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東尋眞尋
眞尋ちゃんは堅苦しい服を着せられて、可哀想に牢の中に閉じ込められていた。じっと俯いて何か考え事をしているようだったが、おれの姿に気づくと顔を上げ、にっこりと笑ってくれた。かわいい。
おれが何か言うのを待っているようだったので、てれてれと頭を掻きながら、言った。
「ちょっと話を聞かせてもらっても……いいかな」
眞尋ちゃんは不思議そうに首を傾げると、美しい豚肉のような桃色の声を涼しく響かせた。
「刑事さん……? もうすべてお話したはずですけど?」
「納得行かないんだ、どうも」
おれは彼女の唇のささくれが見える距離まで近づくと、言った。
「君には丸山玉男を殺す動機がない」
「ムカついたから、つい、やってしまっただけです」
眞尋ちゃんはおれから目をそらした。
「後悔しています」
おれは鼻をひくつかせた。彼女はやはり何かを隠している気がした。嘘発見機ほどではないが、おれの鼻は嘘を感じ取る。感情の動きというのは匂うものだ。今、眞尋ちゃんの体内で、冷たい汗のようなものが、ぐちゅりと音を立てるように動いた。