくれたんだから」


 ロロの告白で、メリーとユルにも再び話し合う必要が出てきた。更に後日、ロロ自身に魔力鑑定をしなくてはならない。

 メリーには扉止めと、ついでに蝶番も修理してもらった。次から金を取ると言っていた。

 今日のところはそれで解散した。

 暗くなったから、ロロはユルに近くまで送ってもらった。()()()()な、と念を押した。


「ロロちゃん、元気だったね」 

「ああ、人の気も知らないでな。見たか?アレ」


 扉が開けられた防音室の、テーブルを親指で差した。まだ片付けられてないティーカップと空っぽの皿がある。


「あースッキリした!チョコレートうまっ!だってよ。殆どあいつが食べたぞ」

「ははっ」

「爺は大笑いだし、ユルなんかポカンとして、あぁアレは面白かったな」


 真面目な鑑定士の、いろんな顔が見られた。

 カイがマルコの向かいのソファーに座った。マルコが上半身を前に傾け、小声で話す。


「にほん?だっけ?前世ねぇ。死んだ時の記憶はあるのかな?」

「いや、思い出したのは全部じゃないようだが、たぶん大往生だったと言ってたな」

「ぷっ、ロロちゃんらしい」

「何が不安だったか聞いたらな、前世持ちは王家に連れてかれるのがお約束だからって。意味わかるか?」

「極端だね。でも、まあ‥‥‥そうだね」

 

 マルコは考えながら、紅茶を一口飲み、ソーサに戻した。


「たとえば、戦争中だとする」

「‥‥‥」

「この国にない有力な軍用兵器の開発や生産の知識を、ロロちゃんが持っていたとしたら」

「利用されるな」

「それだけじゃなく、他国に情報が渡れば、拉致されるか消されるね」

「そんな知識はなさそうだがな」

「それよりさ、ロロちゃんがあの森にいた理由に関係はないかな?」

「‥‥‥あるかもしれないな」


 前世持ちの記憶をなくすため、なのだとしたなら。


「あー、とんでもないの拾ったな」

「手放す気なんか」

「ねぇよ」 


 とりあえず、明日はナナシーが楽しみにしてるロロとのランチだ。


 ロロも、ご褒美キタ!って喜んでたな。


「マルコ、明日はメイナとナナシーも連れて来るから、一緒にランチどうだ?」

「癒やされたいから絶対参加(行く)




 * * * * * * * * * * *



 

「‥‥‥あの、ロロさんに聞きたいことが」

「はい、何でしょう」


 ガルネルの街から少し離れた集合住宅まで、ユルに送ってもらうことになった。中央区のギルド周辺は商店や飲食店が集中しているが、午後八時を過ぎると酒を提供する飲食店が殆どになる。治安は良いといっても、まだ十五歳の少女を歩かせるわけにはいかなかった。

 ロロの右手には、隣町名産のテネッタ牛の串焼きがある。店頭で香ばしく焼いている前を通り過ぎることなど出来なかった。魔法鞄がないので、こうなった。

 因みに、隣の方が買ってくれました。


 聞きたいこと、転生のことかな。


「‥‥‥」


 ん?鑑定のことかな?


「‥‥‥」

「あ、串焼き?」

「‥‥‥料理長たちのモミアゲですけど」


 そっちかー。

 一日が長すぎて、すっかり忘れていた。


「あれは、二十四時間でもとに戻ります」

「‥‥‥やはりロロさんだったんですね」

「言わなきゃバレなかった!」

「‥‥‥ふっ」


 笑った。

 ロロは初めてユルの笑みを見た。モミアゲが役に立った瞬間だった。


「あれはお仕置きです」

「‥‥‥なるほど」

 

 自宅近くに着くまで、ロロは串焼き片手に変身魔法(ヘアメイク)の素晴らしさを熱く語ったのだった。

 

 

読んでいただきありがとうございます。



『古書店の猫は本を読むらしい。』も、スローペースで連載中です。こちらもどうぞよろしくお願い致します。


https://ncode.syosetu.com/n5529hp/

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