第1話「君は、スキルを授からなかった。つまり無能力者、ということになる」
2446888④⑥⑦⑧⑨⑨⑨ ドラ西
打2索が正解。
受け入れが11種33枚で最も広い。
有効牌が45678②③④⑤⑥⑨で、良形テンパイも457③⑤と多い。
打6索は受入枚数が10種32枚で有効牌1234②③④⑤⑥⑨。
打④筒は受入枚数が8種25枚で有効牌12345678。
打4索は受入枚数が7種25枚で有効牌23567④⑤。
いわゆるくっつき一向聴(※面子三つ+頭+孤立牌二つの一向聴。聴牌率が圧倒的に高い)の形であり、
2頭頭6刻刻刻④順順順刻刻刻
と見れば強い孤立牌の6索と④筒を残すだけとなる。
これは他の形にも応用が効く考え方で、くっつき一向聴に構えて損をすることは少ない。
「いいかい、アニー、ポーダンジェ。よく見てて。麻雀の基本は、牌効率なんだ」
そう言って俺は、友達のアニーと従妹のポーダンジェに手牌を見せた。
牌効率。
すなわち、上がりまでの効率的な打牌の手筋。
ロナルド、アニー、ポーダンジェ――同じ年頃の子どもたちの間で一、二を争うほど強い俺たちは、今、お互いに麻雀のコツを伝授しあっていた。
牌効率を学ぶ方法はシンプルである。
有効牌の枚数を数え上げること。それに尽きる。
しかしいちいち枚数を数えていくと時間が足りない。
そういうときは、頻出する良形・愚形を覚えるのだ。
良形を残して愚形を嫌う。それだけで麻雀は一気に中級者レベルまで強くなる。
たとえば例を挙げる。
■(良形・愚形①)一面子を作るための基本ターツ
○リャンメンターツ
23
56
など。
○カンチャンターツ
24
57
など。
○ペンチャンターツ
12
89
○リャンカン型
246
357
など。
一面子を作るとき、基本的な強さはリャンメン>リャンカン>カンチャン>ペンチャンである。
初心者はリャンメン、カンチャン、ペンチャンしか意識しておらず、リャンカンを忘れていることがある。これに気付くのが第一歩である。
■応用問題
リャンカン型についてよく誤解されるが
2468③④⑤⑦五六八八西西
この時、孤立牌の⑦を大事にして2468のうち2か8をさっさと切る人が多い。だが⑦切りが正解である。
どこかのカンチャンが埋まっても余剰牌が二枚残るこの2468は愚形だと思われがちだが、なまじっかな中張牌の孤立牌よりも28は強いのだ。
なお、打点がほしいときは打西。
■(良形・愚形②)よく見る良形
○完全イーシャンテン
23477④⑤⑤三三三六七
など。
④⑤のリャンメンに⑤を持ってリャンメントイツ型にしたもの。
③⑥五八のリャンメン待ちのみでなく、7⑤を引いてもリーチが打てる。
また、逆のトイツ側の68を引いたとき、索子と筒子の河の安さ、残り枚数を比較して④を切るなどの待ち入れ替えも出来る。
○ノベタン
4567
など。
中張牌のノベタンなら三面張にもなりやすいし、真ん中の56を引いてもリャンメンを作れる。
雀頭がない状態でもノベタンがあれば47でリーチが打てる。
一向聴までは残しておきたい形。
○中膨れ
3445
など。
2356が有効牌でリャンメンが残る形である。
一向聴までは残しておきたい形。
○三面張
23456
など。
これは圧倒的に良い形である。
○暗刻くっつき
3334
など。
これも圧倒的に良い形である。
この時、25だけでなく、4も有効牌となる。
○フォロー:122346等
見ればわかるように、3と5の受け入れで二面子できる。
234が面子なので、実質残り3枚で受け入れ2種を作っている。
○フォロー:233457等
見ればわかるように、14のリャンメンだけでなく、6も受け入れられる。
345が面子なので、実質残り3枚で受け入れ3種を作っている。
○離れリャンカン
134568
など。
これは離れているものの、2も7も受け入れられるリャンカンである。
○22466等
26のトイツを引いても、35を引いてリャンカンが先に埋まってもいい。
たまに見る何切る問題で、224466のような並び対子(愚形)が出てくるが、真ん中の4を切ると対子手を捨てる代わりに愚形がほぐれる。
■応用問題その2
124679③④⑤四五六西西
打1が正解。
打9と迷うが、有効牌が入ったときに差が出る。
○5が入ったとき
124567:1切ってカンチャンにするぐらい?
245679:離れリャンカン
○3が入ったとき
123467:1切ってリャンメン
234679:9切ってリャンメン
○8が入ったとき
124678:1切ってカンチャンにするぐらい?
246789:246のリャンカン
このあたりの形を覚えておけば、牌効率でそうそう遅れを取ることはない。
効率の良い形で聴牌を目指して、先手でリーチを放つことができれば、麻雀でそれなりに勝てるだろう。
「へえ、でも裏目ってるじゃない? ねえロナルド、やっぱ13受けは残したほうが良かったんじゃないの?」
「……なかなか意地の悪いことに気付くね、アニーは」
六巡目に六八八1356②②④④⑤西西を1から解消。
しかし二巡後にツモ2索となったのを、アニーはニヤニヤと見ていた。
大人しいポーダンジェもくすくす笑っていた。
効率の話をしているのに、これでは形なしである。失敗する確率を低くする話をしているのに、よりによって裏目を引くとはついていない。
だが、残り枚数は2索が三枚、47索が六枚。
2索が対面、1索3索が下家に早切りされていて、場に低めの索子は安い。対面と下家が下の索子を使ってなさそうなので、2索は2枚ぐらい山に居そうである。
47索は対面が4索7索を切って、親の上家が345をチーしている以外は情報なし。
ここから察するに。
下家は低めの索子は使ってなさそう。
対面は索子を嫌っていそう。
上家はカンチャンのチーなので分からない。
たとえ上家、下家で47を一枚ずつ使っていたとしても、47索が山にいるのは4枚。2索よりも47索のほうが早くツモりそうではある。
「どうせ上がれなさそうだったし、56払いすれば? 軽く七対子気味にしといてさ。
仮に面子手でテンパイしても筋で安全そうに見える2索を誘うことができるし。リーチしたら脂っこすぎて47は誰も出してくれないけど、2は逆に出してくれそうじゃん? 場も索子が安くて狙い目だしね」
「……どうなんだろうね」
枚数のセオリーを無視したアニーの意見に、俺は思わず苦笑した。
理屈はわかる。わかるのだが、それはロン和了の確率を増やす代わりに、ツモ和了の確率を減らしている。
普通麻雀は、好形を作って先手でリーチしてツモるのが強いのだから、わざわざ愚形へと崩して後手を踏む確率を上げるなんて賢い選択ではない。
「じゃあポーダンジェは?」
「六巡目で安い手で、面子手で見ると三シャンテンなので受け気味にします。真っ直ぐは向かいません。西の対子は後手を踏んだとき落として回るための安牌として抱えて、まず打6からでしょうか」
「……なるほど」
二人とも、西の対子落としからの断么九変化はあまり見ないらしい。
やや受け過ぎだと思う。対面や上家のチーを警戒している様子だが、両面切りは早すぎる。
俺から見れば、断么九変化もあるし、どの色も赤ドラの受け入れがあるので、まだ面子手を追いかけてよさそうだと思う。タンピンに振り替わればベスト。
七対子目を残しつつもまだ手なりに打って、あと一枚対子になってから七対子に決めてもいいぐらいの塩梅……だと思うが。
――結局、俺はこの手を上がり切ることはできなかった。
しかし、一鳴きして聴牌。ノーテン罰符の回収である。
七対子に決めきってしまうと、こうやって鳴きテンパイを入れてノーテン罰符を拾いに行くのも難しくなる。
……結果論を言えば、1索六萬をツモって七対子聴牌になっていたが、そんなのは偶然である。
(牌効率云々なんて言っておきながら、やってることが形式テンパイ狙いなんて、随分しょっぱいと思われたかな)
だけど、この細かな差を拾うことが俺の戦い方である。
この俺、ロナルド・パーレン・ホウラは、この粘り強さで勝利をつかんできた。そしてこれからもきっと、こう打つだろう。
◇◇◇
ホウラ家といえば、王国の旧名家の一つである。
魔王大戦。戦乱の黎明期。
神の手によって殺し合いを禁じられた人々は、遊戯で勝敗を決するようになっていた。
すなわち麻雀。
中でもホウラ家は、かつての王国の護国卿として名を馳せたこともある、由緒正しい家でもある。
近年の落ちぶれ具合からすると想像することも難しいが、ホウラ家の本家はこれでも辺境伯の爵位を持っている大貴族であり、分家筋にあたる俺、ロナルド・パーレン・ホウラもまたそれなりの身分を持つ貴族の血筋である。
(特に、神童と期待されているポーダンジェと俺は、絶対にいいスキルをもらわなければいけない)
王国では、十歳になった子供は、教会にて洗礼を受けることができる。精霊石と呼ばれる石に手を触れて、自分の可能性を1つ開花させることができるのだ。
「次、アニー・マリガン。君に精霊の加護を授ける」
神父に名前を呼ばれた少女が前に出る。祭壇に躍り出た彼女は、そのままそっと精霊石に手を当てて祈った。
神父が何かの祝詞を唱える。
呼応して、石が淡く輝く。
これこそが洗礼の儀式である。
「……スキル【ツモり直し】だ。君は追加供託1000点と引き換えに、ツモった牌を次のツモ牌と入れ替えることができる」
ざわ、と周囲が沸いた。
明らかなチートスキル。あまりにも強力なその効果に、周囲の子どもたちが反応した。
もしかしたら彼女は、将来の龍王位候補かもしれない。
胸が高鳴る。思わず喉が鳴る。
昨日まで一緒に遊んでいたアニーが、そんな凄いスキルを貰えるんだから、きっと俺だって。
……そう、俺だって。
「次、ロナルド・パーレン・ホウラ。君に精霊の加護を授ける」
はい、と答える声が上ずった。
足が震えて上手く歩けなかった。緊張で脳がじんじん痺れる。口の中がやけに乾く。平衡感覚がなんだか崩れた気がする。
祭壇について、石に手を当てて待つ。俺はすっかり頭が真っ白になっていた。
神父が何かの祝詞を唱える。
呼応して、石が淡く――そう、淡く輝くはず、だった。
石に輝きが宿らない。俺はまだ緊張で胸を痛めていた。
どうしよう、どんなスキルを頂くのだろうか。
きっと俺だって、みんなをあっと驚かせるようなチートスキルを手に入れることができるはず。いやもちろんそうだとは限らないけど、でも、もしかしたら、俺だって可能性があるはず――。
深く息を吐き出す。吐き出した息さえもが震えていた。
俺は、緊張感で泣きそうになっていた。
だがしかし。
「……なんということだ」
神父が悲しそうな声で何かを呟いていた。
俺はその言葉がうまく理解できなかった。その言葉は、多分、自分の予期せぬものだったから、意味が全然伝わってこなかった。
感情も全然追いついてこなかった。今思うと、心が取り残されてしまったのだと思う。
「君は、スキルを授からなかった。つまり無能力者、ということになる」
ここまでお読みいただきありがとうございます!
この作品のコンセプトは
「麻雀初心者でも、楽しんで麻雀を覚えられる」
「麻雀でなろう系小説を書いてみたかった」
「そもそもチートスキルがバンバン出てくる麻雀書いたら面白いんじゃね?」
というものです!
作者が一番楽しんでます。正直書いてて楽しいです。
イカサマ技術、真の意味でチートだと思うので、早く出したいとうずうずしてます。
チートスキル vs イカサマ。はたしてどっちが勝つのでしょうか?
今後とも頑張ってまいりますので、皆様よろしくおねがいします!